4 / 5
まおうのしろとローヴァ
しおりを挟む
「ハイっ!」
ローヴァが人さしゆびをしろのとびらにむけると、カンヌキがはじけとんだ。
どうじに、りょうびらきのとびらが、ぼくらにむかってぜんかいになる。
まるで「ようこそ!」とでもいうみたいに。
さすがおしろだけあって、げんかんのホールはとても広い。
てんじょうからさがっているごうかなシャンデリアには、あおじろいほのおがともっていた。
左右にむかってのびる、長いかいだんがある。
ロールプレイングゲームでボスがいる、さいごのダンジョンみたいなふんいき。
きけんなワナや、てごわいばけものがまちかまえているにちがいない。
だからゆっくりすこしずつ、きづかれないようにすすまないと……。
「ルンルンルーン、ルンルンルーン、ルルルルルルルー」
ぼくがきもちをひきしめたそばから、ローヴァははなうたをうたいだす。
きっととまらない、とめられない。
おくにいるボスにはきづかれてしまうだろうけれど、ローヴァがなんとかしてくれるよね?
思ったとおり。
ローヴァはうたいおどりながら、やみにひそんだかいぶつたちを、つぎつぎにゆびさしていく。
するとかいぶつたちは、かたっぱしから大きなポップコーンになった。
あとは、じゃまなポップコーンをころがして、まえにすすんでいけばいい。
でも、かいだんをのぼりはじめると、ローヴァはとたんにむくちになってしまった。
足どりも、なんだかおもたそうだ。
しんぱいになってこえをかけた。
「どうしたの?」
「ひざがいたくてね。
年よりだから……」
すごくげんきでわかくみえるけれど、やっぱりお年よりなんだ。
ぼくはかいだんをのぼるあいだ、ローヴァのせなかをおしつづけた。
大ひろまには、やっぱりまおうがいた。
ドラゴンとムカデとコウモリとライオンと……とにかく、おもいつくかぎりのいきものをまぜあわせたようなすがた。
ふつうなら、おそろしいと思うのかもしれない。
でもぼくは、ゲームでこのてのかいぶつはみなれている。
だから、めのまえにほんもののモンスターがいてすごいなと思うけれど、こわくはない。
ローヴァがいるからだいじょうぶ、というのもあるかもしれない。
まおうとたたかうのかと思ったら、ローヴァはそのよこをスタスタととおりすぎていく。
「はやく、こっちこっち!」
そのまままおうのうしろへまわりこんで、ぼくに手まねきしている。
いくらなんでも、ふあんだ……。
まおうの足だけで、家くらいありそうだ。
それでふまれたら、いっしゅんでペシャンコだろう。
でも、ローヴァがいるし、へいきかな?
ぼくは小走りになってまおうのよこをあるいた。
うしろまでいったら、こんどはダッシュでローヴァのところへいそぐ。
なにもおきなかった。
ローヴァにみられていると、まおうはうごけないみたい。
なさけないやつ。
まおうのうしろには、けんがじめんにつきささっていた。
もちろん、さやには入っていないぬきみのけんだ。
でも、なんでこんなところにあるんだろう?
「さあ、はやく退魔の剣をぬいて!」
ローヴァがぼくに、そういった。
これが、さがしていた退魔の剣なのか。
こんなところに、とつぜんささっているものなの?
ききたいことはいろいろあるけれど、まおうのうしろであまりゆっくりしていたくはない。
ワニのようにふといしっぽがひとふりされれば、ぼくはふきとばされてガケにまっさかさまだ。
ぬけるじしんはないけれど、いわれたとおり、けんのつかに手をかける。
そして、力いっぱいひっぱった。
なんのてごたえもなく、スルスルと退魔の剣がぬけた。
ぼくはいきおいあまって、しりもちをつきそうになった。
あぶない、あぶない。
「これをどうするの?」
もしかすると、あのまおうをたおすのかもしれない。
そう思いながらローヴァにたずねた。
「決まっているじゃない、うりはらうのよ!」
いいながらローヴァは、そのばでクルクルとまわりはじめた。
足もとのじめんがえんけいに、青くかがやきはじめる。
あっと思ったしゅんかん、ローヴァのすがたが消えてしまった!
ひとりでとりのこされて、きゅうに心ぼそくなる。
そのとたん、おなかがふるえるようなしんどうが、足からつたわってくる。
いやーなよかんがする。
ゆっくりかおを上げると、まおうが長いくびをおりまげでぼくをにらんでいた。
あのしんどうは、まおうのうなり声だ。
ローヴァがいなくなって、うごけるようになったんだ!
あんまりおどろきすぎて、手にもった退魔の剣でやっつけるなんて、かんがえもしなかった。
「ローヴァ!」
ぼくはさけびながら、ローヴァがきえたじめんの青い光にとびこんだ。
すると、目の前がまっ白になった。
まおうのうなり声も、ぐんぐんとおざかっていった。
体がのびるようなちぢむような、へんなかんじがする。
ぼくは気分がわるくなりそうな気がして、ぎゅっと目をとじた。
ローヴァが人さしゆびをしろのとびらにむけると、カンヌキがはじけとんだ。
どうじに、りょうびらきのとびらが、ぼくらにむかってぜんかいになる。
まるで「ようこそ!」とでもいうみたいに。
さすがおしろだけあって、げんかんのホールはとても広い。
てんじょうからさがっているごうかなシャンデリアには、あおじろいほのおがともっていた。
左右にむかってのびる、長いかいだんがある。
ロールプレイングゲームでボスがいる、さいごのダンジョンみたいなふんいき。
きけんなワナや、てごわいばけものがまちかまえているにちがいない。
だからゆっくりすこしずつ、きづかれないようにすすまないと……。
「ルンルンルーン、ルンルンルーン、ルルルルルルルー」
ぼくがきもちをひきしめたそばから、ローヴァははなうたをうたいだす。
きっととまらない、とめられない。
おくにいるボスにはきづかれてしまうだろうけれど、ローヴァがなんとかしてくれるよね?
思ったとおり。
ローヴァはうたいおどりながら、やみにひそんだかいぶつたちを、つぎつぎにゆびさしていく。
するとかいぶつたちは、かたっぱしから大きなポップコーンになった。
あとは、じゃまなポップコーンをころがして、まえにすすんでいけばいい。
でも、かいだんをのぼりはじめると、ローヴァはとたんにむくちになってしまった。
足どりも、なんだかおもたそうだ。
しんぱいになってこえをかけた。
「どうしたの?」
「ひざがいたくてね。
年よりだから……」
すごくげんきでわかくみえるけれど、やっぱりお年よりなんだ。
ぼくはかいだんをのぼるあいだ、ローヴァのせなかをおしつづけた。
大ひろまには、やっぱりまおうがいた。
ドラゴンとムカデとコウモリとライオンと……とにかく、おもいつくかぎりのいきものをまぜあわせたようなすがた。
ふつうなら、おそろしいと思うのかもしれない。
でもぼくは、ゲームでこのてのかいぶつはみなれている。
だから、めのまえにほんもののモンスターがいてすごいなと思うけれど、こわくはない。
ローヴァがいるからだいじょうぶ、というのもあるかもしれない。
まおうとたたかうのかと思ったら、ローヴァはそのよこをスタスタととおりすぎていく。
「はやく、こっちこっち!」
そのまままおうのうしろへまわりこんで、ぼくに手まねきしている。
いくらなんでも、ふあんだ……。
まおうの足だけで、家くらいありそうだ。
それでふまれたら、いっしゅんでペシャンコだろう。
でも、ローヴァがいるし、へいきかな?
ぼくは小走りになってまおうのよこをあるいた。
うしろまでいったら、こんどはダッシュでローヴァのところへいそぐ。
なにもおきなかった。
ローヴァにみられていると、まおうはうごけないみたい。
なさけないやつ。
まおうのうしろには、けんがじめんにつきささっていた。
もちろん、さやには入っていないぬきみのけんだ。
でも、なんでこんなところにあるんだろう?
「さあ、はやく退魔の剣をぬいて!」
ローヴァがぼくに、そういった。
これが、さがしていた退魔の剣なのか。
こんなところに、とつぜんささっているものなの?
ききたいことはいろいろあるけれど、まおうのうしろであまりゆっくりしていたくはない。
ワニのようにふといしっぽがひとふりされれば、ぼくはふきとばされてガケにまっさかさまだ。
ぬけるじしんはないけれど、いわれたとおり、けんのつかに手をかける。
そして、力いっぱいひっぱった。
なんのてごたえもなく、スルスルと退魔の剣がぬけた。
ぼくはいきおいあまって、しりもちをつきそうになった。
あぶない、あぶない。
「これをどうするの?」
もしかすると、あのまおうをたおすのかもしれない。
そう思いながらローヴァにたずねた。
「決まっているじゃない、うりはらうのよ!」
いいながらローヴァは、そのばでクルクルとまわりはじめた。
足もとのじめんがえんけいに、青くかがやきはじめる。
あっと思ったしゅんかん、ローヴァのすがたが消えてしまった!
ひとりでとりのこされて、きゅうに心ぼそくなる。
そのとたん、おなかがふるえるようなしんどうが、足からつたわってくる。
いやーなよかんがする。
ゆっくりかおを上げると、まおうが長いくびをおりまげでぼくをにらんでいた。
あのしんどうは、まおうのうなり声だ。
ローヴァがいなくなって、うごけるようになったんだ!
あんまりおどろきすぎて、手にもった退魔の剣でやっつけるなんて、かんがえもしなかった。
「ローヴァ!」
ぼくはさけびながら、ローヴァがきえたじめんの青い光にとびこんだ。
すると、目の前がまっ白になった。
まおうのうなり声も、ぐんぐんとおざかっていった。
体がのびるようなちぢむような、へんなかんじがする。
ぼくは気分がわるくなりそうな気がして、ぎゅっと目をとじた。
0
あなたにおすすめの小説
アルバのたからもの
ぼっち飯
児童書・童話
おじいちゃんと2人、幸せだったアルバの暮らしはある日を境に壊れてしまう。精霊が見えるアルバはしばらく精霊の世界に匿われているが、そこは人間の大人は暮らしてはいけない場所だった。育ててくれた精霊・ウーゴのもとを離れて、人間の国で独り立ちしたアルバだったが…。
※主人公のアルバは男の子でも女の子でも、お好きなように想像してお読みください。小学校高学年向けくらいのつもりで書いた童話です。大人向けに長編で書き直すか、迷ってます。
※小説家になろう様で掲載したものを短編に直したものです。カクヨム様にも掲載中です。
おっとりドンの童歌
花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。
意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。
「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。
なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。
「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。
その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。
道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。
その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。
みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。
ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。
ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。
ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?
瑠璃の姫君と鉄黒の騎士
石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。
そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。
突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。
大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。
記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。
お月さまのポケット
ほしみ
絵本
静かな夜。
小さなうさぎのミーミは、まんまるお月さまに出会いました。
お月さまのおなかには、ふしぎなポケット。
そこには、だれかの大切な「なにか」が、やさしくしまわれています。
お月さまとミーミの、小さくてあたたかな夜のお話。
※単体のお話として完結しています
※連載中の投稿作品「人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―」の作中作の絵本
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる