今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから

ありがとうございました。さようなら

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ちょっとよくわかったようなきがした

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「僕は君のことが好きだよ。……その、そういう意味で」

 トリスタンは、少し口ごもりながらそう言った。
 そういう意味。というのは、そういう意味。なのか。それは、どういう意味の、そういう意味。なのだろうか。
 頭が混乱してくる。
 
「えっと、手と目が離せない妹みたいな存在だから、その、悪くないって思ったから結婚しようと思ったの?」

 私は妹として好きで、近場で悪くない結婚相手として考えた。という意味で捉えることにした。

「そんな軽率な理由でこんな事なんてしない」

 トリスタンは、かなり真剣なトーンでそれを否定した。

「口うるさくて、妹扱いされてると思ったかもしれない。でも、そんなつもりなくて、その、好きだから、心配で、過保護すぎたってわかってたけど、ごめん」

 トリスタンは、言い訳なのか説明なのか、何を言っているのかよくわからなかった。
 ただ、彼の必死さに安易に決めたのではない。というのが伝わってきた。
 思えば、私にも問題があった。彼を心配させる事をしていた。口うるさくなるのも当然だ。
 私を大切に思っていたからこそ、口うるさくなってしまったのだ。
 私がもう少しお淑やかだったら、彼もそれなりの態度を取っていたかもしれない。

「断ってもいい。嫌だったら、強制はしたくないし、リーンの意思で決めて欲しい」

 トリスタンは、真摯な目で選択権は私にあると言ってきた。
 突然、選択権を渡されて、私はどうしたらいいのかわからなくなった。
 人としても、家門としても、とてもいい相手だとは思っている。
 その理由で彼の手を取ったら?それは、安易に決めている事に他ならない気がした。
 けれど、断ったとして後悔しない。と、言い切れる自信はない。
 間違いなくいつか後悔する。それだけはわかった。

 ああ、そうか。と、私は思った。
 私には彼と別の未来を歩くという想像ができない。

「……私は、お受けします」

 時間をかけて悩んでもいいのに、返事はするりと口から出てきた。
 今は、この答えは間違っていないように思えるのだ。
 
「ありがとう。なんだかよそよそしいな」

 トリスタンは苦笑いだ。
 
「だって、ちゃんとした方がいいかなって思って」

「ふっ、なるほど」

 トリスタンはしばらく笑って「確かにそうだ」と言った。
 先のことを考えるとやる事がやる事が多い気がする。
 田舎にあるとはいえ伯爵夫人になるのなら、覚える事もそうだが、マナーなどの立ち振る舞いももっと勉強しなくてはならない。
 
「色々と勉強しないと」

 言いながら、少しだけ緊張してきた。
 未来の映像が見えてきたせいかもしれない。
 
「リーンは、少しおっちょこちょいだけど大丈夫だよ。それに、僕もいるから」

 トリスタンは、私の頬をそっと撫でた。
 以前なら頭をわしゃわしゃと撫でてくれたのに、それが少しだけ寂しかった。








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お読みくださりありがとうございます

気圧のせいなのか、頭痛すぎます
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