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一章 大川
第19話 外伝 壊れた世界の日常①
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「...ふぅぅ」
冷蔵庫の後ろに隠れた一人の少女が、バットを握り締めていた。
何故そんな事をしているのか。理由は単純だ。バールのような物で正面の扉をぶち壊し、何者かが自宅に侵入してきたのだ。明らかに知性あるもの行動、つまりゾンビではなく人間の仕業という事だ。
(...どうする)
目の前の現実から逃避するように、少女の脳内では最近の出来事が次々と浮かび上がっていた。
あの日。世界中が未知のウィルスにより大パニックになってから、2週間ほど経過した。その結果、この世界は地獄と化した。
社会基盤は完全に崩壊。テレビやガスなども止まってしまっていた。電気や水道だけはまだ使えているが。それも時間の問題だろう。
少女の脳内で、狂った教師が次々と身近な生徒を襲う悪夢のような映像が蘇る。初めて少女が死という瞬間を明確に認識した瞬間だ。この時の記憶を、少女は生涯忘れる事はないだろう。つまりはそれほどまでに異常な状況だったということだ。
死から逃れるために極力外界との接点を避け、家に引きこもり、現在の状況に少女は至ったというわけだ。現状を打開するために、少女はスカートの中に手を伸ばし、秘密兵器を取り出す。
無骨な形をした、5連発式リボルバー。これこそが少女の奥の手だ。
(極力使いたくなかったけど、そんな事を言ってる場合じゃない)
警察官の死体を漁り、十分な数の弾も確保している。これならば確実に侵入者を始末する事ができるはずだ。
「はああああぁぁぁ... ふうぅ...」
意識して息を吐き出す。心は落ち着いた。冷蔵庫だ。冷蔵庫の前を通ったやつから殺そうと、少女は覚悟を決めた。
「...っ!!」
頭にヘルメットを被り、金属バットで武装した不審者を確認。首元の服を軽く引っ張り、足を絡めて地面に引きずり倒す。
「がああぁぁぁ!?」
「...!」
頭部を狙い拳銃を発砲する。バン!という乾いたような音と共に、弾丸が発射された。飛び出した弾丸は相手の脳髄にめり込み、その命を刈り取る。顔の潰れ具合から、確実に死んだと少女は判断した。
(もう一人は!?)
リビングの方向を見ると、能天気に缶詰めを持ちながら固まっている女を発見した。おそらくは突然の銃声に脳の処理が追いついていないんだろう。肉体と精神が乖離しているまさにその瞬間を狙い、少女は走り出した。
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
野獣のような奇声を上げて、女に突撃する。
「ひぃ!?」
少女はふざけてこんな事をやってるわけではないない。人間は大きな音を聞くと体が竦んでスキが出来る。1秒、2秒という時間を稼ぐためならば、少女は手段など選ばない。文字通り命が懸かっている事を理解しているからだ。
走りながら女の足を銃で狙い、発砲する。初弾は外したが、二発目は女の足に命中した。女が悲鳴を上げながら床に倒れる。
(...弾は、節約しないと)
武器をバットに持ち替えて女に接近する。
「痛い!!痛いいいいい!!」
「...ふっ!!」
「がぅぅぅ!! あがっ!!あがあああああああああああああ!!」
餅つきのときのようなテンポで何度も何度もバットを振り下ろす。しばらくするとピクピクとして女は動かなくなった。作業完了の合図だ。
「...疲れた」
バットを投げ捨てて、その場に座りこむ。殺人に対する罪悪感などという感情はこの2週間で完全に吹き飛んでいた。殺らなければこっちが殺られる。この世界では弱肉強食こそが唯一絶対のルールなのだ。
「...はあ、温かい温泉にでもゆっくり入りたい」
冷蔵庫の後ろに隠れた一人の少女が、バットを握り締めていた。
何故そんな事をしているのか。理由は単純だ。バールのような物で正面の扉をぶち壊し、何者かが自宅に侵入してきたのだ。明らかに知性あるもの行動、つまりゾンビではなく人間の仕業という事だ。
(...どうする)
目の前の現実から逃避するように、少女の脳内では最近の出来事が次々と浮かび上がっていた。
あの日。世界中が未知のウィルスにより大パニックになってから、2週間ほど経過した。その結果、この世界は地獄と化した。
社会基盤は完全に崩壊。テレビやガスなども止まってしまっていた。電気や水道だけはまだ使えているが。それも時間の問題だろう。
少女の脳内で、狂った教師が次々と身近な生徒を襲う悪夢のような映像が蘇る。初めて少女が死という瞬間を明確に認識した瞬間だ。この時の記憶を、少女は生涯忘れる事はないだろう。つまりはそれほどまでに異常な状況だったということだ。
死から逃れるために極力外界との接点を避け、家に引きこもり、現在の状況に少女は至ったというわけだ。現状を打開するために、少女はスカートの中に手を伸ばし、秘密兵器を取り出す。
無骨な形をした、5連発式リボルバー。これこそが少女の奥の手だ。
(極力使いたくなかったけど、そんな事を言ってる場合じゃない)
警察官の死体を漁り、十分な数の弾も確保している。これならば確実に侵入者を始末する事ができるはずだ。
「はああああぁぁぁ... ふうぅ...」
意識して息を吐き出す。心は落ち着いた。冷蔵庫だ。冷蔵庫の前を通ったやつから殺そうと、少女は覚悟を決めた。
「...っ!!」
頭にヘルメットを被り、金属バットで武装した不審者を確認。首元の服を軽く引っ張り、足を絡めて地面に引きずり倒す。
「がああぁぁぁ!?」
「...!」
頭部を狙い拳銃を発砲する。バン!という乾いたような音と共に、弾丸が発射された。飛び出した弾丸は相手の脳髄にめり込み、その命を刈り取る。顔の潰れ具合から、確実に死んだと少女は判断した。
(もう一人は!?)
リビングの方向を見ると、能天気に缶詰めを持ちながら固まっている女を発見した。おそらくは突然の銃声に脳の処理が追いついていないんだろう。肉体と精神が乖離しているまさにその瞬間を狙い、少女は走り出した。
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
野獣のような奇声を上げて、女に突撃する。
「ひぃ!?」
少女はふざけてこんな事をやってるわけではないない。人間は大きな音を聞くと体が竦んでスキが出来る。1秒、2秒という時間を稼ぐためならば、少女は手段など選ばない。文字通り命が懸かっている事を理解しているからだ。
走りながら女の足を銃で狙い、発砲する。初弾は外したが、二発目は女の足に命中した。女が悲鳴を上げながら床に倒れる。
(...弾は、節約しないと)
武器をバットに持ち替えて女に接近する。
「痛い!!痛いいいいい!!」
「...ふっ!!」
「がぅぅぅ!! あがっ!!あがあああああああああああああ!!」
餅つきのときのようなテンポで何度も何度もバットを振り下ろす。しばらくするとピクピクとして女は動かなくなった。作業完了の合図だ。
「...疲れた」
バットを投げ捨てて、その場に座りこむ。殺人に対する罪悪感などという感情はこの2週間で完全に吹き飛んでいた。殺らなければこっちが殺られる。この世界では弱肉強食こそが唯一絶対のルールなのだ。
「...はあ、温かい温泉にでもゆっくり入りたい」
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