馬鹿でミーハーな女の添い寝フレンドになってしまった俺の話。

茜琉ぴーたん

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 それから夕方の終業時間まで長岡の調子は戻らず、やれやれとタイムカードを押して更衣室へ向かっていると女子トイレから化粧を盛った遥が出てきて、彼を見るなり視線を逸らした。
「なに、」
「なんでも…お疲れ様」
「…これから合コンか」
「うん…着替えて…そのまま行くから」
 朝言っていた通り仕事用の化粧に色を足して、チークは広く置いてふんわり色っぽく、男を狩るための彼女の本気がそこに見える。しかしすっぴんに見慣れた長岡は華やいだ遥の顔が嘘臭く思えて仕方がない。
 まだ見ぬ銀行マンのために顔を彩って着飾るのか…長岡の藪から棒な嫉妬の炎が心をあぶって焦がして、
「ふーん…なぁハルカ、」
女子更衣室へ入ろうとする遥を衝動的に呼び止めた。
「モジャ、なに…てか名前で呼んじゃダメじゃん、まだ人が…なに?」
 そして振り返った彼女の手首を掴み、
「静かにしてろよ」
と通路を挟んで反対の男子更衣室を開ける。
「なに…」
 扉を入って正面にはパーテーションが置いてあり、中の着替えが廊下から直接見えないようにはなっている。
 長岡はそちらではなく左側、整備士の紅一点・秋花用に設けられたスペースへと遥を押して歩かせた。

 壁と金属製ロッカーに挟まれた細長い通路、入口のカーテンを静かに閉めれば数人着替えているであろう男性に誰も気付くものはない。
「直樹、なに…」
「ハルカ、おっぱい見せて」
「は…」
 長岡は答えを待たず、遥の制服のボタンを外してブラウスへも手を掛ける。
「ちょっと…こんな…」
「隙間から、見えるかもな」
 遥が仕切りのロッカーへ顔を向けると、確かに継ぎ目から人の動きが影でも切れ切れに動く光からも見て取れた。注視すればこちらの気配はバレるだろう、何をしてるかは見えなくても本日休みの秋花のロッカーに人がいるとなれば誰か乗り込んで来るに違いない。
「……なおき…」
「向こう、ロッカーの方向いて、男どもに見られてると思って、」
「ばかぁ…」
 着替えをする人の影、雑談の声、太い笑い声。それらが全て自分に放たれているように思えば遥はしおしおと力を無くした。
 そんな彼女を背側からハグして言わば羽交締めにして、長岡は男性陣に見せつけるように想像しながら遥の胸を揉みしだく。
 バックハグすれば自然と口元が小さな耳へ近付いて、
「ハルカ、乳首立ってる」
と囁くと両方掴まれた遥は喘ぎ声を出さないように口をきつく結んだ。
「なぁ、どんな服で行くの?スカートか?膝丈ならバッチリだろうな、お前脚キレイだから」
「そ、う?」
「ハルカのパーツの中で、脚が一番キレイ…好みだよ」
「好き?」
「好み」
 何が違うの?好きって言えばいいじゃない、遥は唇を震わせて振り返りキスをせがむも拒まれる。
「何よ…何の目的…」
「……直前まで…他の男とこんな事して…それでコンパ行くっていうプレイ、かな…」
「ばかじゃないの…」
「馬鹿だよ」
 ぐりんぐりんとつねってぴんと引っ張って、しばらく乳首を虐めたら長岡は手を離してロッカーを背にし遥へ対面した。
「ハルカ、しゃがんで、見て」
そう長岡は冷たく言い放ち、胸をはだけ床に腰を下ろした遥の顔の前へモノを露出させる。
「こんなとこで…やだ、」
「黙れ、見てろって…まぁ俺は別にバレたっていいけど」
「ねぇ、直樹、なんで、」
 ひそひそごにょごにょ、二人の密かなやり取りは数ラリーで終わり、長岡は右手で自身を握りしごき始める。
「見て、」
「やだ、」
「は…」
 油と土と汗と男の匂い、長岡からだけではなくこの部屋全体の空気に漂うそれらに遥は鼻を犯され瞳に涙を浮かべた。
「あー…ハルカ…エッチだなぁ、ここ男子更衣室だぜ、」
 頬に触れるくらいに近付ければ遥はぺちぺちと男の脚を叩き、その物音に「なんか音した?」と着替え中の誰かが反応すると彼女はすぐにしゅんと大人しくなる。
「ハルカ、合コンさぁ、行ってもいいけどさぁ…あー…またローター仕込んで行けよ、なぁ♡」
「なんでよ…」
「あ?んで銀行マンとやら捕まえて得意のフェラしてやってさ、電話実況してくれ、な、」
 その時も遥は歯を立てないように最大に口腔を広げて奉仕するのだろうな、長岡はまだ見ぬ銀行マンを思い浮かべて羨ましささえ感じた。
 邪険に扱われて罵倒されても擦り寄っていいように使われる馬鹿な女。でもその女にはっきりと愛情を貰えるなんて、性欲ではなく愛情を注いでもらえるなんて…自分にその役目は回ってこない。
 たかまった長岡は張り詰めたモノをいよいよ速く扱く。
 そして
「ハルカ、どこに出す?」
と尋ねれば遥は
「え、え、」
と周囲をキョロキョロと見回した。
 探しているのはティッシュか容れ物か、いずれにしてもここにはそんな物は存在しない。長岡は「どこに掛けていいか」と聞いていたのだ。
 射精間近のとろんとした目、荒ぶる息、遥は焦りの中でこの後のコンパや駐車場に出るまでの道筋…それどころかここから無事に出られるかどうかまで沸いた頭で考える。
「ぶっかけるな、ん、」
「やめて、」
「せっかくのその化粧もやり直しだなぁ、ハルカ♡」
「やだ、なお」
「んッ」
 生温かい粘液が閉じたまぶたにぴゅうぴゅうと掛かる。そこから僅かな重みと衝撃が襟、腹、スカートへと降りて行った。
 丁寧に巻いた髪にも飛沫がかかって、空気に触れたそれは独特の香りを放ち始める。
「ッ…ひど、い…直樹、」
 開けるに開けられない目から流れ落ちるのは涙、長岡はモノを拭かずに収めて、
「立てよ、トイレまで送ってやる」
と乱暴に遥の腕を掴み立たせ、入口のパーテーションと扉の先に注意しつつ廊下へと出た。

 そして女子トイレに入って行くところまで見届けて、ひとり駐車場へと向かい
『ごめん』
とだけ遥にメッセージを送り車に乗り込み家へと帰ってしまった。
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