BLゲームのモブ(俺)は誰にも見つからないはずだった

はちのす

文字の大きさ
上 下
78 / 145

みんなとお出かけ!

しおりを挟む



『転校ごときで俺との関係、簡単に切れると思うなよ?』


嘉賀先輩に色々絞られた後に頂戴した言葉がコレだ。

ともすれば夢にも出てきそうなセリフだが、先輩が本気で言ってる事だから現実になりそうでちょっと怖い。

俺は曖昧な返事をしつつ、軋む身体を引き摺りながら帰宅した。


「ぐっ…ただいマイハウスゥ…」


(嘉賀先輩、体力底なしかよ…)


体力的にも限界が来ていたのか、風呂に入ってベッドに座るといつの間にか寝落ちていた。


*******


ピピピピピッピピッピ


変なリズムで鳴り続けるアラームに起こされる。


「か、身体…い"たい…」


朝起きたその瞬間から、俺の身体は既に悲痛な叫びをあげていた。


「待ち合わせ場所に辿り着けるかすら不安だぁ~…」


(最後の土曜日、こんな不純な痛みでスタートを切りたくなかった…。)


なんとか私服に袖を通し、身支度を終えると鏡をチェックする。


「やっぱり…モブだよな。」


何度鏡を確認しても、徹底的にモブ顔の俺。
こんな世界じゃなければ、経験することもなかった青春のすったもんだを今体験している。


「なんて、ゲームでもなきゃこんな状況もあり得ないけどな!!」


現に俺は現実世界で引きこもりをやっている。


「皆で遊ぶのが、今日が最初で最後って…なんか変な感覚だな。」


ちょっぴりネガティブな俺、出現。


(…こんな時間がずっと続けばいいのに。)


俺はハッとして安易な考えを振り切る。


「駄目駄目!!!しっかりしろ田中悟!!」


ここは心地がいいけど、俺の居場所は他にある。


「ここにいる間は全力で楽しんで、戻ったらまた頑張ろうって決めたもんね!!!」


両頬をバチン!と叩き喝を入れた。

今日は皆と遠出する予定だ。
主人がいるから暗い場所がいいだろうってことで、水族館か映画館で迷った。

最後は俺が、いつの日か主人が番宣をしていた映画を見たいと言った為、今日は映画館で集合になっている。

つまり、主演と一緒に出演作品を見るわけだが…


「戻ったらこんな贅沢なことできないしなぁ…」


俺はいつもの香水はつけず、家を出た。



「お待たせ~!!!」


「あっ!田中ぁっ!!ポップコーン買っといたよ!」


「田中君、おはよう。」


節々の痛みと格闘しながら、待ち合わせ時間通りに集合場所に到着する。


「あれ?主人は?」


「まだ来てないんだよね~!珍しい!」


「…主人君って、あれじゃないの?」


「「…え?」」


黒木が指さす先には、確かに背丈やスタイルの良さについては主人らしい人がこちらに近寄ってくる。


ただ…


「ブッ!!!なにあれ!!!」


「いやっ…え?!アイツどうしたの?!?!」


「………」


近寄ってくるのは、スタイル抜群の…イケおじだった。


「おい、笑うなよ」


里田の頭にチョップを食らわす主人らしき人物。

声は確かに主人なのだが、昨日まではなかった髭が生えている。
更にはサングラス着用済みで、その道の人間に見えてしまっても仕方ないよな…?!


「バレたら面倒だから変装してるんだよ。」


「まあ確かに…最初誰だか分からなかったもんな。」


「黒木よく分かったねぇ~!!」


「…なんとなく。」



今日見る映画は主人の初主演映画。

転校生の高校生が隣の席の同級生と些細なきっかけで、友情から恋愛へ関係性を深める「瞬き」だ。


…ちょっとリアルだな、と思ったのは心のうちに留めておこう。


しおりを挟む
感想 193

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

ヤバい薬、飲んじゃいました。

はちのす
BL
変な薬を飲んだら、皆が俺に惚れてしまった?!迫る無数の手を回避しながら元に戻るまで奮闘する話********イケメン(複数)×平凡※性描写は予告なく入ります。 作者の頭がおかしい短編です。IQを2にしてお読み下さい。 ※色々すっ飛ばしてイチャイチャさせたかったが為の産物です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園なのに、王道じゃない!!

主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。 レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ‪‪.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。 それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。 友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!! なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。 7/28 一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。

処理中です...