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ざまぁなど知らぬ!

火山灰再利用計画

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「元が灰っつうか砂だから、滑らかな曲線で人型も簡単そう…と、思ったんだけどな…」

ゴーレムの原理を説明しよう。
ゴーレムはパーツとパーツを魔力で繋ぎ、命令通りに動かす人形である。
動かす部分が多ければ多いほど理論は複雑になる…

つまり砂一粒一粒を魔力で繋ぐのはほぼ不可能。
あーあ、ちちんぷいぷいで出来れば良いのにな…
魔法って地味に万能じゃないのよね。

「金属の成分が多いから、魔力伝導率は高そうなんだけど…外側の皮膚になるものがいるな、後…骨」

砂袋だけで自立なんて、サンドバッグ型でないと無理。
いっそサンドバッグも作ってみるか…

「そうか、等身大の人形を作って、芯をワイヤー…関節は…力ずく、はまずいな。
 先を輪っかにして組み合わせてみるか」

そうすればワイヤーに術式を施すだけで何とか動くぐらいは出来そう。

「何でもまずは試作品から…テディベアに砂詰めてみよう。
 型紙も何となく覚えてるし…」

うーん、だったらワイヤーと綿でも…って、風で飛んで行くのはまずいか。
やっぱ火山灰使う方が良いな。
だけどそれで二足歩行…は、バランスが厳しいかも…そうだ!

「足を極太にするよりかは重みで差をつける方向が良いかな…下半身が砂で、上が綿…」

そしたら足が細くても、それなりに安定して立てる…うむ、良し。

「あーでも、2つ作って比べるのもありだな…
 よし、そうしよ」

俺は作業場の扉を開け、共同の倉庫へ…

「ロンバード!お前…授業は!?」
「あっ親父!やっべえ」

***

倉庫で親父と良さげな布を探しつつ、ちょっとご相談。

「砂でゴーレム?」
「そう、火山灰、山ほど届くからさ、困ったなって。
 魔力電動は良さそうなんだけど、砂粒一つ一つに術式は無理でしょ。
 だから人形の中に詰める形はどうかなって、実験しようと思って」

俺はさっき考えた案を親父に話してみた。
すると早速親父からダメ出しがあった。

「ふーん…それだと、関節…特に膝、砂詰まった中で…動くか?綿でも怪しいんじゃないか?」
「あー…しまった、どうしよ…」

うーん、関節…って思ったより…難しいな…。

「とりあえずは関節剥き出しでやってみたら。
 ところで、湿気を運ぶ話はどうなった?」

親父からは別の件の進捗確認だ。
俺は自分の制服のポケットを叩いて、いつもの飴を出しつつ言う。

「うん、このポケットみたいな袋をいっぱい作って、水に変えた湿気をそれに詰めて送る。
 今のところ考えてるのは、空輸かな…。
 ヨークさんが火山灰を山ほど運んできたのを見て思いついたの。
 ペタンコの袋だから、かなりの枚数送れると思うんだよね…
 はい、親父」
「お、サンキュ。
 この飴の味、結構好きなんだよな~」

もちろん、サラシナとサリルを転移魔法で結べたらその方が安全・楽ちん。
途中で落ちる事もあるかもだし…。
でも今はまだ使えないからね。

「でも、それって元に戻す時にも魔力を使うんだろ?」
「うん、元に戻す魔力集積回路ももうすぐ出来る…と思う。うん」

研究、というより開発…商品化?
毎日少しずつ線引いて頑張ってます!って報告すると、親父は頼んだぞ、って一言言ってくれる。
親父に認められると何だか嬉しい…
同じ穴のムジナだからかな。

「しかし『水』か…そこに手を付けられるなんて、やっぱ二人とも偉いんだな」
「へえ、親父、良く分かるね」
「水は世界最古の利権だからな。
 昔から水利権を持ってる家じゃないと、水事業なんて触れられないんだぞ、普通は」
「ふうん…」
「だからダリル殿下に冗談でもねだるなよ。
 一家で溺死…なんて事になったら嫌だからな」
「えっ…」

親父の顔を見ると、まったく笑ってない。
こいつはどうやらマジらしい…絶対にやめておこう。

「というか、水利権に関わる事だから、ダリル殿下はお前に極力関わらせたくなかったんだろ。
 しかも砂漠の水利権なんて、国1つ吹っ飛ぶスキャンダルになりかねんからな」
「…わーお」

そんな…そんな恐ろしい理由が…。
ダリル様も言ってくれれば良いのに!!

「水、権利、怖い。近寄らない、絶対」
「ああ、そうしろ。
 いくらざまぁされたいって言っても…」

親父は心配そうに俺を見て言う。
そういえば、親父は悪役令息作戦にいい顔をしてなかったな…先に言っておくか。

「それさ、俺の代わりが出来るゴーレムが出来たら、要らないじゃんと思って。
 おねだり考えるのも大変だし、もうそっちに切り替えようかなって」
「そうなん?じゃあ父さんも手伝うわ」
「ほんと?明日から俺こっち来ていい?」
「駄目だ、学校は行け」
「えー…」

俺、こっちで色々やってるほうが楽しいのに…。
親父のけち!

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