97 / 109
罪人 ②
しおりを挟む
石畳と足に繋がれた鎖が擦れる音がする。
手首を縄で縛られて兵士に引っ張られ、時折転びそうになる。
今僕は、裁判所に連れて行かれていた。
裁判室の中央には被告人台があり、その周りを貴族達が取り囲んでいて、一番見晴らしのいいところに裁判官と裁判長と皇帝陛下の席がある。
突き飛ばされるように僕は被告人台に突き出された。
「何か言い残すことはないか?」
裁判官が訊く。
『何か言いたいことはないか?』ではなく、『何か言い残すことはないか?』
僕の話は訊かない。
死刑は確定している言い方。
それでも僕は
「僕はアレクを刺していません。刺したのは黒ずくめの刺客で、その刺客を部屋に招き入れたのはジェイダです」
裁判長から目を逸らさずに言った。
「この後の及んで、まだそんな戯言を!お前がしたことマティアス様が全部目撃されている」
「それは真っ赤な嘘です!」
「なにを!」
裁判長が言うと、
「この嘘つきめ!」
「恥知らず!」
「人殺し!」
貴族席から罵倒と物が飛んでくる。
その中に分厚い本があって、僕の頭に直撃する。当たったところから、ドロっとした生暖かい血が流れ出るのがわかった。
「それでも僕はアレクを刺していません!刺したのは黒ずくめの男で、その男を招き入れたのはジェイダです!」
そう叫んだが、数多くの罵声で僕の声は書き消される。
「僕は……」
言いかけた時、
「マティアス様という目撃者。殿下の血のついた短剣。証拠は全て出揃っている。貴族委員の皆さんに訊く。この者が無罪だと思う方は挙手を」
裁判長は挙手を求めたが誰も手を挙げない。
「では有罪だと思う方は挙手を」
全員手を上げる。
「では判決を言い渡す。この者はアレキサンドロス殿下を殺そうとした罪で有罪、極刑を言い渡す」
裁判長が告げると、室内は歓喜の声が響いた。
裁判が行われた後そのまま、僕は兵士に連れられて死刑台へと連れて行かれる。
道中、街の人たちが出てきていて「濡れ衣だ!」「ユベール様ははめられている!」「真犯人を見つけろ!」「ユベール様はそんなことしない!」「この処刑は間違っている」と僕に手を伸ばし助け出そうとしてくれている。
それを兵士に止められ、無理やり人混みに押し戻されていた。
広間の中央にある処刑台まで道はひどく長くて、でもとても短く感じた。
「このものは帝国第一王子アレキサンドロス様を殺害しようとした罪で処刑とする」
そう裁判長がみんなに聞こえるように大声で告げると、兵士が僕を両サイドから押しつけられ、僕は跪かされた。
死刑執行人が近づいてくる。
僕の命はここまで……。
神様どうかお願いです。
アレクだけでも助けてください。
そしてもしできるなら、最後にアレクに会わせてください。
執行人が持つ大きな斧が太陽の光で反射し、不気味に光る。
あの斧でいったい何人の罪人が処刑され、僕は濡れ衣を着せられたまま、愛するアレクを殺そうとした罪で殺される。
「僕はアレクを殺そうとなんてしていない!」
叫ぶと、
「黙れ罪人!」
体が吹っ飛んでいくほど頬を殴られ、髪を掴まれながら引っ張られ、僕の首が死刑台に固定されようとした時、
手首を縄で縛られて兵士に引っ張られ、時折転びそうになる。
今僕は、裁判所に連れて行かれていた。
裁判室の中央には被告人台があり、その周りを貴族達が取り囲んでいて、一番見晴らしのいいところに裁判官と裁判長と皇帝陛下の席がある。
突き飛ばされるように僕は被告人台に突き出された。
「何か言い残すことはないか?」
裁判官が訊く。
『何か言いたいことはないか?』ではなく、『何か言い残すことはないか?』
僕の話は訊かない。
死刑は確定している言い方。
それでも僕は
「僕はアレクを刺していません。刺したのは黒ずくめの刺客で、その刺客を部屋に招き入れたのはジェイダです」
裁判長から目を逸らさずに言った。
「この後の及んで、まだそんな戯言を!お前がしたことマティアス様が全部目撃されている」
「それは真っ赤な嘘です!」
「なにを!」
裁判長が言うと、
「この嘘つきめ!」
「恥知らず!」
「人殺し!」
貴族席から罵倒と物が飛んでくる。
その中に分厚い本があって、僕の頭に直撃する。当たったところから、ドロっとした生暖かい血が流れ出るのがわかった。
「それでも僕はアレクを刺していません!刺したのは黒ずくめの男で、その男を招き入れたのはジェイダです!」
そう叫んだが、数多くの罵声で僕の声は書き消される。
「僕は……」
言いかけた時、
「マティアス様という目撃者。殿下の血のついた短剣。証拠は全て出揃っている。貴族委員の皆さんに訊く。この者が無罪だと思う方は挙手を」
裁判長は挙手を求めたが誰も手を挙げない。
「では有罪だと思う方は挙手を」
全員手を上げる。
「では判決を言い渡す。この者はアレキサンドロス殿下を殺そうとした罪で有罪、極刑を言い渡す」
裁判長が告げると、室内は歓喜の声が響いた。
裁判が行われた後そのまま、僕は兵士に連れられて死刑台へと連れて行かれる。
道中、街の人たちが出てきていて「濡れ衣だ!」「ユベール様ははめられている!」「真犯人を見つけろ!」「ユベール様はそんなことしない!」「この処刑は間違っている」と僕に手を伸ばし助け出そうとしてくれている。
それを兵士に止められ、無理やり人混みに押し戻されていた。
広間の中央にある処刑台まで道はひどく長くて、でもとても短く感じた。
「このものは帝国第一王子アレキサンドロス様を殺害しようとした罪で処刑とする」
そう裁判長がみんなに聞こえるように大声で告げると、兵士が僕を両サイドから押しつけられ、僕は跪かされた。
死刑執行人が近づいてくる。
僕の命はここまで……。
神様どうかお願いです。
アレクだけでも助けてください。
そしてもしできるなら、最後にアレクに会わせてください。
執行人が持つ大きな斧が太陽の光で反射し、不気味に光る。
あの斧でいったい何人の罪人が処刑され、僕は濡れ衣を着せられたまま、愛するアレクを殺そうとした罪で殺される。
「僕はアレクを殺そうとなんてしていない!」
叫ぶと、
「黙れ罪人!」
体が吹っ飛んでいくほど頬を殴られ、髪を掴まれながら引っ張られ、僕の首が死刑台に固定されようとした時、
15
お気に入りに追加
282
あなたにおすすめの小説
「その想いは愛だった」騎士×元貴族騎士
倉くらの
BL
知らなかったんだ、君に嫌われていたなんて―――。
フェリクスは自分の屋敷に仕えていたシドの背中を追いかけて黒狼騎士団までやって来た。シドは幼い頃魔獣から助けてもらった時よりずっと憧れ続けていた相手。絶対に離れたくないと思ったからだ。
しかしそれと引き換えにフェリクスは家から勘当されて追い出されてしまう。
そんな最中にシドの口から「もうこれ以上俺に関わるな」という言葉を聞かされ、ずっと嫌われていたということを知る。
ショックを受けるフェリクスだったが、そのまま黒狼騎士団に残る決意をする。
夢とシドを想うことを諦められないフェリクスが奮闘し、シドに愛されて正式な騎士団員になるまでの物語。
一人称。
完結しました!
貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~
倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」
大陸を2つに分けた戦争は終結した。
終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。
一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。
互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。
純愛のお話です。
主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。
全3話完結。
孤独な王弟は初めての愛を救済の聖者に注がれる
葉月めいこ
BL
ラーズヘルム王国の王弟リューウェイクは親兄弟から放任され、自らの力で第三騎士団の副団長まで上り詰めた。
王家や城の中枢から軽んじられながらも、騎士や国の民と信頼を築きながら日々を過ごしている。
国王は在位11年目を迎える前に、自身の治世が加護者である女神に護られていると安心を得るため、古くから伝承のある聖女を求め、異世界からの召喚を決行した。
異世界人の召喚をずっと反対していたリューウェイクは遠征に出たあと伝令が届き、慌てて帰還するが時すでに遅く召喚が終わっていた。
召喚陣の上に現れたのは男女――兄妹2人だった。
皆、女性を聖女と崇め男性を蔑ろに扱うが、リューウェイクは女神が二人を選んだことに意味があると、聖者である雪兎を手厚く歓迎する。
威風堂々とした雪兎は為政者の風格があるものの、根っこの部分は好奇心旺盛で世話焼きでもあり、不遇なリューウェイクを気にかけいたわってくれる。
なぜ今回の召喚されし者が二人だったのか、その理由を知ったリューウェイクは苦悩の選択に迫られる。
召喚されたスパダリ×生真面目な不憫男前
全38話
こちらは個人サイトにも掲載されています。
[BL]王の独占、騎士の憂鬱
ざびえる
BL
ちょっとHな身分差ラブストーリー💕
騎士団長のオレオはイケメン君主が好きすぎて、日々悶々と身体をもてあましていた。そんなオレオは、自分の欲望が叶えられる場所があると聞いて…
王様サイド収録の完全版をKindleで販売してます。プロフィールのWebサイトから見れますので、興味がある方は是非ご覧になって下さい
【完結】オーロラ魔法士と第3王子
N2O
BL
全16話
※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。
※2023.11.18 文章を整えました。
辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。
「なんで、僕?」
一人狼第3王子×黒髪美人魔法士
設定はふんわりです。
小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。
嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。
感想聞かせていただけると大変嬉しいです。
表紙絵
⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)

白金の花嫁は将軍の希望の花
葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。
※個人ブログにも投稿済みです。
高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】
きど
BL
愛されていないのに形だけの番になるのは、ごめんだ。
オメガの王族でもアルファと番えば王位継承を認めているエステート王国。
そこの第一王子でオメガのヴィルムには長年思い続けている相手がいる。それは幼馴染で王位継承権を得るための番候補でもあるアルファのアーシュレイ・フィリアス。
アーシュレイは、自分を王太子にするために、番になろうとしてると勘違いしているヴィルムは、アーシュレイを拒絶し続ける。しかし、発情期の度にアーシュレイに抱かれる幻想をみてしまい思いに蓋をし続けることが難しくなっていた。
そんな時に大国のアルファの王族から番になる打診が来て、アーシュレイを諦めるためにそれを受けようとしたら、とうとうアーシュレイが痺れを切らして…。
二人の想いは無事通じ合うのか。
現在、スピンオフ作品の
ヤンデレベータ×性悪アルファを連載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる