33 / 86
6
33
しおりを挟む「……おい、ハルカ…寝てんの?」
「………あ、終わった、の?」
遥が顔を上げたのはあれから20分ほど経過した後で、嬢は帰り着衣した長岡が心配そうにクローゼットを覗いていた。
「…大丈夫か?その…気分悪くねぇか、寒かったろ」
「大丈夫…これ…ジャンパー借りてたし…」
「脱げよ、キャンプじゃねぇんだから…」
心なしか優しい長岡はフードの紐を緩めて、もこもこになった遥のジャンパーを剥がしてやる。
「……あの…」
「なんだよ」
「ご、ごめんね、は、恥ずかしかったよね、お風呂の間に帰ろうと思ったんだけど…こ、腰が抜けちゃったというか…ごめん、こんな…見られると…あの…ごめん、超プライバシーな、その、」
「いいよ…いまさら…お前にはち◯ぽだって見られてんだ」
「詳しくは憶えてないけど…いや、ごめん…」
恐縮する遥の腕を引いて暖かな部屋へ連れ出して、
「いい刺激になったわ…お前、夕飯は?」
と問えば彼女は
「あ、まだなの、あの…作ろうと思って材料持って来たんだけど…」
と食材の入ったエコバッグをクローゼットから持って出る。
「マジか、作ってくれ。超ハラ減ってるわ」
長岡は嬉しそうに遥を台所へと案内して冷蔵庫から缶ビールを取り出して開封した。
「…」
予想外に長岡が呑み始めたので遥は献立を少し変更して、ツマミになるものを作ろうと野菜へ包丁を入れる。
そして鍋を火にかけ全体の見通しが立ったところで会話を再開した。
「お給料日でもないのに…利用するんだね」
「ん、月末はクリスマスとかで風俗混むんだよ、だから今月分前倒しだな」
「……さっきの…リン…ちゃん?…ホストにお金注ぎ込んでるんだ」
「うん……ぷはあー……お陰でいくら稼いでも足りねぇんだとよ、勿体ねぇよなぁ…自分のものになんねぇのに…でも夢中でいられるから楽しいんだと」
達成感と開放感に満ち溢れた様子の長岡はベッドを背もたれにして、座卓の前に腰を下ろしクイクイと缶を傾ける。
酔えば間違いが起こるかもと二人の時は飲酒しない彼が堂々と呑む、それはもう2発出してしまって弾切れであると自身で分かっているからできたことだった。
「そっか……恋してんだね…もう、あの子と長いの?」
「そうでもねぇよ…あー…でも3回に1回は指名してるわ。安定の気持ち良さっていうの?具合が分かってるから楽なんだよ」
「ふーん…」
「なんだよ、いいだろ?独身だし彼女もいねぇんだし」
早くも饒舌になった長岡は眠たそうに、頬杖をついては肘を膝から滑り落としてカクカクと頭を揺らす。
「うん、もちろん……でも、ちょっとヤキモチ焼いちゃったの」
「は?なんで」
「…直樹、すっごい気持ち良さそうで…悔しかったの。私も同じようなことしたのに、求められないから…なんか寂しくなっちゃった」
野菜スティックとスパイス入りマヨネーズを座卓へ置き、遥は口をきゅっと尖らせて赤ら顔になった長岡へ目線を合わせた。
「そりゃあお前…俺らは添い寝フレンドだろ?」
「そうだけど、そうなんだけど…」
「お前は嬢じゃねぇんだからリピートしねぇよ。恋愛でもねぇんだから、気楽にしてろ」
それは確かにそうなのだけれど…遥は台所へ戻りつつ、
「うん…直樹はさ、恋愛したいとか思わないの?」
と胡瓜を噛み始めた男へ質問する。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
隠れドS上司の過剰な溺愛には逆らえません
如月 そら
恋愛
旧題:隠れドS上司はTL作家を所望する!
【書籍化】
2023/5/17 『隠れドS上司の過剰な溺愛には逆らえません』としてエタニティブックス様より書籍化❤️
たくさんの応援のお陰です❣️✨感謝です(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎)
🍀WEB小説作家の小島陽菜乃はいわゆるTL作家だ。
けれど、最近はある理由から評価が低迷していた。それは未経験ゆえのリアリティのなさ。
さまざまな資料を駆使し執筆してきたものの、評価が辛いのは否定できない。
そんな時、陽菜乃は会社の倉庫で上司が同僚といたしているのを見てしまう。
「隠れて覗き見なんてしてたら、興奮しないか?」
真面目そうな上司だと思っていたのに︎!!
……でもちょっと待って。 こんなに慣れているのなら教えてもらえばいいんじゃないの!?
けれど上司の森野英は慣れているなんてもんじゃなくて……!?
※普段より、ややえちえち多めです。苦手な方は避けてくださいね。(えちえち多めなんですけど、可愛くてきゅんなえちを目指しました✨)
※くれぐれも!くれぐれもフィクションです‼️( •̀ω•́ )✧
※感想欄がネタバレありとなっておりますので注意⚠️です。感想は大歓迎です❣️ありがとうございます(*ᴗˬᴗ)💕
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる