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Ep.3 ファーストコンタクト(1)

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   ◆◆◆

  ファーストコンタクト

   ◆◆◆

 本能はその生物の行動にかたよりを作る。
 趣味や趣向、そのような強い好奇心や興味に縛られ、執着することがある。
 そのようなかたよった行動が時に良い方向に転がることがある。
 それを素晴らしき運命などと呼んで祝福する者達がいる。
 だが、そうでは無い者達もいる。いくら執着しても、いくら努力を重ねても望みが成就しない者達もいる。
 そのような者達の中には、本能による行動のかたよりを呪いと表現する者がいる。

 彼女は正にそれだった。
 彼女の本能は彼女に祝福を与えるものでは無かった。

   ◆◆◆

「よーし、みんな集まったな」

 ある船のブリッジにて打ち合わせが行われていた。
 人数は5人。これで全員。大きな船では無い。

「今回はある小惑星の調査を行う」

 船長らしき男は全員を見回しながら言葉を続けた。

「主な目的は鉱物資源の調査だ。……まあ、いつも通りということだな」

 そして船長は説明するまでも無い説明を続けた。

「この惑星は無人艇による事前調査で、地球とあまり大差無い環境であることが既に判明している」

 それもどうせいつも通りなんでしょ? そう思った女が口を開いた。

「大差無いったって、どうせ上空から撮影しながら空気サンプルを少し取っただけでしょう?」

 これに船長は頷いて答えた。

「そうだな。地上の生態系の調査などはまだ行われていない。危険な細菌類がいないことだけは確認されている」

『など』と一言でまとめたが、要はまともな調査はほとんど行われていないということであった。正確な情報は『だけ』の部分のみだ。
 だから細身の男は全員をからかうように言った。

「じゃあ、恐竜とかもいるかもしれないんですね。おっかねえなあ!」

 完全にふざけた発言であったが、船長はそれに乗りつつも真面目に返した。

「その通りだ。危険な生物が潜んでいる可能性は高い」

 つまり――船長はそう言葉を繋げて結論を言おうとしたが、大男がそれを船長より早く代弁した。

「つまり、行動予定も装備も何もかも、いつも通り、ということですね?」

 これに船長が「その通りだ」と返すと、大男は敬礼しながら口を開いた。

「了解です、課長」

 その『課長』という呼び方に、船長は苦笑しながらいつもの言葉を返した。

「わざとやっているのはわかるし、間違っているわけでも無いが、船ではキャプテンと呼んでくれ。頼むから。そのほうが好きなんだよ」
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