Chivalry - 異国のサムライ達 -

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第六章 アランの力は遂に一つの頂点に

第四十五話 伝説との邂逅(1)

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   ◆◆◆

  伝説との邂逅

   ◆◆◆

「赤い女はどこだ!?」

 城を守る兵士の誰かが声を上げる。
 しかし返答は無い。
 いつからか、シャロンは「赤い女」と呼ばれるようになっていた。
 血化粧をしたまま走っているのを見た、という情報が共有されたからだ。
 既に城は攻められていた。
 屋根の上を、城壁の上を影が、侵入者が走り回っている。
 それを追うように、光弾と矢が飛び交っている。

「……」

 その様子を女は離れたところから観察していた。
 街への陽動は功を奏していた。
 女がここに来ているかもしれないという情報が共有されたため、城を守る兵士達はその数を戻しつつあるが、この程度ならばまだ問題は無い。
 そして今飛び回っている影達も陽動である。
 既に、アランのところまで強行突入出来るほどにはなった。
 アランがいる場所は玉座の間。カルロが「最も手堅い場所」と思っている広間。

「……ふうん」

 そこにいる兵士の配置、そして人数を調べ終わったところで、女は声を漏らした。
 その口には薄い笑みが張り付いていた、
 なぜならば、

(『あの時』よりは簡単そうね)

 と、思ったからだ。
『あの時』とは違い、カルロとクリス、そしてリックとクレアがいるにもかかわらずである。
 なのに女がそう思える理由、それは――

   ◆◆◆

「マズいな……」

 思わずルイスはそう声を漏らした。
 何がマズいのか。
 それはアランが玉座の間にいることであった。
 炎使いの能力が最も輝くのは閉所である。
 単純に炎を避けることが困難になるからだ。炎は壁を這うことが出来、閉所であれば隙間無く埋め尽くすことが出来る。どんなに速かろうとも、避けるための空間が無ければ意味が無いのだ。
 前回はそのような場所に、兵舎にアンナと共に送り込んだ。
 しかし玉座の間は違う。大勢が動き回れるほどの広さがある。
 通常の侵入口である入り口と窓は狭く、大勢の兵士達とカルロなどの炎使いが睨んでいる。
 しかしルイスに言わせれば強固なのはそこだけだ。中に入られればそのまま蹂躙される可能性が高い。
 だからルイスは何度も別の場所に誘導しようと試みている。
 しかし出来なかった。
 理由は、原因はカルロの信頼感の高さであった。
 クラウスとリーザの戦いの時と同じことが起きているのだ。
 何を頼りにし、どう行動するか、その基準となっているのが「カルロへの信頼感」であり、これを凌駕する要素が無いのだ。
 アラン達は「カルロがそこにいるから」というだけの理由で玉座の間にいる。
 カルロはそこが最も守りに適していると考えている。
 しかし先に述べたようにそれは間違いなのだ。
 並の相手ならばその通りであり正しい。これだけの魔法使いが集結した部屋で立ち回ることが出来る人間はそうはいない。
 しかし相手はあの女なのだ。
 カルロは女の速さを、計算能力の高さを考慮出来ていない。

(もし、)

 入り口を、窓を突破されたら? その後どうなるのかをルイスは考えた。
 兵士達の数、カルロ達の能力、思いつく全ての要素を考慮して勝敗を予想した。

「……」

 しかし何度繰り返しても、ルイスにとって良い結果は浮かばなかった。
 ゆえにルイスは、

「……これは負けたかもしれないな」

 と、呟いた。
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