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Ep.2 基地から回収された記録(14)
しおりを挟む◆◆◆
そしてとうとう、『それ』は致命的な場所にまで侵入を果たしてしまった。
「遅刻とは珍しいわね」
隣の席に腰を降ろした男に、女が声を掛ける。
「……」
だが、男は返事をしなかった。
場所は基地の頭脳にあたるブリッジ。
管制室としての機能も備えている。
そして遅刻してきた男は机の上にある端末に手を沿え、仕事を始めた。
が、
「……?」
その指さばきは、女が毎日見てきたそれでは無かった。
どこかぎこちない。
だから女は尋ねた。
「大丈夫? 体調が悪いんじゃないの?」
これに男はようやく口を開いた。
「……いいや、特に問題は無いと思う」
「……」
その答えは女にとって不気味だった。
なぜなら、いつもと口調が違うからだ。
いつもはもっと明るい。何に対しても前向きに振舞おうとする。
いまはその余裕が無いのだろうか、そう思った女は医務室に連絡を入れるべきか、先に上司に相談すべきか悩んだが、
「!」
その思考は直後に鳴り響いた緊急通信の警告音によって遮られた。
◆◆◆
「はあ、はあ」
一人の女が生い茂る森の中を、『ガーデン』の中を駆けていた。
それはヤードの従業員に襲われた女であった。
だが、女はなんとか無事に逃げ延びていた。
そして森を抜けた女は、ある柱に設置されている端末に駆け寄った。
それは、事故などの非常事態の時にのみ許されるブリッジ直通の緊急回線であった。
これを使うのは今を置いて無い、女はそう思って端末に手をかけた。
のだが――
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