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2022
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しおりを挟む「知らない人に声を掛けて、持ち上げて力比べをするといった内容でした。自分たちは現場では救助者がどんな体格だろうが異性だろうが構わず助けますから、そうした時に怯まない度胸や社交性を養う為のなんて…取って付けた目的だったようです。実際には、重たそうな人を狙ったり、断りそうな恐そうな人を狙ったり、要は若手が頭を下げたり苦しんだり恥をかいたりするところを見たかったんでしょう。新入りや若手を先輩が鍛える、そういう名目で行われた悪しき風習でしたね」
きっと、何度かは怒る人に当たったりもしているだろう。
そしたら監視していた先輩たちは「うちの若手がすみません」と他人事として謝りに駆けて来るのだろう。
「(私は重そうな人代表かい)」
腑に落ちないが仕方ない。
おおかた予測通りだったので理解は早いし。
「自分はそれが嫌で…ある日、『もうお終いにしませんか』と進言したんです。そうしたら、後輩の代わりに自分が標的になりまして…それで、あ、すみません、今さらですがお名前を頂いても?」
「舞岡です」
「ま、舞岡さんに声を掛けた日ですね、『あの子、行けよ』と指示されまして…それでお声掛けをした次第なんです」
「重そうでしたもんねぇ」
甘い醤油の掛かったマグロと雑穀米を、もっちゃもっちゃ噛みつつ悪態をつく。
やっぱり罰ゲームじゃないか、善良な市民を何だと思ってるんだ。
しかし嫌な先輩もいたもんだなぁと味噌汁に手を掛けると、
「違うんです、」
と青木さんが大きな手の平を私に掲げた。
「はい?」
「先輩たちは、そうした目的で舞岡さんを指定したんだと思うんです、でも他にも理由がありまして」
「いかにも憤慨しそうでした?」
「ち、違うんです…」
はっきりしないなぁ、添え物のタクアンに歯を立てる。
「別に怒りませんよ、過去のことですし」
「怒られるのは当然というか、そこは舞岡さんの権利なので…」
「はぁ。他に私が選ばれた理由って何なんです?」
「……」
青木さんは残りのカツ煮を箸で摘んで、
「いつも、署の前を通る舞岡さんを、自分が目で追ってたんです。言いましたよね、気になってたって…それを、先輩たちは面白がって舞岡さんが通る度に自分をけし掛けるようにしたんです」
と言い切り豪快に口に収めた。
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