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「それで?殿下はわたしと旦那さまの結婚に納得できましたか?」
「っ、………気づいていたのか」
「えぇ。もう少し上手にお隠しなったほうがよろしいかと」
「そう、か………。父上にもよく言われるのだが、僕はどこがダメなのだろうか」
「言葉遣いですね。分かりやすすぎます」
「………………、」
居心地悪そうにする殿下をころころと笑ったわたしは、ブラックオパールの飾りが見事な扇子をひらりと口元に広げている王女殿下に微笑みかける。
「わたしから旦那さまを奪いたいのでしたらどうぞご自由に。“略奪愛”という響きは本来嫌いなのですが、わたしは彼を愛しておりませんので、ご自由に掻っ攫ってくださって結構ですよ。但し、わたしは彼のそばに寄ることさえしたくありませんから、わたしのお手伝いはありませんよ」
「えぇ、結構ですわ。では、遠慮なくアピールさせていただきますわね」
「えぇ」
意味深かに笑い合うわたしたちにドン引いている王太子殿下を無視しながら、わたしはメイドが淹れてくれた紅茶をゆっくりと味わう。
「………それにしても、屋敷の雰囲気が変わったな」
「えぇ。流石のわたしでも、あの厨二病炸裂なお化け屋敷に住み続けたくはありませんでしたので」
「そ、そうか………、」
「ぶふっ、」
目線を横にずらした王太子殿下を、王女殿下は思いっきり笑った。
「確かに今までのこのお屋敷は厨二病炸裂のお化け屋敷でしたわね。ぶふっ、ふふふっ、あはははっ!!」
「笑いすぎだぞ」
「兄さまは黙ってて。わたくし、あなたのこと気に入りましたわ。今後ともぜひご贔屓に。そろそろ帰りますわよ、兄さま」
「は!?まだ話がっ」
「終わりましてよ。彼女に害はなかった。これだけの報告があれば十分ですわ」
嵐のようにやってきた王太子殿下と王女殿下は、こうしてまた嵐のようにお屋敷から去って行ったのだった。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
「っ、………気づいていたのか」
「えぇ。もう少し上手にお隠しなったほうがよろしいかと」
「そう、か………。父上にもよく言われるのだが、僕はどこがダメなのだろうか」
「言葉遣いですね。分かりやすすぎます」
「………………、」
居心地悪そうにする殿下をころころと笑ったわたしは、ブラックオパールの飾りが見事な扇子をひらりと口元に広げている王女殿下に微笑みかける。
「わたしから旦那さまを奪いたいのでしたらどうぞご自由に。“略奪愛”という響きは本来嫌いなのですが、わたしは彼を愛しておりませんので、ご自由に掻っ攫ってくださって結構ですよ。但し、わたしは彼のそばに寄ることさえしたくありませんから、わたしのお手伝いはありませんよ」
「えぇ、結構ですわ。では、遠慮なくアピールさせていただきますわね」
「えぇ」
意味深かに笑い合うわたしたちにドン引いている王太子殿下を無視しながら、わたしはメイドが淹れてくれた紅茶をゆっくりと味わう。
「………それにしても、屋敷の雰囲気が変わったな」
「えぇ。流石のわたしでも、あの厨二病炸裂なお化け屋敷に住み続けたくはありませんでしたので」
「そ、そうか………、」
「ぶふっ、」
目線を横にずらした王太子殿下を、王女殿下は思いっきり笑った。
「確かに今までのこのお屋敷は厨二病炸裂のお化け屋敷でしたわね。ぶふっ、ふふふっ、あはははっ!!」
「笑いすぎだぞ」
「兄さまは黙ってて。わたくし、あなたのこと気に入りましたわ。今後ともぜひご贔屓に。そろそろ帰りますわよ、兄さま」
「は!?まだ話がっ」
「終わりましてよ。彼女に害はなかった。これだけの報告があれば十分ですわ」
嵐のようにやってきた王太子殿下と王女殿下は、こうしてまた嵐のようにお屋敷から去って行ったのだった。
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