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Ep.2 基地から回収された記録(17)
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「はあ、はあ、はっ」
その臆病者は隠れていた。
場所はホールの近くにある物置部屋。
普段の彼ならばこんな逃げ場の無い袋小路を隠れ場所には選ばない。
彼は追い詰められていた。もう、ここしか無かった。
「は、は、はあ」
過呼吸になっている肺をなんとか静めながら、男は何度も願っていた。
どうかバレていませんように、と。
が、
「!」
直後、ドアの向こうから聞こえてきた音に、男は肩を震わせた。
それはもう何度も耳にした音だった。
何かが這う音。
それも一つや二つでは無い。
この部屋の前に集まってきている、そう思えた。
そしてさらに、新たな音が加わった。
人の足音。
しかし男には分かっていた。
これは『人だったもの』の足音だと。
そしてそれは、ドアの前で止まった後、ドアを力任せに開こうとした。
しかし鍵をかけているゆえに開かない。
それは男にとって最後の希望だった。
が、
「っ!」
直後、男の耳に鍵の解除音が響いた。
そして間も無く、最後の人間はその存在を奪われた。
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