僕たちが幸せを知るのに

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
上 下
15 / 73
Capitolo2…Avventura

15

しおりを挟む

 坂を降りながら僕らは話をして、クマさんの人柄や外見への自信の無さ、そして姉を大切に想っていることはよく分かった。

 美人な姉をアクセサリーみたいにはべらすような男じゃなくて良かった、そんな気持ちで家路に着く。


「ただいま」

「おかえりー…礼央、休みなのに制服でどこ行ってたの?」

リビングの姉は明るく僕を迎えてくれて、しかし行き先を伝えてなかった僕が「カメサン」と答えるとみるみるその顔色を変える。

「礼央、なに…カメサンって…大輝たいきくんの学校じゃない」

open campusオープンキャンパスが今日だったんだよ」

「知ってるわよ、手伝いに行くからってdateデートしてくれない…まさか会ったの⁉︎」

「うん、お話して来たよ」

「なんで」

 どすどす詰め寄るその澄んだ瞳に僕が映る。

 彼氏に粗相そそうをしてはいまいかと迫るその顔は意外や怒気は含んでいなかった。

 たぶん危惧しているのは僕のせいで自分がフラれることとか自分の良くないところをクマさんがこぼしてないかとかそんなところだろう。

「姉さんが会わせてくれないからじゃん。変な奴だったら別れさせようと思ったんだぁ」

「…余計なことを……それで?どうだった?」

「んー…handsomeハンサムではなかった」

「なんでよ⁉︎超カッコよかったでしょ⁉︎」

これは怒りポイントみたいだ。

 姉は背伸びして僕の両耳を摘んでびんびんと外へ引っ張る。

「古臭い顔、僕より背が低いのに顔は大きいし」

「礼央の顔が小さいんでしょ、紳士だったでしょ?」

「親切だったよ、聞き込みした人もそう言ってた。誰にでも優しいみたい」

「そんな八方美人じゃないの、紳士なの!」

「西郷どんみたいだった」

「ならhandsomeでしょ」

「どこがだよ」

 この辺りの美的感覚はどうも合わない。

 姉は特別不細工が好きという訳ではないみたいだけど流行りの美男子は好みでないらしい。

 特に化粧をする男は嫌いらしく、『素材を生かした最低限の手入れが男らしい』と、割と古風な性への価値観で生きている。

 ちなみに僕も姉が苦手そうな線が細い男子だが、眉も肌の色も生まれ持ったものだから弟という贔屓ひいき目を抜きにしても許されているらしい。

 何を許しているのか知らないが。


「…見た目はまぁ良いわよ…価値観が違うんだもの…でも、良い人そうだったでしょ?」

「うん。姉さんのこと、大事にしてくれそうだった」

「そう…ふふっ」

kissキスまでしたんだって?」

「…なんでそんなことまで聞いたのよ」

「クマさんが教えてくれたんだよ」

「ウソ、礼央がしつこくしたんでしょ!てか何よ、クマさんって」

「僕だけの渾名あだな♡」


 クマネズミのやり取りを説明するのも面倒だし慌てふためく姉を楽しんだし今日はもう充分だ。

 自室へ入り制服を脱ぎ落とすとどうしてもシラトリさんとのことが思い出された。

 熱い視線は貰ったけどそれは僕に対してではなく、題材から得たインスピレーションを脳内で「どんな作品にしてやろうか」とイメージしてワクワクしている時の興奮によるそれだ。

 でもその目にドキドキしたし喋らなければあのまま僕も完全に元気になってワンチャン行けてたりして、作家とモデルの疑似恋愛って無い話じゃないだろうし。

 しかし僕を追い払うために局部を見せろなんてたいした女だよ、どちらに転んでも自分に利があるんだから。

 まるで変質者に遭った気分だ、いや脱いだのは自分なんだけど。



つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

最愛の彼

詩織
恋愛
部長の愛人がバレてた。 彼の言うとおりに従ってるうちに私の中で気持ちが揺れ動く

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

処理中です...