【完結】ざまぁは待ってちゃ始まらない!

紫蘇

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本気のざまぁを見せてやる!

王子様は、心置きなく結婚したい 1

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ある日の朝、セジュールとミリエッタが学園の執務室へやって来た。
二人の悲しそうな顔に、ついにこの時が来たのだと分かった。

「…ロンバードは、行ったか」
「はい、ダリル殿下…早朝に、屋敷を出ました」
「…そうか」

国際会議の最終日に起きた、数度の襲撃事件。
あれからロンバードは俺と一切会おうとせず、黙々と作業をしていた。

そして昨日、久し振りに部屋に訪ねてきて、言った。

魔法の飴を錬成する道具の設計図と、病気を治癒魔法で治す器具の設計図と、それぞれの魔力集積回路が完成した。
後は量産を頼む…と。
それから、どうしても必要な時に使ってくれ、と、大量の飴を残していった。

俺は、ロンバードがもうじきここを出て行くのだと分かった。
自分が提案した事なのに、胸が痛くて…
だが、それもこれも、ロンバードの善意を食い物にした連中が全て悪いのだ。

「では、これより転売屋一掃計画を開始する」
「はい」
「人の不幸につけこむ商売を続ける連中にかける情けは無い。
 セジュール、ミリエッタ、覚悟は良いか」
「勿論で御座います、殿下」

セジュールの瞳にも、ミリエッタの瞳にも、怒りと闘志が滲んでいる。
戦う者の目だ。
そして、きっとロンバードには出来ない目。

「善き者には幸福を、邪悪な者には不幸を」
「そして転売ヤーには死を、ですわ」

転売屋ぁとは、物を買い占めるなどして他人が買えないようにし、どうしてもそれが欲しい人間に高値で売りつけ、利益を得る人間だそうだ。

問題の商人どもは元々善意で配られた「魔法の飴」にそこそこの値段をつけて買いあさり、それを「命が助かるなら安いもんだろう」と病人やその家族に高額で売りつけている。

まさに転売屋ぁそのもの…
ただ転売屋ぁの「ぁ」は要らないな。
何やら軽すぎる。

「金の亡者どもを一掃するためには、まず人間を金儲けの道具と見なすやり方を悪と断定できるだけの論理が必要だ。
 ミリエッタは、ジンケンというものを世の中に分かりやすく広める仕事を頼む。
 セジュールはミリエッタに協力してやってくれ…
 俺は間者たちの情報から転売屋を探し出し、別件で引っ張る」
「はい」

俺は罪を軽くしてやる事を餌に、ロンバードを襲撃した者たちを間者に仕立てた。

ロンバードには、ただ新しい商材の話を広めさせるだけだと言ってある。
きっと傷つくと思ったから。

「やはり政治まつりごとには向かんな…
 優しすぎる」

自分のせいで彼らに罪を犯させてしまった、とロンバードは言うが…

はっきり言おう。
奴らの自己責任だと。

唆されて売っただけなら、ここまで追い詰められる事は無かった。
自制出来ず、博打や娼館通いにのめり込んだ方が悪いのだ。その証拠に、他にもいるだろう「飴の出どころ」は、身を持ち崩していないのだから。

「まあ、他にも仕事は腐るほどある。
 魔術局長とか…な」

ロンバードの護衛に魔術師も1人、と思い、魔術塔へ依頼しに行った時、ギゼル殿には内密に…とこの話をしてきた。
すると彼らは諸手を挙げて結婚賛成派に回った。
単純で助かる。

「もう逃がさない。
 帰ってきたら直ぐに籍を入れる。
 披露宴と式典はその何年後でも良い」

ロンバードは、もし俺にもっと良い人が出てきたら心置き無く結婚してくれと言ったが、それが本心だとは思えない。

セジュールから聞いた。
結婚式までには戻ると言った事。
髪の毛もそれまでには少し伸びると言った事。
そして、髪がどうであれ、愛は変わらないと俺から宣言された事…

「ロンバードも、俺を愛していると言っているようなものだ」

確りと見ておくが良い。
俺がロンバードをどれだけ愛しているかを。
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