上 下
93 / 304
第二部 お兄ちゃん、待っててね!/ラッキースケベは必・・・あぁ! そんなものねぇーよ!!

冒険者ギルド

しおりを挟む
「それじゃ、諸君、早速、レベル上げに行くぞ!」

「ヘッ?」

「返事は!」

「お、おうー」

クラスメイト達は強制的に城の外へ引っ張り出された。

城の外へ出た瞬間、灼熱の風が茜たちを襲う。

「熱いわね~ 顔が焼ける。シミソバカスが出来ちゃう。王子さま、何とかならないの?」

と言ってもロゼのローブは一定に温度を保たれているので暑さはあまり感じない茜であった。

「この熱さの原因はイフリートという火の魔王の仕業です。
 イフリートがカルピナ山に住んでからファイレルは灼熱の国となったと言われています。
 イフリートは毎月地元の村に生贄を要求して来て・・・・・もう幾つもの村が廃村になってしまいました」

城の中は何故熱くないかというと魔石を使った冷房装置があるので温度を一定に調整していいるのであった。

「じゃ、イフリートを封印したらこの灼熱地獄は収まるの?」

「収まるはずです。このように熱くなったのはイフリートが現れてからと言われています」

「じゃ~早速、イフリートを退治しに行きましょう」

「お待ちください、茜様。他の者はまだレベルが1なので無理させることはできません。
 王都近辺でレべリングをしてからでないと危険です」

「面倒ね~旅の途中で上げればいいじゃない」

「危険すぎます。茜様がいくら強くても級友のみなさんはレベル1なのです」

「茜ちゃん、私もいきなり魔王討伐なんて怖く出来ないわ。
 少しレベル上げたりこの世界のことを勉強してからでも良いと思うの」
必殺の「詩織・お願いポーズ」で語りかけるのであった。

「詩織の言うことも、もっともね。分かったわ。
 この辺りでレベル上げしましょう。みんな分かった!」

茜が振り向いてクラスメイトに言ったとき加奈が詩織にサムアップをしていた。





王子の勧めでファイレル城下の冒険者ギルドで冒険者登録をしておく事にした。
冒険者登録をしておけばギルドカードが身分証明書の代わりになり、モンスター素材の買取もしてもらえるということだ。
ギルドランクはGからSまであり、Gが一番下、Sが最上位となっている。
SS、SSSというランクもあるのだがこの二つは冒険者ギルドが与えるのではなく国が与える特別なクラスということだ。

王子はギルドに登録してはいないが実力的にはSランクに相当する腕を持っているらしい。
アルファは過去にイフリート以外にも魔王討伐に参加したのだがことごとく失敗をしている。
加奈の言うとおり魔王討伐の実績を作っておきたいという思いもあった。
何より、何度も失敗していることが騎士としての矜持、王子としての矜持を傷つけられていることが許せなかった。
王子としての矜持、それは民を護る事に他ならない。
王を護るのが騎士としての仕事であるがファイレル王家は教訓として

『民がいるから王がいる』
『民に寄り添えない王は王としての資格なし!』

と言い伝えられてグレーコ2世も代々の教えを守っている。
ファイレル王家は国民から人気が高い。
誰もが王族を愛し、王族も国民を愛している。

が、今のアルファは

腕っ節の強いだけの騎士
そこら辺にいるゴロツキと同じ

とさえ思っている。
何度もの失敗を国民は攻めたりはしない。
魔王がそれほどまでに強いという事を誰もが知っているからなのだ。
だが王子として、騎士として不甲斐ない自分を許せなかった。
何としても茜の力を借りてでも魔王を討伐したいと思っていた。





冒険者ギルドで登録したのは

勇者     織田吉法(おだ よしのり)
賢者     小松理紗(こまつ りさ)
魔法剣士   藤吉秀吉(ふじよし しゅうきち)
剣聖     明石秀光(あかし ひでみつ)
聖女     早川詩織(はやかわ しおり)
魔法使い   雨宮加奈(あめみや かな)
僧侶     氷室桃花(ひむろ ももか)
聖騎士    松平千代(まつだいら ちよ)
錬金術師   平内源賀(ひらうち みなよし)

に無職・学生の茜であった。

「なんか、私だけ職業ないというのは格好悪いわね~ 
 学生なんだけどギルドカードには『無職』って記載されているのよね~」

「でも、茜ちゃんだけAランクからのスタートでしょ。私たちみんなGランクよ」

「王子様、ギルドカードって身分証明書の代わりなんでしょ。
 それが『無職』ってどうなの? 身分証明にならないんじゃない?」

「そう言われると返す言葉はありませんがAランクなんてファイレル国でも20人もいないですよ。
 職業よりランクの方が重要です」

「そ、そうなの・・・・・なんか釈然としないわね・・・・・・
 お姉さん、職業なんか書き込んでよ!!」

いきなり受付のお姉さんにお願いをした。

「ヘッ!?」
受付のお姉さんも予想外のお願いに変な顔で答えてしまった。

「む、む、無理です。ギルドカードは正確な情報しか書き込めないようになってます」

「えっ、だめなの~~ そこを何とかしてってお願いしているのですけど!!!」
と語尾が段々高圧的にあっていく茜であった。

「そ、そ、それは・・・・む、む、無理です」
受付のお姉さんが震えながら頑張って返答している様は小動物が猛獣を目の前にしているようにしか見えなかった。
茜はカウンターに肩肘をかけ

「だから、何とかして!!と言ってるの!!!!」

と脅しをかけるようにお姉さんに詰め寄った。
お姉さんも分かっていた。
目の前の女の子がけして逆らってはいけない種類の人間だということを。

「む、む、無理なものは、む、む、無理なんです」


「アイアンク!」

とアイアンクローを受付のお姉さんにブチ噛まそうとした瞬間

「ダメーー!」
「止めろ!」

と詩織と加奈が全力で茜の腕に縋りついた。
受付のお姉さんは星にならずに済んだ。

「茜!!お前、すぐにアイアンクロー掛けるのは止めろよ! 
 今のお前の握力は洒落にならないんだぞ!!
 一般人に掛けたら『グチャーーーー』てなるんだからな。
 日本にいたときと同じように考えるなよ」

「そうよ、茜ちゃん。もし一般人に手を掛けたら碧さん、凄く悲しむと思うの。
 可愛い妹が殺人犯に、罪の無い人を殺めたなんて知ったらどれほど悲しむか考えてね」

「あ・・・はい。ちょっと調子に乗りました。お姉さん、すみません」
と受付のお姉さんに頭を下げる茜だった。

「茜様、いきなりAランクからスタートする冒険者なんて聞いたことありませんよ。職業などよりランクの方が遥かに重要です。
 茜様ならSでもおかしくないと思うのですがギルドマスターの最高の権限を使っても初心者はAが限界ですから。
 それどころか初心者でAランクなんて聞いたことありません。どうか我慢してください。
 魔王討伐の暁には国からSSやSSSランクを贈るようにいたします」

「・・・・・・・ギルドランクなんてどうでもいいのよ
 ・・・・・『無職』というのが恥ずかしいの。お兄ちゃんが見たら何て言うか」

女子高生は色々と難しいようだ。
しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

転生獣医師、テイマースキルが覚醒したので戦わずしてモンスターを仲間にして世界平和を目指します

burazu
ファンタジー
子供の頃より動物が好きで動物に好かれる性質を持つ獣医師西田浩司は過労がたたり命を落とし異世界で新たにボールト王国クッキ領主の嫡男ニック・テリナンとして性を受ける。 ボールト王国は近隣諸国との緊張状態、そしてモンスターの脅威にさらされるがニックはテイマースキルが覚醒しモンスターの凶暴性を打ち消し難を逃れる。 モンスターの凶暴性を打ち消せるスキルを活かしつつ近隣諸国との緊張を緩和する為にニックはモンスターと人間両方の仲間と共に奮闘する。 この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも連載しています。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

家族もチート!?な貴族に転生しました。

夢見
ファンタジー
月神 詩は神の手違いで死んでしまった… そのお詫びにチート付きで異世界に転生することになった。 詩は異世界何を思い、何をするのかそれは誰にも分からない。 ※※※※※※※※※ チート過ぎる転生貴族の改訂版です。 内容がものすごく変わっている部分と変わっていない部分が入り交じっております ※※※※※※※※※

処理中です...