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退魔の剣とローヴァ
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どれくらいそうしていただろう。
へんなかんじがしなくなったので、すこしだけ目をあけてみた。
ローヴァがニコニコしながら、ぼくにむかってはくしゅしている。
「よくできました!」
いわれて思い出す。
ぼくは、ローヴァのてつだいで退魔の剣をとりにいったんだっけ。
右手には、そのけんがぶらさがっている。
するどいはさきをむけないように気をつけながら、ローヴァにわたした。
「はい、どうぞ」
「ありがとう!」
「でも、これをどうするの?」
「これはね……」
ローヴァはうけとった剣をもって、走っていく。
いつのまにか、ひろいこうえんみたいなところにいた。
あちこちでおおぜいの人が、じめんにいろいろなものをひろげておいている。
たべもの、着るもの、かなもの、どうぶつのけがわ、つの、きば……。
のみのいちみたいだ。
ローヴァはそのなかで、ぶきをうっているおじさんのところで立ち止まった。
「これをかいとってくださいな」
「へい、らっしゃい!」
おじさんはローヴァからけんをうけとって、じっくりとながめた。
ゲジゲジみたいなまゆげの下で、するどい目がキラリと光る。
「お客さん……これは退魔の剣だね?」
「あったりー!」
もしかしてローヴァ、せっかく手にいれた退魔の剣をうっちゃうの?
それがどうして、「クイズ! ひらめきポン!」にでられることにつながるの?
それとも、お金がひつようだったのかな?
「ざんねんだが、こんなにきちょうなものはかいとれないよ。
でんせつのぶきだからね」
「だからこそ、ひきとってちょうだいね。
お金はいらないわ!」
ローヴァはとつぜん、とんでもないことをいいだした!
でんせつのぶきを、うりはらうなんて!
「このぶきをよーくけんきゅうして、おなじ退魔の剣をいくつも作るのよ。
そうすれば、だれでもまおうをたおすことができるでしょ!」
「なるほど!」
ぶきやのおじさんが大きくうなずいた。
こうして、でんせつの退魔の剣は、おじさんの手にわたったんだ。
「あれでよかったの、ローヴァ?」
「いいのよ。
今までは、まおうが生きかえるたびにわたしがたおしていたんだけれど、それじゃあばんぐみにでるヒマがなくなっちゃう。
だから、このせかいの人がじぶんでまおうをたおせるようにしたの」
ローヴァ、まおうたいじよりも『クイズ! ひらめきポン!」にでたかったんだね。
ぼくも、ローヴァのファンだから、そうしてくれたほうがうれしい。
これでめでたしめでたし、なのかな?
あれ、ちょっとまって。
「だったらどうして、ぼくに退魔の剣をぬかせたの?」
「わたし、年よりだから、おもいものをもつとこしがいたくなっちゃうの」
「そうなんだ」
退魔の剣、ぜんぜん力を入れなくてもスルッとぬけたことは、いわないでおこう。
いよいよ、ぼくのみせばがなくなっちゃう!
ふしぎなまほうで、ぼくとローヴァはもとのせかいにもどってきた。
ローヴァにであった、あのみちだ。
「じゃあね!
ばんぐみで、またおうえんしてね!」
ローヴァはまたとつぜん、走ってどこかへいってしまった。
するといつのまにか、音がもどってきた。
かぜの音、かれはの音、とおくのサイレンと、ヘリコプター。
ぼくはゆめからさめたように、いつもどおり学校へむかった。
そしてむかえた金ようび。
パパとママといっしょに、リビングで『クイズ! ひらめきポン!』がはじまるのをまつ。
じかんになって、いつものしかいしゃがとうじょう。
それから、クイズのかいとうしゃがしょうかいされた。
その中には、小さな女の子みたいなローヴァもいる!
ローヴァは今日もぜっこうちょう!
ぼくでも答えられるようなカンタンなもんだいをふせいかいに。
ぎゃくに、えらい大学のきょうじゅさえまちがえたもんだいを、一人でせいかいしている。
「いいぞ、ローヴァ!」
ぼくがテレビのまえでおうえんすると、がめんの中のローヴァがかためをつむってみせた。
まえまでのぼくなら、きっとびっくりしていただろうな。
でも、今はもうおどろかないよ。
だって、ローヴァはほんものの魔女だからね。
しかも、まおうだってかんたんにたおせてしまえるほどつよいんだ。
テレビのがめんごしにぼくのおうえんに気づくのくらい、朝めしまえさ。
まいしゅう金ようび、『クイズ! ひらめきポン!』がいちばんのたのしみ。
そのために、ローヴァといっしょに退魔の剣をとりにいって、ほんとうによかったな!
またいつでも、ぼうけんのおともにいくからね。
〈おしまい〉
へんなかんじがしなくなったので、すこしだけ目をあけてみた。
ローヴァがニコニコしながら、ぼくにむかってはくしゅしている。
「よくできました!」
いわれて思い出す。
ぼくは、ローヴァのてつだいで退魔の剣をとりにいったんだっけ。
右手には、そのけんがぶらさがっている。
するどいはさきをむけないように気をつけながら、ローヴァにわたした。
「はい、どうぞ」
「ありがとう!」
「でも、これをどうするの?」
「これはね……」
ローヴァはうけとった剣をもって、走っていく。
いつのまにか、ひろいこうえんみたいなところにいた。
あちこちでおおぜいの人が、じめんにいろいろなものをひろげておいている。
たべもの、着るもの、かなもの、どうぶつのけがわ、つの、きば……。
のみのいちみたいだ。
ローヴァはそのなかで、ぶきをうっているおじさんのところで立ち止まった。
「これをかいとってくださいな」
「へい、らっしゃい!」
おじさんはローヴァからけんをうけとって、じっくりとながめた。
ゲジゲジみたいなまゆげの下で、するどい目がキラリと光る。
「お客さん……これは退魔の剣だね?」
「あったりー!」
もしかしてローヴァ、せっかく手にいれた退魔の剣をうっちゃうの?
それがどうして、「クイズ! ひらめきポン!」にでられることにつながるの?
それとも、お金がひつようだったのかな?
「ざんねんだが、こんなにきちょうなものはかいとれないよ。
でんせつのぶきだからね」
「だからこそ、ひきとってちょうだいね。
お金はいらないわ!」
ローヴァはとつぜん、とんでもないことをいいだした!
でんせつのぶきを、うりはらうなんて!
「このぶきをよーくけんきゅうして、おなじ退魔の剣をいくつも作るのよ。
そうすれば、だれでもまおうをたおすことができるでしょ!」
「なるほど!」
ぶきやのおじさんが大きくうなずいた。
こうして、でんせつの退魔の剣は、おじさんの手にわたったんだ。
「あれでよかったの、ローヴァ?」
「いいのよ。
今までは、まおうが生きかえるたびにわたしがたおしていたんだけれど、それじゃあばんぐみにでるヒマがなくなっちゃう。
だから、このせかいの人がじぶんでまおうをたおせるようにしたの」
ローヴァ、まおうたいじよりも『クイズ! ひらめきポン!」にでたかったんだね。
ぼくも、ローヴァのファンだから、そうしてくれたほうがうれしい。
これでめでたしめでたし、なのかな?
あれ、ちょっとまって。
「だったらどうして、ぼくに退魔の剣をぬかせたの?」
「わたし、年よりだから、おもいものをもつとこしがいたくなっちゃうの」
「そうなんだ」
退魔の剣、ぜんぜん力を入れなくてもスルッとぬけたことは、いわないでおこう。
いよいよ、ぼくのみせばがなくなっちゃう!
ふしぎなまほうで、ぼくとローヴァはもとのせかいにもどってきた。
ローヴァにであった、あのみちだ。
「じゃあね!
ばんぐみで、またおうえんしてね!」
ローヴァはまたとつぜん、走ってどこかへいってしまった。
するといつのまにか、音がもどってきた。
かぜの音、かれはの音、とおくのサイレンと、ヘリコプター。
ぼくはゆめからさめたように、いつもどおり学校へむかった。
そしてむかえた金ようび。
パパとママといっしょに、リビングで『クイズ! ひらめきポン!』がはじまるのをまつ。
じかんになって、いつものしかいしゃがとうじょう。
それから、クイズのかいとうしゃがしょうかいされた。
その中には、小さな女の子みたいなローヴァもいる!
ローヴァは今日もぜっこうちょう!
ぼくでも答えられるようなカンタンなもんだいをふせいかいに。
ぎゃくに、えらい大学のきょうじゅさえまちがえたもんだいを、一人でせいかいしている。
「いいぞ、ローヴァ!」
ぼくがテレビのまえでおうえんすると、がめんの中のローヴァがかためをつむってみせた。
まえまでのぼくなら、きっとびっくりしていただろうな。
でも、今はもうおどろかないよ。
だって、ローヴァはほんものの魔女だからね。
しかも、まおうだってかんたんにたおせてしまえるほどつよいんだ。
テレビのがめんごしにぼくのおうえんに気づくのくらい、朝めしまえさ。
まいしゅう金ようび、『クイズ! ひらめきポン!』がいちばんのたのしみ。
そのために、ローヴァといっしょに退魔の剣をとりにいって、ほんとうによかったな!
またいつでも、ぼうけんのおともにいくからね。
〈おしまい〉
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