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第12話 新しい日々

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ローゼン公爵が白花はくかの館に住まうようになってから一週間が経とうとしていた。




クリストフの生活は劇的に改善したと言っても過言ではない。

三食たっぷり食べられるし衣服も充分に用意され、館内は新たに使用人が来て日々清掃が行われ清潔だった。製作用のノートは新しい物が余るほど購入され、中には魔法紙でできたノートすらある。最新の工具と様々な部品で試作品の改良は物質的には順調だ。

館の外では厨房が入る建物を建設する真っ最中だ。見た目は庭園の風景を損なわぬよう、この白花の館が小さくなったような外観となる予定だという。洗濯や入浴のための設備も整えられるようで、貴族が使っているお湯をためた浴槽なるものに入ることができるとクリストフは楽しみだった。

さらに、ローゼン公爵は国王の印がついた王宮内の書庫の貸出許可証をクリストフにくれた。

これがあれば王宮内の書庫だけでなく王立図書館でも本を借りることができる。しかもクリストフは王族なので、なんと官職についている貴族ですら貸し出しが禁止されている本も持ち出せるとのことだった。ただし、本によっては国王の許可が必要なものもある。書庫内での閲覧のみしかできない本もあるという。

それから、ローゼン公爵は本を借りる際の注意点を口を酸っぱくして何度もクリストフに言い聞かせた。借りた本は丁寧に扱うこと。書き込んだりしないこと。本を損傷してしまったときにはきちんと申し出ること。場合によっては弁償すること。

そしてクリストフが頷くと、許可証を首から下げてくれた。許可証をぶら下げるための濃紺色の紐を編んだのはエレナだそうだ。



「これで貴方様がどんなにそそっかしくとも、無くしてしまうことはありませんね」


ローゼン公爵は余計なことを言いながら、王宮内の書庫を案内してくれた。今までは、王宮内で姿を見られると嫌がられるためこっそりと出入りしていたが、ローゼン公爵に連れられて行くと皆が頭を下げる。クリストフはほんの少しいい気味だと思った。




それから、ローゼン公爵はクリストフを魔法・魔術研究所へ連れて行った。作ったランプを持ってこいと言われたが、ついでに髭が出る顔も鞄に詰めた。ローゼン公爵の小言が始まったらこれを出すつもりだ。鞄はローゼン公爵が用意してくれたものだ。茶色い革の肩掛け鞄だが、大きなもので本も道具もたっぷり入るのでクリストフは気に入った。

花嫁が選ばれる儀式のときの礼服もそうだったが、ローゼン公爵は不思議とクリストフが好みそうなものを選ぶ。これが花嫁の祝福された力なのかと思うぐらいだ。






さて、魔法・魔術研究所の入り口に着いたクリストフとローゼン公爵一行は、入館証だと言うブレスレットをつけられて研究所の真ん中に立つ大きな塔を登った。何段もある階段を登るのが億劫で、何度風魔法で飛ぼうとしたか知れない。ローゼン公爵の侍従としてついてきたアルベルトも見るからにつらそうだ。護衛の近衛兵だけはさすがに平然としている。

やがて所長だという腹の大きな男の部屋に着くと、クリストフはアルベルトと護衛と共に隣室で待たされて、ローゼン公爵は所長の部屋に入ったきり出てこない。中で話し込んでいるようだった。

暇を持て余したクリストフは塔をぶらぶらすることにした。アルベルトはクリストフを引き止めたが、部屋でぼうっと待っているのもクリストフの性に合わない。それに、魔法を研究するための施設を見ることができる機会など滅多にないだろう。




鞄を抱えながら下の階に降りてみると、長い回廊が何本かそれぞれの方向に向かって伸びている。一つの回廊からは黒いローブを纏った人々がこちらへ向かってやって来るのが見えた。クリストフはいつも王宮でそうしていたように、俯いて気配をなるべく殺した。あまり目立つとこの容姿をとやかく言われるからだ。しかし、人々は何かを熱心に論じ合っているらしくクリストフやアルベルトのことは気にも止めずに歩き去って行った。腰から剣を下げた護衛のことだけは、その姿に気づくなり避けて通っていった。

何事もなくほっとしたクリストフは、さらにこの回廊の奥へと進んでみた。次第に埃っぽい空気が周囲を満たし、心なしか石壁もかび臭い。よく分からないものが回廊の端に放置されていることが多くなり、終いには両側に高く物が積まれ、四人は行き来できる回廊がやっと二人通れるぐらいの狭さとなってしまっていた。

そろそろ戻ろうかとクリストフが思い始めたとき、前方から急に大きな音がした。驚いて音のした方へ向かうと、壊れたドアの中から煙が出ている。ドアの周りの石壁も一部が崩落していた。


「勘弁してよ~」


煙の中から声がした。


「何で駄目なのかな」


クリストフは煙が充満した部屋を覗き込んだ。いやな空気が含まれている煙だった。口元を押さえ、こっそり風魔法で煙を外に出してやると、崩れた本の山の近くに男が座り込んでいる。男はクリストフ達の気配に気がつくと挨拶もなしに話しかけてきた。


「どう思う?」


男が指差した先には壊れた大きな魔道具があった。何の装置かは分からないが、丸く平たい石の下に力を反転させるための魔法陣が刻まれた部品がくっついている。そして、その上に乗っていたと思われる装置の円筒状の部分だけが天井に突き刺さっていた。装置から取れてしまったと思われる他の部品が、この部屋のドアや壁に勢いよくぶつかって穴を開けてしまったようだ。


「速度が速すぎたんじゃないの」


クリストフは答えた。


「だよね……」


男はぶつぶつ言いながらくすんだ灰色髪の頭をかいた。男の頭から、ふけとも埃ともつかぬ何かが舞い散った。アルベルトは「あっ」と小さく呟いて、護衛はあからさまに顔を歪めた。

そのとき、天井に刺さった装置を見上げているクリストフの視界の端で壁に這っていた蔦が蠢いた。クリストフが驚いて男を見ると、男は天井に向けて手を伸ばしている。蔦は装置のところまで伸びて刺さった装置を抜き取ると、男のそばまで持ってきた。草魔法だった。

クリストフは初めて自分と母以外の人間が使う魔法を目にして驚いた。

市井の、しかも王都から離れた街で暮らしていると滅多に貴族に会わないので魔法を目にする機会はほとんどない。アルムウェルテン王国では平民は魔力が低いので、魔力を練って形にしたり、魔力と親和性の高い自然物等を操る魔法を使うまでに至らないのだ。

魔法を使える者がその能力をもって各々の土地を統治してきた結果貴族となったため、魔力の高さは血の繋がりにより継承されているのだろうということだ。

だが、それ以外の要素もあるらしく、平民でも魔法を使える者もいるようだ。稀に魔力の高い平民もいるのだが数が少ないらしい。

そういえばエレナは貴族なので魔法が使えるはずなのだが、生活に必要がないからなのかクリストフの目の前で魔法を使ったことはなかった。もしかするとあのエレナのことだ。魔力がないと言われているクリストフに気を使い、あえて使わなかったのかもしれない。

そしてローゼン公爵も授業でクリストフに魔法を見せたことはなかった。しかしあの偉そうな男のことだ。出し惜しみをしているのだろう。クリストフは勝手にそう決めつけた。




「すごいね」


クリストフは初めてみる草魔法に素直に驚いた。ローゼン公爵の授業で習った内容によると、植物を自由に操ることができたり、熟知している植物を作り出したりできるらしい。


「何が?」


男は意味が分からないらしくクリストフに尋ねた。


「草魔法」

「草魔法の何が?」


クリストフは答えあぐねた。見たことがないとは恥ずかしくて言えなかった。


「何持ってるの?それ」


男はクリストフの鞄を見つめた。


「魔道具?魔石?魔獣の素材じゃないよね?素材なら俺にくれる?」


クリストフは鞄を抱き締めた。


「この辺のものと交換してもいいよ」


この辺の物、と彼は言ったが、置いてあるのはクリストフにはよく分からない物ばかりで、かろうじて分かったのは虫の瓶詰めだけだ。図鑑で見たことがある美しい甲虫だった。男はクリストフの戸惑いも気にせず近寄ってきてクリストフをじろじろと見た。


「見せてよ」

「これは……」


見せてみたいという気持ちとあんな装置を作っている男に見せるのは恥ずかしいという気持ちでクリストフは戸惑った。男は相変わらずクリストフを見続けている。クリストフが仕方なく鞄を開けると、男はランプを手に持ってしげしげと見た。


「どうしたのこれ。同じ魔法陣を二回も描いてるけど。何か意味あるの?」


クリストフは恥ずかしくて俯いた。その省略の仕方が分からない。男はランプを見ていたが、顔の試作品を見つけてクリストフの許可も得ずに勝手に手に取った。


「ベルモント公だ!」


男が顔を持ち上げた時、ボタンを押してしまったらしい。例の角度の髭が飛び出てくる。男は目を丸くして試作品を見つめている。護衛が「ぷっ」と吹き出して、それから咳払いをした。クリストフはますます恥ずかしくなった。


「すごいよこれ。所長に見せよう」


男は顔の試作品を抱えると、クリストフを置いて歩き出した。


「ま、待って!やめてよ!」


クリストフは慌ててランプを鞄にしまうと、男の後を追いかけた。

男はゆったりと回廊を歩いていたが、階段となると段々と速度を落としていき、終いにはクリストフが心配になるぐらいのろのろと上っていた。


「これが嫌だから瘴気の研究を中断してでも浮上装置を作ってるんだよ……」


そして男は息を切らしたまま所長室にノックもなしに入った。ローゼン公爵は驚いて男を見て、挨拶をしようと口を開きかけた次の瞬間、顔をしかめた。所長の机の上に、例の顔の魔道具が置かれたからだ。ローゼン公爵の咎めるような視線が入口に立っていたクリストフに向けられた。


「見てよ所長」


男は研究所の所長であるファン・ハウゼン侯爵に砕けた調子で声をかけ、ボタンを押して、髭を出したり引っ込めたりして見せた。ローゼン公爵は額に手を当てて大きくため息をついた。


「何てことだ!」


所長はでっぷりとした腹を震わせて立ち上がった。


「そっくりだ!」


大喜びする所長と灰色髪の男にローゼン公爵は頭を振った。クリストフはどうしてよいか分からずにその場に立ったままだった。






結局、顔の魔道具は所長がどうしても欲しいというのであげてきた。

クリストフは帰りの馬車の中で週に三回、研究所で魔法技術学の講義を受けることになったと説明された。講義は今日会った灰色髪の男、アレリード公爵令息が行うという。

彼は王立学院にて魔法学で一番の成績を収め、錬金術の科目でも次々と研究を発表し、所長直々の誘いを受けて研究所に入ったものの、結婚もせずに奇妙な研究三昧で放蕩息子と社交界では笑い者らしい。

実家は代々魔術師団長を輩出している名門の家柄で、彼の父親である現当主も魔術師団長とのことだが、魔術師団に入る様子も実家を継ぐ様子も全くないとのこと。そのことについては講義を受ける中で言及しないようにと釘を刺された。それから、彼から出されたお茶は絶対に口にしないようにとも言われた。クリストフは彼にこっそりと『灰色頭』というあだ名をつけた。

そして、勉強とは別にランプをもっとシンプルに改良するようにと提案があった。


「平民でも気軽に、そして夜間に外で使えるような物が望ましい。小型の物も欲しいですな」


ローゼン公爵は、詳しくはウーゴから説明があると言った。


「でも、ポーションペンが」

「何ですか?」


クリストフはランプよりポーションで傷口を塞ぐ携帯型魔道具を作りたい気持ちが高まっていた。母のやっていた治療に繋がるものだからだ。館に戻ってローゼン公爵に試作品を見せると「ふむ」とローゼン公爵は頷いた。

次の日、軍医だという女性を伴ってウーゴが現れた。ランプの話が終わってから、ポーションペンについて聞いたとウーゴが言ってきた。軍医だという女性は、現在利用されている治療用のポーション数種を持ってきてクリストフに見せた。

それから、魔獣との戦いでできる傷についてや、負傷兵の手当などについて三人で話した。ローゼン公爵は王宮で宰相補佐の仕事があるらしく、その日は館に遅くまで帰ってこなかった。




翌日からクリストフは今までよりもずっと忙しい日々を送ることになった。

研究所の灰色頭の講義を受け、ランプの改良をし、ポーションペンの試作品を作った。他の魔道具についても軍医の女性やウーゴに相談しながら、クリストフは温めていた考えを形にすることに没頭した。

ローゼン公爵のいつもの講義も変わらずに行われた。講義内容には新しく魔法学と魔法陣論が追加され、魔力についての基本的な知識も学ぶことになった。ローゼン公爵の小言に毎日うんざりしながらも、クリストフは亡き母の喜ぶ姿を思い浮かべながら魔道具製作に励んだ。

新しい生活は充実していた。

だから、すっかり忘れていたのだ。『婚約の儀』なんてもののことを。





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