Iron Maiden Queen

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第一章 火蓋を切って新たな時代への狼煙を上げよ

第六話 豹と熊(5)

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 が、直後、

「ぐっ?!」

 突如首にかかった衝撃に、影はうめいた。
 デュランに襟首を掴まれたのだ。
 そしてデュランは右手を伸ばして窓枠を掴んだ。
 襟首を掴む左手が影の重さに負け始める。
 瞬間、

「ラアァッ!」

 デュランは吼え、体内で星を爆発させた。
 デュランの左腕の筋肉が弾かれるように収縮し、影の体が無重力感に包まれる。
 そしてデュランは自分よりも高く持ち上げるように影を引っ張り上げながら、壁を蹴って跳躍した。

「アアァッ!」

 影を振り上げながら宙を舞うデュラン。
 それはただの勢いだけの行動では無かった。
 デュランの目標、落下予定地点には、別の影の姿があった。
 その影を照らす月明かりがデュランの影に遮られる。

「!?」

 そして影は見上げたが、もう手遅れだった。

「イヤアァッ!」

 デュランが気勢と共に掴んでいる影の体を振り下ろす。
 対し、下にいる影は防御魔法を展開したが、

「ぎゃっ!?」

 その盾は人の重さを持つ鈍器を受け止めるには貧弱すぎた。
 デュランの目の前で二つの肉塊が混ざり合うようにお互いを潰しあう。
 そしてその二つの命の灯火が燃え尽きる寸前、

「蛇ッ!」

 派手な一撃を披露したデュランの背後から、新たな影が襲い掛かった。
 これに、デュランは反応出来ていないように見えた。
 否、デュランもまたサイラスと同じであった。
 助けが入ることがわかっているのだ。

「っあ?!」

 直後、その音は感じ取った予定通りに響いた。
 フレディが放った銃声だ。
 放たれた弾丸が脇に刺さり、深い穴を開けた。
 その穴から赤い蛇を垂れ流しながら影が崩れ落ちる。
 そしてその身が倒れた音が響いたのと同時に、デュランのもとにサイラスとフレディが駆けつけた。

「あの時と同じようにやるぞ!」

 狼の一族と戦った時と同じように、三人で力を合わせるぞとサイラスが叫ぶ。

「雄応ッ!」

 その声にデュランが即座に応え、

「……了解!」

 わずかに遅れてフレディも応えた。
 しかし戦い慣れしていないフレディにとってはその返事だけでは足りなかった。
 勇気を奮い立たせる必要があった。
 だからフレディは勇気を振り絞って叫んだ。

「……やってやらあ! かかってきやがれぇっ!」

 それが合図となった。
 屋根上から飛び降りるのに都合の良い場所を探していた影達の意識が三人に結びついた。
 ならば参る、と、一人が飛び出し、他の者達がそれに続く。
 影達は単純にフレディの挑発に乗ったわけでは無かった。
 やはりこの三人は無視出来ない、そう判断したのだ。
 こいつらを最初に黙らせることが圧勝への最短の道、そう思ったのだ。
 影達が集まり、サイラス達に群がる。
 狼牙の陣のような攻め。
 しかし少し違っていた。
 駆け抜けるような突進攻撃が少ないのだ。
 攻撃のほとんどが浅く手を出してすぐに退くという、いわゆる一撃離脱。
 軽いゆえに対処は比較的容易だが、つねにこちらを包囲するように激しい横移動を繰り返す。
 全方位からつつかれているというような様相。
 一発一発は食らっても浅い。
 しかし手数が凄まじい。崩されたらあっという間に傷だらけにされ、致命傷になるだろう。
 ゆえに、

「「「雄雄雄ォッ!」」」

 三人とも必死になる。
 サイラスが爪に対して突きを返し、デュランは同じ爪をぶつけ、フレディも大盾で応戦する。
 行動の多くが防御にかたよるため、どうしてフレディ側が押される。
 それを二人がカバーする。
 ゆえにサイラス達は一丸になったまま壁際に移動。
 壁を背負えば攻撃が来る方向が限定されるからだ。
 しかし同時に一つ増えてしまう。

「疾っ!」

 屋根上からの奇襲だ。

「おらあっ!」

 フレディが盾を振り上げて飛び降りてきた影の体ごと受け止める。

「あうぅっ!?」

 その衝撃にフレディが膝をつく。
 その隙を突こうとする影の爪をサイラスの三段突きが迎え討つ。
 盾の上に乗ったままフレディを攻撃しようとする影はデュランが追い払う。
 こうして見ると、三人は良い組み合わせに見えた。
 盾持ちと機動力のある筋力自慢に、間合いの長い剣使い。
 三人がそれぞれの欠点を補い合っている。
 互いに激しく位置を入れ替え、それぞれの長所を活かしている。
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