魔女ローヴァちゃんと退魔の剣

Ryo

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まおうのしろとローヴァ

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「ハイっ!」

 ローヴァが人さしゆびをしろのとびらにむけると、カンヌキがはじけとんだ。
 どうじに、りょうびらきのとびらが、ぼくらにむかってぜんかいになる。
 まるで「ようこそ!」とでもいうみたいに。

 さすがおしろだけあって、げんかんのホールはとても広い。
 てんじょうからさがっているごうかなシャンデリアには、あおじろいほのおがともっていた。
 左右にむかってのびる、長いかいだんがある。
 ロールプレイングゲームでボスがいる、さいごのダンジョンみたいなふんいき。
 きけんなワナや、てごわいばけものがまちかまえているにちがいない。
 だからゆっくりすこしずつ、きづかれないようにすすまないと……。

「ルンルンルーン、ルンルンルーン、ルルルルルルルー」

 ぼくがきもちをひきしめたそばから、ローヴァははなうたをうたいだす。
 きっととまらない、とめられない。
 おくにいるボスにはきづかれてしまうだろうけれど、ローヴァがなんとかしてくれるよね?

 思ったとおり。
 ローヴァはうたいおどりながら、やみにひそんだかいぶつたちを、つぎつぎにゆびさしていく。
 するとかいぶつたちは、かたっぱしから大きなポップコーンになった。
 あとは、じゃまなポップコーンをころがして、まえにすすんでいけばいい。

 でも、かいだんをのぼりはじめると、ローヴァはとたんにむくちになってしまった。
 足どりも、なんだかおもたそうだ。
 しんぱいになってこえをかけた。

「どうしたの?」

「ひざがいたくてね。
 年よりだから……」

 すごくげんきでわかくみえるけれど、やっぱりお年よりなんだ。
 ぼくはかいだんをのぼるあいだ、ローヴァのせなかをおしつづけた。

 大ひろまには、やっぱりまおうがいた。
 ドラゴンとムカデとコウモリとライオンと……とにかく、おもいつくかぎりのいきものをまぜあわせたようなすがた。
 ふつうなら、おそろしいと思うのかもしれない。
 でもぼくは、ゲームでこのてのかいぶつはみなれている。
 だから、めのまえにほんもののモンスターがいてすごいなと思うけれど、こわくはない。
 ローヴァがいるからだいじょうぶ、というのもあるかもしれない。

 まおうとたたかうのかと思ったら、ローヴァはそのよこをスタスタととおりすぎていく。

「はやく、こっちこっち!」

 そのまままおうのうしろへまわりこんで、ぼくに手まねきしている。
 いくらなんでも、ふあんだ……。
 まおうの足だけで、家くらいありそうだ。
 それでふまれたら、いっしゅんでペシャンコだろう。
 でも、ローヴァがいるし、へいきかな?

 ぼくは小走りになってまおうのよこをあるいた。
 うしろまでいったら、こんどはダッシュでローヴァのところへいそぐ。
 なにもおきなかった。
 ローヴァにみられていると、まおうはうごけないみたい。
 なさけないやつ。

 まおうのうしろには、けんがじめんにつきささっていた。
 もちろん、さやには入っていないぬきみのけんだ。
 でも、なんでこんなところにあるんだろう?

「さあ、はやく退魔の剣をぬいて!」

 ローヴァがぼくに、そういった。
 これが、さがしていた退魔の剣なのか。
 こんなところに、とつぜんささっているものなの?
 ききたいことはいろいろあるけれど、まおうのうしろであまりゆっくりしていたくはない。
 ワニのようにふといしっぽがひとふりされれば、ぼくはふきとばされてガケにまっさかさまだ。

 ぬけるじしんはないけれど、いわれたとおり、けんのつかに手をかける。
 そして、力いっぱいひっぱった。
 なんのてごたえもなく、スルスルと退魔の剣がぬけた。
 ぼくはいきおいあまって、しりもちをつきそうになった。
 あぶない、あぶない。

「これをどうするの?」

 もしかすると、あのまおうをたおすのかもしれない。
 そう思いながらローヴァにたずねた。

「決まっているじゃない、うりはらうのよ!」

 いいながらローヴァは、そのばでクルクルとまわりはじめた。
 足もとのじめんがえんけいに、青くかがやきはじめる。
 あっと思ったしゅんかん、ローヴァのすがたが消えてしまった!
 ひとりでとりのこされて、きゅうに心ぼそくなる。
 そのとたん、おなかがふるえるようなしんどうが、足からつたわってくる。

 いやーなよかんがする。
 ゆっくりかおを上げると、まおうが長いくびをおりまげでぼくをにらんでいた。
 あのしんどうは、まおうのうなり声だ。
 ローヴァがいなくなって、うごけるようになったんだ!
 あんまりおどろきすぎて、手にもった退魔の剣でやっつけるなんて、かんがえもしなかった。

「ローヴァ!」

 ぼくはさけびながら、ローヴァがきえたじめんの青い光にとびこんだ。
 すると、目の前がまっ白になった。
 まおうのうなり声も、ぐんぐんとおざかっていった。
 体がのびるようなちぢむような、へんなかんじがする。
 ぼくは気分がわるくなりそうな気がして、ぎゅっと目をとじた。
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