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みんなとお出かけ!
しおりを挟む『転校ごときで俺との関係、簡単に切れると思うなよ?』
嘉賀先輩に色々絞られた後に頂戴した言葉がコレだ。
ともすれば夢にも出てきそうなセリフだが、先輩が本気で言ってる事だから現実になりそうでちょっと怖い。
俺は曖昧な返事をしつつ、軋む身体を引き摺りながら帰宅した。
「ぐっ…ただいマイハウスゥ…」
(嘉賀先輩、体力底なしかよ…)
体力的にも限界が来ていたのか、風呂に入ってベッドに座るといつの間にか寝落ちていた。
*******
ピピピピピッピピッピ
変なリズムで鳴り続けるアラームに起こされる。
「か、身体…い"たい…」
朝起きたその瞬間から、俺の身体は既に悲痛な叫びをあげていた。
「待ち合わせ場所に辿り着けるかすら不安だぁ~…」
(最後の土曜日、こんな不純な痛みでスタートを切りたくなかった…。)
なんとか私服に袖を通し、身支度を終えると鏡をチェックする。
「やっぱり…モブだよな。」
何度鏡を確認しても、徹底的にモブ顔の俺。
こんな世界じゃなければ、経験することもなかった青春のすったもんだを今体験している。
「なんて、ゲームでもなきゃこんな状況もあり得ないけどな!!」
現に俺は現実世界で引きこもりをやっている。
「皆で遊ぶのが、今日が最初で最後って…なんか変な感覚だな。」
ちょっぴりネガティブな俺、出現。
(…こんな時間がずっと続けばいいのに。)
俺はハッとして安易な考えを振り切る。
「駄目駄目!!!しっかりしろ田中悟!!」
ここは心地がいいけど、俺の居場所は他にある。
「ここにいる間は全力で楽しんで、戻ったらまた頑張ろうって決めたもんね!!!」
両頬をバチン!と叩き喝を入れた。
今日は皆と遠出する予定だ。
主人がいるから暗い場所がいいだろうってことで、水族館か映画館で迷った。
最後は俺が、いつの日か主人が番宣をしていた映画を見たいと言った為、今日は映画館で集合になっている。
つまり、主演と一緒に出演作品を見るわけだが…
「戻ったらこんな贅沢なことできないしなぁ…」
俺はいつもの香水はつけず、家を出た。
「お待たせ~!!!」
「あっ!田中ぁっ!!ポップコーン買っといたよ!」
「田中君、おはよう。」
節々の痛みと格闘しながら、待ち合わせ時間通りに集合場所に到着する。
「あれ?主人は?」
「まだ来てないんだよね~!珍しい!」
「…主人君って、あれじゃないの?」
「「…え?」」
黒木が指さす先には、確かに背丈やスタイルの良さについては主人らしい人がこちらに近寄ってくる。
ただ…
「ブッ!!!なにあれ!!!」
「いやっ…え?!アイツどうしたの?!?!」
「………」
近寄ってくるのは、スタイル抜群の…イケおじだった。
「おい、笑うなよ」
里田の頭にチョップを食らわす主人らしき人物。
声は確かに主人なのだが、昨日まではなかった髭が生えている。
更にはサングラス着用済みで、その道の人間に見えてしまっても仕方ないよな…?!
「バレたら面倒だから変装してるんだよ。」
「まあ確かに…最初誰だか分からなかったもんな。」
「黒木よく分かったねぇ~!!」
「…なんとなく。」
今日見る映画は主人の初主演映画。
転校生の高校生が隣の席の同級生と些細なきっかけで、友情から恋愛へ関係性を深める「瞬き」だ。
…ちょっとリアルだな、と思ったのは心のうちに留めておこう。
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