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第二部 お兄ちゃん、待っててね!/ラッキースケベは必・・・あぁ! そんなものねぇーよ!!

冒険者ギルド

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「それじゃ、諸君、早速、レベル上げに行くぞ!」

「ヘッ?」

「返事は!」

「お、おうー」

クラスメイト達は強制的に城の外へ引っ張り出された。

城の外へ出た瞬間、灼熱の風が茜たちを襲う。

「熱いわね~ 顔が焼ける。シミソバカスが出来ちゃう。王子さま、何とかならないの?」

と言ってもロゼのローブは一定に温度を保たれているので暑さはあまり感じない茜であった。

「この熱さの原因はイフリートという火の魔王の仕業です。
 イフリートがカルピナ山に住んでからファイレルは灼熱の国となったと言われています。
 イフリートは毎月地元の村に生贄を要求して来て・・・・・もう幾つもの村が廃村になってしまいました」

城の中は何故熱くないかというと魔石を使った冷房装置があるので温度を一定に調整していいるのであった。

「じゃ、イフリートを封印したらこの灼熱地獄は収まるの?」

「収まるはずです。このように熱くなったのはイフリートが現れてからと言われています」

「じゃ~早速、イフリートを退治しに行きましょう」

「お待ちください、茜様。他の者はまだレベルが1なので無理させることはできません。
 王都近辺でレべリングをしてからでないと危険です」

「面倒ね~旅の途中で上げればいいじゃない」

「危険すぎます。茜様がいくら強くても級友のみなさんはレベル1なのです」

「茜ちゃん、私もいきなり魔王討伐なんて怖く出来ないわ。
 少しレベル上げたりこの世界のことを勉強してからでも良いと思うの」
必殺の「詩織・お願いポーズ」で語りかけるのであった。

「詩織の言うことも、もっともね。分かったわ。
 この辺りでレベル上げしましょう。みんな分かった!」

茜が振り向いてクラスメイトに言ったとき加奈が詩織にサムアップをしていた。





王子の勧めでファイレル城下の冒険者ギルドで冒険者登録をしておく事にした。
冒険者登録をしておけばギルドカードが身分証明書の代わりになり、モンスター素材の買取もしてもらえるということだ。
ギルドランクはGからSまであり、Gが一番下、Sが最上位となっている。
SS、SSSというランクもあるのだがこの二つは冒険者ギルドが与えるのではなく国が与える特別なクラスということだ。

王子はギルドに登録してはいないが実力的にはSランクに相当する腕を持っているらしい。
アルファは過去にイフリート以外にも魔王討伐に参加したのだがことごとく失敗をしている。
加奈の言うとおり魔王討伐の実績を作っておきたいという思いもあった。
何より、何度も失敗していることが騎士としての矜持、王子としての矜持を傷つけられていることが許せなかった。
王子としての矜持、それは民を護る事に他ならない。
王を護るのが騎士としての仕事であるがファイレル王家は教訓として

『民がいるから王がいる』
『民に寄り添えない王は王としての資格なし!』

と言い伝えられてグレーコ2世も代々の教えを守っている。
ファイレル王家は国民から人気が高い。
誰もが王族を愛し、王族も国民を愛している。

が、今のアルファは

腕っ節の強いだけの騎士
そこら辺にいるゴロツキと同じ

とさえ思っている。
何度もの失敗を国民は攻めたりはしない。
魔王がそれほどまでに強いという事を誰もが知っているからなのだ。
だが王子として、騎士として不甲斐ない自分を許せなかった。
何としても茜の力を借りてでも魔王を討伐したいと思っていた。





冒険者ギルドで登録したのは

勇者     織田吉法(おだ よしのり)
賢者     小松理紗(こまつ りさ)
魔法剣士   藤吉秀吉(ふじよし しゅうきち)
剣聖     明石秀光(あかし ひでみつ)
聖女     早川詩織(はやかわ しおり)
魔法使い   雨宮加奈(あめみや かな)
僧侶     氷室桃花(ひむろ ももか)
聖騎士    松平千代(まつだいら ちよ)
錬金術師   平内源賀(ひらうち みなよし)

に無職・学生の茜であった。

「なんか、私だけ職業ないというのは格好悪いわね~ 
 学生なんだけどギルドカードには『無職』って記載されているのよね~」

「でも、茜ちゃんだけAランクからのスタートでしょ。私たちみんなGランクよ」

「王子様、ギルドカードって身分証明書の代わりなんでしょ。
 それが『無職』ってどうなの? 身分証明にならないんじゃない?」

「そう言われると返す言葉はありませんがAランクなんてファイレル国でも20人もいないですよ。
 職業よりランクの方が重要です」

「そ、そうなの・・・・・なんか釈然としないわね・・・・・・
 お姉さん、職業なんか書き込んでよ!!」

いきなり受付のお姉さんにお願いをした。

「ヘッ!?」
受付のお姉さんも予想外のお願いに変な顔で答えてしまった。

「む、む、無理です。ギルドカードは正確な情報しか書き込めないようになってます」

「えっ、だめなの~~ そこを何とかしてってお願いしているのですけど!!!」
と語尾が段々高圧的にあっていく茜であった。

「そ、そ、それは・・・・む、む、無理です」
受付のお姉さんが震えながら頑張って返答している様は小動物が猛獣を目の前にしているようにしか見えなかった。
茜はカウンターに肩肘をかけ

「だから、何とかして!!と言ってるの!!!!」

と脅しをかけるようにお姉さんに詰め寄った。
お姉さんも分かっていた。
目の前の女の子がけして逆らってはいけない種類の人間だということを。

「む、む、無理なものは、む、む、無理なんです」


「アイアンク!」

とアイアンクローを受付のお姉さんにブチ噛まそうとした瞬間

「ダメーー!」
「止めろ!」

と詩織と加奈が全力で茜の腕に縋りついた。
受付のお姉さんは星にならずに済んだ。

「茜!!お前、すぐにアイアンクロー掛けるのは止めろよ! 
 今のお前の握力は洒落にならないんだぞ!!
 一般人に掛けたら『グチャーーーー』てなるんだからな。
 日本にいたときと同じように考えるなよ」

「そうよ、茜ちゃん。もし一般人に手を掛けたら碧さん、凄く悲しむと思うの。
 可愛い妹が殺人犯に、罪の無い人を殺めたなんて知ったらどれほど悲しむか考えてね」

「あ・・・はい。ちょっと調子に乗りました。お姉さん、すみません」
と受付のお姉さんに頭を下げる茜だった。

「茜様、いきなりAランクからスタートする冒険者なんて聞いたことありませんよ。職業などよりランクの方が遥かに重要です。
 茜様ならSでもおかしくないと思うのですがギルドマスターの最高の権限を使っても初心者はAが限界ですから。
 それどころか初心者でAランクなんて聞いたことありません。どうか我慢してください。
 魔王討伐の暁には国からSSやSSSランクを贈るようにいたします」

「・・・・・・・ギルドランクなんてどうでもいいのよ
 ・・・・・『無職』というのが恥ずかしいの。お兄ちゃんが見たら何て言うか」

女子高生は色々と難しいようだ。
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