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「ザイツ様がいらっしゃったぞ!!!」

戦争の最前線に顔を出したザイツ様は当然のことながら、もてはやされた。ザイツ様は兵士たちの前に立ち一礼をした。

「この戦いは……私たちが世界で一番強いことを証明するための方法なのです。それを主導するのは私。そして……あなたがた祖国の民はいま奴隷となるのです!!!」

奴隷宣言と俗に言われ語り継がれることになったザイツ様の演説は、少なくとも戦場において一定の効果を出したようだった。一度は奴隷としてザイツ様に命を預けるが、戦が終わって勝利となれば、その見返りを得ることができる……主従関係とはそう言うものだった。まあ、兵士たちは良くも悪くもきちんと教育されていたから、その命をザイツ様に捧げることには躊躇しなかった。

「おおおおっ!!!!」

歓声が上がった。

「そして、自由を獲得しましょう!!!」

兵士たちはしきりに自由を訴える。私には全く自由がない。兵士の方が自由なのだ。自由を得るために戦っているわけなのだが、よっぽど自由なのだ。

「ザイツ様の元に女を送ろう!!!」

そして、兵士たちは既に陥落した隣国から美しい小娘たちを囲い込んでいた。その者たちの仲から選りすぐりの娘たちをザイツ様の元に差し出すという……こんな感じだった。

「どうですか、ザイツ様。お気に召しますか???」

ザイツ様は当然、断った。女が嫌いというわけでは無いが、やはり、私のことを心のどこかで考えていたのだろう。つまり、私以外の女とベッドを共にすることは極力避けたかったようなのだ。

「おいおい、ザイツ様は一途なんだぜ!!!!」

兵士たちの一部がそう言った。

「一途???誰にだ???」

「誰にって……それはザイツ様の妃様に決まっているじゃないか!!!!」

みんな、勝利を目前にして酒に酔っていたのだ。だから、あのような戯言を平気で口にすることができたのだった。ザイツ様はと言うと、別に彼らを諫めようとはしなかった。まあ、彼一人の力で何とかできるものではなかったのだ。次期皇帝ともあろうザイツ様でさえ、手を付けられない相手……集団ともなれば、それは脅威になるのだ。

「ザイツ様の妃???そんな人、いたっけか???」

私のいない世界で、私に関する議論がどうやら始まろうとしているみたいだった。





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