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一章 大川

第7話

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「・・・疲れた」

 自宅に帰ってきた。早速冷蔵庫に食品を詰めていく。これでしばらく外出する必要はないだろう。俺の予想だと、今後外出は非常にリスキーな行為になる。これから俺は長期で自宅に籠城するつもりだ。

 リビングに移動して、何となくテレビを付けた。...そういえば今日は一度もニュースを見てなかったな。それほどまでに俺はパニックになってたのか。

 テレビからはどのチャンネルからも緊迫した声が聞こえてきた。

「世界各地で暴動が起きています!」

「謎の感染症が流行中!」

「学校で大量殺人が発生!」

「不要不急の外出をしないよう注意してくだい!」

 平和なチャンネルなど1つもなかった。どのチャンネルもこの異常事態について報道しているようだ。

「...ヤバい。これ、世界規模で起こってるのか」

 映像を見てると、大量のゾンビにリポーターが襲われるシーンなどもあった。スタジオの人間も青ざめた顔をしている人が多い。

 ピンポーン!と、音が鳴り響いた。...何だ?ドアを開くと、そこには近所のガキが居た。

「おじさん。晩御飯ちょうだい?」

「ああ?何言ってんだ。まだその辺のコンビニとかに食料は売ってるだろ」

「お金持ってないし、コンビニは何か怖い人たちがたくさん居る」

「げ!? マジか...」

 もう食料確保に向けて動いてる奴らがいるのか。こりゃ買い溜めして正解だったな。

「しょうがねえな。ちょっと待ってろ」

「...やった♪」

 有益な情報が得れたし、今晩の食事くらいはプレゼントしてもいいだろう。これが男だったら容赦なく見捨てるんだが、あのガキ顔だけはほんと良いからな。

「ほらよ。デミグラスハンバーグとチキンライスだ。まあ冷凍食品だけどな」

「ありがとう、おじさん」

 クソガキが食料を持って部屋に帰って行った。というか、あいつちゃんと一人で部屋の中の死体を片付けられたのか?...いや、そんな事俺の知ったことじゃないな。

 部屋に戻ると、近所から大きなサイレンの音が聞こえ始めた。物凄い数の音だ。パトカーや消防車などが多数出動している。

 それから何かが壊れるような音、誰かの悲鳴、奇声なども聞こえ始めた。ついに近所でも騒動が発生したようだ。

「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

「おい!何してる!?ぎ、ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 窓の外は地獄と化していた。人が人に噛みつき、次々と死体が動き始めている。いよいよパンデミックが始まったのだ。

 俺は震える手で武器を握りしめ、ドアから離れた場所でずっと警戒し続けていた。
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