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本編
第六話
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「うむうむ今日も美しいなお前は。」
それから更に半月後、懲りる事なく目の前には、デレデレとだらしなく表情を崩す国王陛下がいた。
毎月恒例のこのやり取りも、カレンはもう慣れっこだった。
――そういえば、この剣にぶっ叩かれたのは王様が第一号だったなぁ。
相変わらず美味しい王室御用達の高級紅茶を口に含みながら、ふとそんな事を思い出す。
それは、縁談話がぽつりぽつりと寄越されはじめた二年ほど前の事だった。
どこから聞きつけてきたのか、急に国王陛下から王宮へ招待されたのだ。
手紙には、もちろん剣を持ってくる事が条件付けられていた。
元々、剣マニアで有名だった国王陛下の事は知っていたので、我が家の事をよく調べたなぁと当時は感心したものだった。
そして国王に会って早々「予の妃にならんか?」と、突然プロポーズされたのだった。
公の場では無かったから良かったものの、あの時の出来事は悪夢でしかなかった。
開口一番そう言い放った国王に対し、我が家の剣は容赦なかった。
綺麗な弧を描き陛下の脳天をかち割ったのである。
あの時は本当に生きた心地がしなかった・・・・・・。
それだけではなく、我が家の剣はあろうことか昏倒し蹲る陛下のお尻をバシバシ叩いて追い討ちをかける始末。
取り押さえようとした王宮騎士までもボコボコにしてたっけ。
当時の事を思い出し遠い目をするカレン。
――よく私無事だったよね。
本来なら、斬首刑も免れないほどの大惨事だったにも関わらず、カレンは今もこうして生きていられた。
それもこれも、剣のおかげなのだが素直に喜べない。
まあ、私を取り押さえようとした衛兵も、ボコボコにしてしまったのだから、周りは恐ろしくて手も足も出せなかったのだろう。
あの時の出来事は結局不問にされ、その交換条件として国王陛下に剣を見せに来ることで手打ちにされた。
そのためカレンは月に一度、こうやって人目を避けて王様に会いに来ている訳なのである。
そういえばあの後くらいから縁談が増えたんだっけ。
「どうした、ぼーっとして?」
そんな事を思い出していると、先程まで散々剣を愛でまくっていた国王が突然話しかけてきた。
少々忘却の彼方に意識が飛んでいたカレンは、タイミング悪く口につけていた紅茶で咽てしまった。
げほげほと苦しそうに咳き込むカレンの背中を、国王付きの侍女が優しく撫でてくれた。
侍女に礼を告げつつ恨めしそうな目で国王を睨みつけると、キョトンとした顔の陛下と目が合った。
今年26歳の誕生日を迎えた若き王は「大丈夫か?」と、心配そうにこちらを見ている。
「だ、大丈夫です。」
「そうか、珍しいなそなたが呆けているなど。」
国王はそう言って、にやりと笑った。
やれやれまたか、とカレンは小さく嘆息する。
最近何故か王に含み笑いをされる事が多くなった。
なんとなく、からかわれているような嫌味を言われているような曖昧な言い方に、カレンは少しばかりムッとする。
「なにか?」
「なに、疲れているのかと案じたまでよ、新婚は疲れる事が多いと聞いておるからな。」
にやにやにや。
――うん、今なら頭かち割っても許す!
じいっと見つめるカレンの視線に、国王が身の危険を感じて椅子ごと後退った。
それから更に半月後、懲りる事なく目の前には、デレデレとだらしなく表情を崩す国王陛下がいた。
毎月恒例のこのやり取りも、カレンはもう慣れっこだった。
――そういえば、この剣にぶっ叩かれたのは王様が第一号だったなぁ。
相変わらず美味しい王室御用達の高級紅茶を口に含みながら、ふとそんな事を思い出す。
それは、縁談話がぽつりぽつりと寄越されはじめた二年ほど前の事だった。
どこから聞きつけてきたのか、急に国王陛下から王宮へ招待されたのだ。
手紙には、もちろん剣を持ってくる事が条件付けられていた。
元々、剣マニアで有名だった国王陛下の事は知っていたので、我が家の事をよく調べたなぁと当時は感心したものだった。
そして国王に会って早々「予の妃にならんか?」と、突然プロポーズされたのだった。
公の場では無かったから良かったものの、あの時の出来事は悪夢でしかなかった。
開口一番そう言い放った国王に対し、我が家の剣は容赦なかった。
綺麗な弧を描き陛下の脳天をかち割ったのである。
あの時は本当に生きた心地がしなかった・・・・・・。
それだけではなく、我が家の剣はあろうことか昏倒し蹲る陛下のお尻をバシバシ叩いて追い討ちをかける始末。
取り押さえようとした王宮騎士までもボコボコにしてたっけ。
当時の事を思い出し遠い目をするカレン。
――よく私無事だったよね。
本来なら、斬首刑も免れないほどの大惨事だったにも関わらず、カレンは今もこうして生きていられた。
それもこれも、剣のおかげなのだが素直に喜べない。
まあ、私を取り押さえようとした衛兵も、ボコボコにしてしまったのだから、周りは恐ろしくて手も足も出せなかったのだろう。
あの時の出来事は結局不問にされ、その交換条件として国王陛下に剣を見せに来ることで手打ちにされた。
そのためカレンは月に一度、こうやって人目を避けて王様に会いに来ている訳なのである。
そういえばあの後くらいから縁談が増えたんだっけ。
「どうした、ぼーっとして?」
そんな事を思い出していると、先程まで散々剣を愛でまくっていた国王が突然話しかけてきた。
少々忘却の彼方に意識が飛んでいたカレンは、タイミング悪く口につけていた紅茶で咽てしまった。
げほげほと苦しそうに咳き込むカレンの背中を、国王付きの侍女が優しく撫でてくれた。
侍女に礼を告げつつ恨めしそうな目で国王を睨みつけると、キョトンとした顔の陛下と目が合った。
今年26歳の誕生日を迎えた若き王は「大丈夫か?」と、心配そうにこちらを見ている。
「だ、大丈夫です。」
「そうか、珍しいなそなたが呆けているなど。」
国王はそう言って、にやりと笑った。
やれやれまたか、とカレンは小さく嘆息する。
最近何故か王に含み笑いをされる事が多くなった。
なんとなく、からかわれているような嫌味を言われているような曖昧な言い方に、カレンは少しばかりムッとする。
「なにか?」
「なに、疲れているのかと案じたまでよ、新婚は疲れる事が多いと聞いておるからな。」
にやにやにや。
――うん、今なら頭かち割っても許す!
じいっと見つめるカレンの視線に、国王が身の危険を感じて椅子ごと後退った。
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