【完結】偽りの花嫁 〜すり替えられた花嫁は冷血王子から身も心も蕩けるほどに溺愛される〜

葉月

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孤児院への慈善事業 ④

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『教会の子ども達は元気にしているか?
 ユベールは元気ではない。
 守りたくて部屋に閉じ込めたせいで、あの明るいユベールから笑顔が消えてしまった。
 宮殿に来てから、ユベールはいつも怯えている。
 私は人に優しくするとは、どうすればいいかわからない。
 先日、せっかくユベールが自分の意思で動き出したのに、私はそれを罰してしまった。
 私は帝都を離れるわけにはいかない。
 そこで牧師。ユベールの笑顔が戻るまで、しばらくユベールを預かってもらえないだろうか?
 ユベールに安心して過ごせる場所を作ってやってほしい。
 護衛の者と侍女をつける。
 腕のたつ2人だから危険はないと思うが、何が異変があれば、すぐに知らせてほしい。
 よろしく頼む。
 ーアレキサンドロスー     』

 まさか殿下がそんなことを、考えてくださっていたなんて。
 顔を上げて牧師様を見る。

「殿下はとても不器用でいらっしゃいますが、いつもユベール様のことを考えておいでです」
「……」
「殿下は孤児院の子ども達のことも気にかけてくださり、読み書きができるようにと、たくさんの本を寄贈してくださる方です。新しくしてくださった孤児院にも、いつでもユベール様がいつでも帰ってこられるよに、ユベール様のお部屋も作られました。安心してください。殿下はユベール様をとても大切に思っておられますよ」
「殿下がそんなことを……」

 知らなかった。
 殿下が僕のために、そんなことをしてくださってたなんて。
 気持ちを砕いてくださっていたなんて。
 知らなかった。

 本当に?
 本当に知らなかった?
 そうじゃない。
 僕は殿下の噂を鵜呑みして、初めから殿下を色眼鏡で見ていた。
 勝手に殿下は『冷酷で非道な方』だと決めつけていた。
 本当の殿下を見ようとしていなかった。

「殿下、ごめんなさい……」
 自然と声に出していた。
「今のお気持ちを、殿下にお伝えなさってはいかがですか?きっと殿下も安心されると思いますよ」
 牧師様は微笑んだ。
「はい!」
 僕に迷いはなかった。
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