上 下
49 / 120
第5章 青年期 小休憩編

42「ジャックポット」

しおりを挟む

 酒場の従業員に渡された鍵を使って部屋に入る。場末の宿屋という事もあってなのか、部屋の中は薄暗くて照明器具という物が見当たらなかった。


 確認の為に、僕が「ロータスさん、居ますか?」と訊ねると、「居るわよ」と返事が来た。


 体内で自家発電を行いながら、僕は指先から小さなプラズマを放出して明かりを作る。壁に手を添えながら部屋を歩くと、何かに手が触れた。




「早く来なさいよ。私に恥をかかせるつもり?」
「ハイハイ、すぐに行きますから……」


 

 プラズマの光を頼りに目を凝らすと、手に触れた物がコート掛けだと分かった。コート掛けにはロータスさんのジャケットが掛けられていて、その下には軍靴が置かれている。


 唾を飲み込んで部屋の中を進むと、2人用のソファやベッドといった物が置かれた場所に着く。ベッドの両脇には棚があって、ベッドの縁にはロータスさんが座っていた。


 彼女は豊満な体をバスタオルで隠していて、手には酒瓶が握られている。


 僕が視線を彷徨わせていると、ロータスさんは「貴方も飲む?」と言って、ベッドから立ち上がった。




「は、ハイ」
「私は新しいのを飲むわ。別に飲みかけでも構わないわよね?」




 彼女はそう言って僕に近づき、酒瓶を渡してきた。ロータスさんはそのまま僕の隣を横切り、テーブルの上に置かれた酒瓶に手を伸ばした。


 緊張で心臓が爆発しそうだ。ロータスさんが横切った時に良い香りがした。頭がおかしくなりそうだし、緊張で喉が渇く。


 僕がソファに座ると、ロータスさんも隣に座ってきた。


 


「イタダキマス……」
「場末の宿屋だから期待してなかったけど、この部屋にはシャワー室があるの」

「シャワー室ですか?」
「そうよ。貴方も浴びてきたらどう?」




 ロータスさんは既にシャワーを浴び終えたらしく、体にはバスタオルが巻かれていた。透き通っていた桃色の髪も、水で濡れて少しだけ濃くなっている。


 僕は恥ずかしさが頂点になって動けなくなった。ロータスさんに渡されたビールを飲んでみるが、余計に頭が真っ白になっていくだけだった。


 呆然と空間を眺めていると、彼女が「安心しなさい、悪いようにはしないから」と言って、微笑みながら頬をつねってきた。顔の火傷を気にしているらしく、部屋が暗いのに彼女は髪で片側の顔を隠している。


 視線を下に向けてみると、そこにはタオルに包まれたバインなボインがあった。




「おーダイナマイツ。まさにジャックポット!」
「何興奮してるのよ。貴方もやっぱり男なのね」

「勿論ですよ。男には刺激が強いおっぱいですから」
「可愛らしい顔をしてるから、アッチ系に興味があると思ってたわ」




 ロータスさんがそう言った後、少しして僕は大人の男になった。


 詳細を多く語れないのが残念だが、1つだけ分かった事がある。ロータスさんの話によると、『僕はベッドの上でも最速の男』であったらしい。


 恥ずかしい話だ。穴があったら入りたい気分でもある。


 その後、ロータスさんは手取り足取り教えてくれた。保健の中間テストで高得点を取り、自主練や朝練を欠かさなかった僕だが、実戦に関してはお粗末な物だった。


 僕は枕を抱きかかえて顔を押し付ける。ロータスさんはベッドの縁に座って酒瓶を握り締めていた。


 僕が勢い良く、「ロータスさん!」と叫ぶと、彼女は「15歳の体力には驚かされるわ。少しだけ休憩させて」と言って酒を飲んだ。




「分かりました……」
「ねえ、アクセル。お腹空いてる?」

「今は全く空いてません!」
「随分と元気ね。お酒も空っぽだし、定員さんに何か頼むわ」




 ロータスさんはベッドから立ち上がり、真っ裸のまま僕の頭に手を伸ばしてきた。頭を撫でられるのかと思ったが、違うようだ。


 彼女はベッドの頭に設置された内線電話機を使って、一階の酒場に居る従業員に連絡をしている。目と鼻の先で、バインバインなボインが右往左往に揺れ動いていた。




「だ、ダイナマイツ……」
「落ち着きなさい。おっぱいは何処にも逃げないわよ」




 ロータスさんの言う通りだ。おっぱいは何処にも逃げない。逃げるのは人間だけだ。蒸気機甲骸スチームボット機甲手首ハンズマンなら感情を持たないだろうが、意思を持つ生物であれば嫌悪感を抱いで尻尾を巻いて逃げるだろう。


 いや、ロータスさんの部下である『ジュゲム』や僕が作った『ハンズマン』なら、知能レベルの高さから逃げる事もあるのかもしれない。


 等と無駄な事を考えなが、目の前にぶら下がるバインバインなボインに顔を押し当てた。




「アクセル、落ち着きなさいって」
「目の前にタワワなブツがあるのに落ち着いてられませんよ」


 

 そのままボインボインなバインを鷲掴みしようとしたが、誰かが部屋に来たようだ。何度か扉をノックする音が聴こえてくる。


 僕は音速の速さで床に落ちていたトランクスを拾い上げ、そのままパンツを履いて身構える。ロータスさんに、「妙に早いですね」と訊ねると、彼女はテーブルに置かれた蒸気機関銃に手を伸ばした。




「ロータスさん」
「なに、アクセル」

「ここは僕に任せて下さい。大人の男になった僕の力を見せてあげます」
「ちょっと……待ちなさい!」




 ベッドのシーツで胸を隠す彼女の制止を振り切り、僕は音速の速さで扉の前に向かう。アドレナリンを過剰に放出させて耳を澄ますと、扉の向こう側に居る人物の心音が聞こえた。


 誰だか分からないが、向こう側に居る人間は警戒しているようだ。


 店の周りには複数体のハンズマンが居るはず。それらが報告をしてこないという事は、敵意を向けた人物ではないらしい。


 その後、向こう側に居る人間がドアノブを握り締めた直後、僕はドアノブを掴んでプラズマを放電した。




「アクセル。彼女は敵じゃあないわ!」
「え!」

「あらあら、感電して気絶しちゃったようね」
「でも、でも……彼女が……」




 扉の向こう側に居たのは、ロータスさんが『ジュゲム』と呼んでいるZ1400と、軍服姿のジャガーノートさんだった。Z1400の方は問題が無かったが、ドアノブを握っていたジャガーノートさんは感電して棒立ちのまま気絶していた。


 大人の男として、魅力的な女性を守ろうとしたが、考えが甘かった。本当にカッコ悪い姿しか見せられてない。なんとかロータスさんにカッコいい姿を見せなければ――。


 僕はZ1400に「ジャガーノートさんを部屋に運んで」と言い、二人を愛の巣に招いた。ジュゲムは優秀なスチームボットだ。柔軟な考えの持ち主であるらしく、軍服を着た女性兵士を気絶させても反撃してこなかった。


 その後、Z1400にジャガーノートさんをベッドまで運んでもらい、僕は気絶した彼女の軍服を脱がす。


 ジャケットを脱がせた後、ジャガーノートさんが貴金属を身に付けていないのを確認して、僕は彼女の胸に指先を当てて電気を利用した除細動を行った。


 何度かジャガーノートさんの体が飛び跳ねたが、彼女は無事に意識を取り戻した。




「ほら、アクセル。こういう時に言わなきゃならない事は?」
「本当にごめんなさい」
「貴方は悪くないわよ。危険を感じて対応しただけなんだから」




 僕がジャガーノートさんに謝ると、彼女は許してくれた。


 本当に申し訳ない話だ。童貞を卒業したからといって、ロータスさんにカッコつけようなんて馬鹿げていた。


 その後、僕は我に返って周囲を見渡した。ベッドの上には胸元が開いたジャガーノートさんが横たわっている。ソファにはジュゲムと、バスタオルでバインバインなボインを隠したロータスさんが居た。


 二人の女性と一体の女性型スチームボットに囲まれた。彼女たちはどうして部屋に訪ねて来たのだろう。

 
 等と考えながら酒瓶を手に持ち、僕はベッドの縁に腰を下ろす。すると、ジャガーノートさんがロータスさんに耳打ちをした。


 ロータスさんとジャガーノートさんは、「それってとても良い案ね」「でしょ、どうせなら思い出に残る初体験をさせるのも良いわよね」と言った。


 二人はそのまま、食物連鎖の最下層にいる獣を狩る如く瞳で、僕の全身を見てくる。ロータスさんは、「コレから四人で楽しむわよ」と言ってベッドに飛び込んできた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

歌って踊れて可愛くて勝負に強いオタサーの姫(?)

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:18

僕の彼女は小学生♡

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:39

婚約破棄?そもそも私は貴方と婚約してません!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:2,101

大国に売られた聖女

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:49pt お気に入り:4,396

疲れたお姉さんは異世界転生早々に幼女とスローライフする。

fem
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:20

無敵チートな猫の魔法使いとシンデレラになれない私

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:17

処理中です...