どこまでも玩具

片桐瑠衣

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晴らされた執念

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 瑞希達の背中を一瞥し、類沢は男と向き合った。
 睨むなという方が無茶な話だ。
 男の方も目を逸らさない。
 僅かに類沢が見下す形だ。
 だが、双方不利はない。
 襟梛がそっと家に入ってゆく。
「あなたは行かないのか?」
 挑発する口調。
「私はただの付き添いですよ。哲様の無事さえ確認出来れば、仕事は終わりですから」
「残酷な方だ」
 半笑いに云う。
 そろそろ仮面が剥がれてしまう。
 自分から取ってもいいのだが。
「自信がおありですか」
「なんの話だ?」
「これは家宅捜査と同じ。あれほど頑なに閉じていた扉を開いたにしては、随分余裕なご様子で」
「くくく……そう見えるのか」
 類沢は眉を潜める。
 不気味だ。
 この男は掴みがたい。
 篠田や雛谷のような、扱いやすい人間ではない。
 クッと二階に頭を向ける。
 その横顔は、何を企んでいる。
「ぐッッ……」
「瑞希!」
 声に反応して振り向く。
 今のは、瑞希の悲鳴か。
 それから男を見る。
 ニヤリと歪んだ顔に、吐き気がした。
「勝手に他人の家を漁るのはどうかと思うが」
 男の言葉を黙殺し、二階に上がった。
 過ぎ行く瞬間、玄関の隙間にストッパーを落として。
 先刻の男の行動からして、内ロックは自動だ。
 多分気づかれないだろう。
 ガチャン。
 後ろから男が入り、玄関を閉めた。
 
「先生!」
「瑞希?」
 金原の足元で瑞希がうずくまっている。
 痙攣し、手首を押さえて悶える。
 目線が一定しない。
「電気……」
 隣のドアを確認する。
 あの男。
「う……はぁッッ…ぐ…」
 瑞希はすぐに目を閉じ気絶した。
 スタンガンレベルだ。
「金原圭吾。瑞希を玄関に連れて行って」
「でもっ」
「連れて行って?」
 金原は言葉を我慢し瑞希を抱えた。
 階段を下ってゆく途中、男とすれ違った。
「どうかしたか?」
 今すぐ蹴落としてやりたい。
 首を折りたい。
 足を払って突き落としたい。
 拳を握り締め、耐える。
 だが好戦的な両目は相手の隙ばかり見つけて報告してくる。
 膝を崩して、体勢が傾いたところで肩を蹴り飛ばす。
 それだけで終わる。
 深呼吸をする。
 そんなことをしにきたんじゃない。
「この部屋は誰の部屋です?」 
「哲だ」
 躊躇いもなく言いのけた。
「寝てるかもな」
 
「合い鍵はお持ちで?」
 
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