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まずはアーガスから近い位置にあるパルの村に向かうことにした。


「誰だ?」


村に入ると、村長らしき男性がこちらを見てくる。


「この新しい領主様がこの村の結界を直してくださるそうだ!」


「な、なんと! そちらのお若いかたが……新しい領主様?」


村長は信じられないといった様子だ。


「結界ってこれのことか?」


頭上には虹色の膜につつまれたドーム状の物体があった。だがところどころひびや穴が開いている。


「はい。最近壊れた箇所が増えてきて、このままでは村を守る結界が持たないのです」


「なるほどな。まあ、見てろよ」


俺は両手を前に出す。すると光輝く魔法陣が浮かび上がった。


「【リペア】」


俺が魔法を唱えると、みるみる内に結界の穴が塞がっていく。ものの数十秒で修復作業は完了した。


「おお! もう直ってしまったのか!」


村長や他の村人たちは俺の魔法を目の当たりにして感嘆の声を上げた。


「領主様! ありがとうございます!」


「ありがとうございます!」


「別に大したことはしてない。それじゃあ俺はこれで失礼する」


俺は領主館へと戻ると、執務室で一息つくことにした。


『アベル様! 良かったんですか!?』


フィーネは興奮気味に話しかけてくる。


「何がだよ?」


『あんなあっさり結界を修復しちゃって……』


「別にいいだろ? もうアーガスの領主になったんだから、このくらいの力を見せつけないと領民たちが不安がるしな」


『でも賢者ってバレたらまた面倒な事になりますよ?』


「大丈夫だろ。バレなきゃいいんだよ」


『はぁ……アベル様は本当に適当ですね……』


「それより、さっきの結界の穴についてなんだが……」


俺は修復した箇所に空いた小さな穴を思い浮かべる。


(あれは間違いなく自然に出来たものじゃないな)


つまり何者かが意図的に結界の穴を空けたということだ。


(調査する必要が有りそうだな……)


俺はホールに村中の人間を集めさせた。


「領主様、一体どうされたのですか?」


村長が不思議そうに尋ねてくる。


「この中に結界を壊そうとした奴がいる」


「なっ!?」


俺の言葉に村長は目を見開いた。他の村人たちも動揺している様子だ。


「ど、どういうことですか領主様?」


「しらばっくれてないで正体を現したらどうだ?」


俺は村長を睨みつける。


「な、なぜわかった!?」


村長は観念したらしく、正体を現した。それは邪悪な魔力を纏った魔族であった。


「人間界に潜伏し、侵略する機会を伺ってたんだが……まさか領主に見つかるとはな!」


『計画を自らばらしてるじゃないですか……』


「こうなったら仕方ない。お前ら全員皆殺しだ!」


魔族は襲い掛かってくるが、威力を抑えたファイアで消し炭になった。


「す、凄い……! あの魔族を一撃で……!」


「新しい領主様は、とんでもないお方だ……!」


「領主様! ありがとうございます!」


村人たちは俺が魔族を倒したことに驚愕していた。


(でもこれで俺の実力が皆に知れ渡ってしまったな……)


スローライフは当分の間、お預けになりそうだ。
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