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1月・嫁が可愛いので色んなシチュエーションで楽しめる
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しおりを挟む中旬の金曜日の夜。
守谷は妻の手を引き、自作の防音リフォームを施した2階の書斎兼オーディオルームへ誘った。
「ミラちゃん、今日はここで…楽しいもの観よか」
「なに?映画?」
「そんな感じ、エンターテインメントやね…足音気ぃつけて、」
防音、ということでここで致せるかも…と企んだこともあったが、この真下が同居の母の寝室なので早々と諦めている。
それに今頃、階下では息子が金曜の映画番組を横になって観ているのだ。
「今日のはなんか分からん洋画やったよ?うち興味あれへん…」
「DVDよ、」
「はぁ…」
デスクにはパソコン、床に大きなスピーカーが数種類、テレビにレコーダーに何やら分からない機械、6畳間に所狭しと並んでいる。
亡くなった守谷の父はオーディオにお金をかける人だったらしく、形見とも言えるそれらの機器を守谷は今も大切に使っているのだ。
もっともそんなに音楽を聴くわけでもないので、主に映画を観たり、皆が留守だったり寝静まってからギリギリの音量でAVを流すなどのもったいない使い方である。
「ミラちゃん、ここ」
守谷は未来をテレビの前の座椅子に座らせ、自身はその隣に座布団を敷いて腰を下ろした。
「なんやの?」
「一緒にAV観よ、ミラちゃん」
「はぁ?……嫌やん」
嫁は眉の間を狭めて夫を睨みあげる。
「いや奥さん恐い顔して…可愛いのに台無しやがな。爽やかな奴やから、な」
「爽やかって……気持ち悪いねん……あの…男が…」
未来の過去のトラウマ、自身の父親を連想させる物はNG、それは守谷も分かっている。
もっとも彼女の記憶の中の父親像は既に今の夫と年齢はそう変わらないと思うのだが、守谷はそこには触れずに黙っていた。
「そういえば」と思い出がフラッシュバックして自分まで拒否されては敵わないからである。
「ミラちゃん、女性向けのAVてのもあんのよ、爽やかよ」
「ハルくん……あんなぁ、うちはイケメンとかどうでもええねん、……ハルくんしか知らんねんから…」
「へへっ、さよか…え、オレはイケメンとちゃうの?」
「別格や…」
未来が結婚した時には守谷は既に31歳、彼女は夫より若い男に惹かれることが無い。
年齢はもはや関係は無いのだが、ほぼ刷り込みのように「好みのタイプ=守谷」が固定されたために性的な活動において夫以外の存在を想定できないのだ。
「これはでも…人気らしいで?イケメン男優。アイドルみたいやな」
守谷は未来の肩をガッチリ抱き、『オールプレイ』を選択して小さめの音声で再生させた。
「ハルくんはどないな気持ちで観んのよ…」
「映画感覚やな」
美男美女カップルの公園デートの映像、睦まじく並んで歩き手を絡ませ…微笑み合うそれぞれのアップと男性の全体像のクロスフェード、それはカラオケのイメージビデオのような導入だった。
「な、イケメンやん」
「好みちゃうし…」
背はそう高くないが半袖から覗く腕は筋肉が付いていそう、二重でくりくりとした瞳と薄くて瑞々しい唇、一般的に言うイケメンなのだろうが未来には関係ない。
「女の子の方は?あれ…あんまりむちむちちゃうね。細いやん」
「せやねー、女性向けやからその辺におりそうな感じにしたんちゃう?」
そこまで言うと守谷は未来が座っている座椅子の背を倒して背もたれだった所に移動、バックハグで嫁の腰を抱いた。
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