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Capitolo2…Avventura
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しおりを挟む坂を降りながら僕らは話をして、クマさんの人柄や外見への自信の無さ、そして姉を大切に想っていることはよく分かった。
美人な姉をアクセサリーみたいに侍らすような男じゃなくて良かった、そんな気持ちで家路に着く。
「ただいま」
「おかえりー…礼央、休みなのに制服でどこ行ってたの?」
リビングの姉は明るく僕を迎えてくれて、しかし行き先を伝えてなかった僕が「カメサン」と答えるとみるみるその顔色を変える。
「礼央、なに…カメサンって…大輝くんの学校じゃない」
「open campusが今日だったんだよ」
「知ってるわよ、手伝いに行くからってdateしてくれない…まさか会ったの⁉︎」
「うん、お話して来たよ」
「なんで」
どすどす詰め寄るその澄んだ瞳に僕が映る。
彼氏に粗相をしてはいまいかと迫るその顔は意外や怒気は含んでいなかった。
たぶん危惧しているのは僕のせいで自分がフラれることとか自分の良くないところをクマさんが溢してないかとかそんなところだろう。
「姉さんが会わせてくれないからじゃん。変な奴だったら別れさせようと思ったんだぁ」
「…余計なことを……それで?どうだった?」
「んー…handsomeではなかった」
「なんでよ⁉︎超カッコよかったでしょ⁉︎」
これは怒りポイントみたいだ。
姉は背伸びして僕の両耳を摘んでびんびんと外へ引っ張る。
「古臭い顔、僕より背が低いのに顔は大きいし」
「礼央の顔が小さいんでしょ、紳士だったでしょ?」
「親切だったよ、聞き込みした人もそう言ってた。誰にでも優しいみたい」
「そんな八方美人じゃないの、紳士なの!」
「西郷どんみたいだった」
「ならhandsomeでしょ」
「どこがだよ」
この辺りの美的感覚はどうも合わない。
姉は特別不細工が好きという訳ではないみたいだけど流行りの美男子は好みでないらしい。
特に化粧をする男は嫌いらしく、『素材を生かした最低限の手入れが男らしい』と、割と古風な性への価値観で生きている。
ちなみに僕も姉が苦手そうな線が細い男子だが、眉も肌の色も生まれ持ったものだから弟という贔屓目を抜きにしても許されているらしい。
何を許しているのか知らないが。
「…見た目はまぁ良いわよ…価値観が違うんだもの…でも、良い人そうだったでしょ?」
「うん。姉さんのこと、大事にしてくれそうだった」
「そう…ふふっ」
「kissまでしたんだって?」
「…なんでそんなことまで聞いたのよ」
「クマさんが教えてくれたんだよ」
「ウソ、礼央がしつこくしたんでしょ!てか何よ、クマさんって」
「僕だけの渾名♡」
クマネズミのやり取りを説明するのも面倒だし慌てふためく姉を楽しんだし今日はもう充分だ。
自室へ入り制服を脱ぎ落とすとどうしてもシラトリさんとのことが思い出された。
熱い視線は貰ったけどそれは僕に対してではなく、題材から得たインスピレーションを脳内で「どんな作品にしてやろうか」とイメージしてワクワクしている時の興奮によるそれだ。
でもその目にドキドキしたし喋らなければあのまま僕も完全に元気になってワンチャン行けてたりして、作家とモデルの疑似恋愛って無い話じゃないだろうし。
しかし僕を追い払うために局部を見せろなんてたいした女だよ、どちらに転んでも自分に利があるんだから。
まるで変質者に遭った気分だ、いや脱いだのは自分なんだけど。
つづく
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