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罪人 ①
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ここは……。
僕が目覚めたのは、冷たすぎる石が敷き詰められた牢獄だった。
服を見ると囚人が着ているポロ布の服。
足には足輪と鎖で檻の鉄格子に繋がれている。
僕は一体ここで何を?
考えていると脇腹に痛みが走るが走る。
服をめくり上げその場所を見ると包帯が巻かれ傷の手当されていた。
僕がここを刺されたということは……。
「アレク!」
思い出した瞬間、僕は叫んでいた。
牢屋の前で警護をしていた兵士のところへ駆け寄る。
「アレクは?アレクは今どこに!?」
鉄格子を掴み兵士に問いかける。
「お前に教えることはない」
僕の方を見ずに兵士が答える。
「お願いです。どうか教えてください!」
それでも食い下がると、
「ええい、うるさい!」
ドンっと兵士に突き倒された。
尻餅をついたところと刺された場所が痛い。
でもそんなことはどうでもよかった。
アレクのことが、アレクのことだけが心配だった。
「お前は今からアレキサンドロス様を殺害しようとした罪で裁かれる。それまでは大人しくそこで命尽きるのを待っていろ」
兵士は憎しみを込めた目で一度だけ僕を見て、それからは僕が何度もアレクのことを聞こうとも、何も教えてくれなかった。
しばらくして泣き腫らした目をしたクロエが、僕に会いに来てくれた。
「ユベール様!」
目覚めた僕の姿を見て、クロエは涙を流す。
「お体はいかがですか?酷いことはされていませんか?」
クロエは僕の心配をしていたけど、僕が一番聞きたいのはアレクのこと。
「アレクは今どこにいて、どうしてるの?刺された傷口はふさがった?意識はある?」
アレクに何かあったらどうしよう……。
言葉に出すと不安で不安で仕方がない。
「殿下はご無事です。ただまだ意識が戻られていません」
意識が戻っていない?
「あの事件からどのぐらい経ってるの?」
「二日です」
二日間目覚めていない。そんな重症だったなんて。
「僕がちゃんと庇いきれていたら、もっと早く動けていたら……」
僕がそう言った時、
「けっ!思ってもいないことを、ぺらぺらと。虫唾が走る」
兵士が牢屋の中に唾を吐く。
「なんてことを!ユベール様は絶対そんなことなさいません!これは誰かに嵌められたんです!」
「こいつを嵌めて得する奴がどこにいる?」
「なんですって!?」
クロエは今にも兵士に飛びかかりそう。
「クロエ!」
僕が叫ぶとクロエはぴたりと動きを止める。
「そんなことはどうでもいいんだ。それよりアレクのことを教えて」
僕がそう言うと「わかりました」と話し始めてくれた。
クロエの話では、ジェイダの叫び声を聞いたマティアス様が部屋に駆け込むと、そこにアレクがを刺した僕がいて、まだ僕がアレクを刺そうとしたので一番近くにいたジェイダが僕を止めようとして、誤って僕を刺してしまったそうだ。
そしてその一部始終をマティアス様が見ていたとのことだった。
アレクはすぐさま手当てされたが、葡萄酒に混ぜられた薬のせいで、まだ目覚めていないとのことだった。
「ユベール様は嵌められたのは確かです。でもその嵌められたという証拠が見つかっていないんです。このままじゃ……」
「僕は裁判にかけられるんでしょ?」
「どうしてそれを?」
「さっき聞いたんだ。そしてその裁判で僕は罰せられるんだ」
「!そんなこと。そんなこと絶対にさせません!ヒューゴ様も今、真犯人を探しています。だからどうか希望を持ってください」
クロエはそう言ってくれるけど、第一皇太子を殺害しようとした僕の罪は、極刑になると思う。
もし僕が極刑になってもアレクが目覚めてくれるなら、それがいい。
神様、どうかお願いです。
僕の命と引き換えに、アレクを目覚めさせてください。
心の中で何度も何度も願った。
僕が目覚めたのは、冷たすぎる石が敷き詰められた牢獄だった。
服を見ると囚人が着ているポロ布の服。
足には足輪と鎖で檻の鉄格子に繋がれている。
僕は一体ここで何を?
考えていると脇腹に痛みが走るが走る。
服をめくり上げその場所を見ると包帯が巻かれ傷の手当されていた。
僕がここを刺されたということは……。
「アレク!」
思い出した瞬間、僕は叫んでいた。
牢屋の前で警護をしていた兵士のところへ駆け寄る。
「アレクは?アレクは今どこに!?」
鉄格子を掴み兵士に問いかける。
「お前に教えることはない」
僕の方を見ずに兵士が答える。
「お願いです。どうか教えてください!」
それでも食い下がると、
「ええい、うるさい!」
ドンっと兵士に突き倒された。
尻餅をついたところと刺された場所が痛い。
でもそんなことはどうでもよかった。
アレクのことが、アレクのことだけが心配だった。
「お前は今からアレキサンドロス様を殺害しようとした罪で裁かれる。それまでは大人しくそこで命尽きるのを待っていろ」
兵士は憎しみを込めた目で一度だけ僕を見て、それからは僕が何度もアレクのことを聞こうとも、何も教えてくれなかった。
しばらくして泣き腫らした目をしたクロエが、僕に会いに来てくれた。
「ユベール様!」
目覚めた僕の姿を見て、クロエは涙を流す。
「お体はいかがですか?酷いことはされていませんか?」
クロエは僕の心配をしていたけど、僕が一番聞きたいのはアレクのこと。
「アレクは今どこにいて、どうしてるの?刺された傷口はふさがった?意識はある?」
アレクに何かあったらどうしよう……。
言葉に出すと不安で不安で仕方がない。
「殿下はご無事です。ただまだ意識が戻られていません」
意識が戻っていない?
「あの事件からどのぐらい経ってるの?」
「二日です」
二日間目覚めていない。そんな重症だったなんて。
「僕がちゃんと庇いきれていたら、もっと早く動けていたら……」
僕がそう言った時、
「けっ!思ってもいないことを、ぺらぺらと。虫唾が走る」
兵士が牢屋の中に唾を吐く。
「なんてことを!ユベール様は絶対そんなことなさいません!これは誰かに嵌められたんです!」
「こいつを嵌めて得する奴がどこにいる?」
「なんですって!?」
クロエは今にも兵士に飛びかかりそう。
「クロエ!」
僕が叫ぶとクロエはぴたりと動きを止める。
「そんなことはどうでもいいんだ。それよりアレクのことを教えて」
僕がそう言うと「わかりました」と話し始めてくれた。
クロエの話では、ジェイダの叫び声を聞いたマティアス様が部屋に駆け込むと、そこにアレクがを刺した僕がいて、まだ僕がアレクを刺そうとしたので一番近くにいたジェイダが僕を止めようとして、誤って僕を刺してしまったそうだ。
そしてその一部始終をマティアス様が見ていたとのことだった。
アレクはすぐさま手当てされたが、葡萄酒に混ぜられた薬のせいで、まだ目覚めていないとのことだった。
「ユベール様は嵌められたのは確かです。でもその嵌められたという証拠が見つかっていないんです。このままじゃ……」
「僕は裁判にかけられるんでしょ?」
「どうしてそれを?」
「さっき聞いたんだ。そしてその裁判で僕は罰せられるんだ」
「!そんなこと。そんなこと絶対にさせません!ヒューゴ様も今、真犯人を探しています。だからどうか希望を持ってください」
クロエはそう言ってくれるけど、第一皇太子を殺害しようとした僕の罪は、極刑になると思う。
もし僕が極刑になってもアレクが目覚めてくれるなら、それがいい。
神様、どうかお願いです。
僕の命と引き換えに、アレクを目覚めさせてください。
心の中で何度も何度も願った。
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