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2022
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しおりを挟む「えーと、どこまで話しましたっけ」
お水のグラスを持ち帰った青木さんは、あたふたと箸を握る。
どこまでも何も、始まってもいない。
「とりあえず、食べて下さい」
「そ、そうですね…」
『ニャー!』
またもやネコちゃんロボットが訪ねて来て、その便には私のご飯も載っていた。
「どうぞ」
「どうも…」
片手でお盆をヒョイと持つ筋力、その手に担がれたのが懐かしい。
「えーと」
「また来ますよ、揃うまで待ちましょう」
「そうですね…」
『ニャー!』
カツ煮とミックスグリル、これで一応全て届いたようだ。
「…それで、えーと」
もしかして話し下手な人なのかな、食事も揃ったようだし私が主導権を握ってみることにした。
「あの、まず、あの抱っこの目的は何だったんですか?」
「えー…と…」
「あの頃、地域一帯で話題になってました。消防士が市民を抱き上げるって」
「そうですか…あの、端的に言いますと、」
この人に任せていると話が進まない。
私は
「若手イジメですか?」
とハッキリ聞いてやった。
「…!…あの…」
「青木さんが私に声を掛けた時、いえ、毎回、先輩らしき人達が青木さんを監視してました。だから、私は遂行しなきゃ貴方が困るんだと思ってOKしたんです」
「その節は…」
「謝らなくて良いです。嫌とは思ってませんから…で、どうなんですか?」
青木さんは食事の手を止めて、
「そうです。署の伝統的な…扱きのひとつでした」
と過去形で語る。
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