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ある日のこと、俺たちは王都の西にある【暗黒の森(ダーク・ヴォルト)】に来ていた。目的はこの森に生息する【暗黒蟲(ダーク・バグズ)】の討伐だ。


「よし……行くぞ!」


団長の合図と共に俺たちは森に入る。森の中は薄暗く、不気味な雰囲気に包まれていた。俺は弓を構えながら進んでいく。すると、早速魔物が現れた! それは巨大なカブトムシのような生き物だった。その大きさは人間の何倍もあるだろう。その見た目とは裏腹に素早い動きで襲いかかってきた!


「【流星矢(スターダスト・アロー)】!」


俺は無数の矢を降らせる。すると、カブトムシは一瞬でバラバラになってしまった!


「さすがだな! だが、まだまだ来るぞ!」


「大丈夫です」


俺は右手で弦を引く。すると、いつものように矢が出現する。


「【流星の矢(スターダスト・アロー)】+【炎の矢(バーニング・アロー)】」


二本の魔法矢が輝き、やがて合体して、1本の矢へと変化する。


「【隕石の矢(バーニング・スターダスト・アロー)】!」


天に矢を放つと、それは無数の隕石となって降り注ぐ! カブトムシたちは次々と消し飛ばされていった。


「やっぱり凄いな……あの矢は……」


団長が感嘆の声を上げる。他の皆も驚いているようだった。俺は苦笑しながら言う。


「まあ、スキルの力ですよ」


この弓の弦を引くと、光の粒子のようなものが集まり、剣や槍などの武器が生成されるのだ。そして、それを自由自在に操ることができるのである。


「さて……先に進みましょう」


俺たちはさらに森の奥地へと進んでいった……しばらく歩くと、開けた場所に出た。そこには巨大な蜘蛛の巣が張られていた。そして、その中心にいるのは3メートルを超える巨大な蜘蛛だった。


「あれが暗黒蟲か……」


団長が呟く。どうやらあいつが今回のターゲットらしい。


「ギギィ!」


暗黒蟲が糸を吐き出してくる! 俺はそれをかわしつつ弓を構えて矢を放つ。しかし、それは弾かれてしまった。どうやらかなり頑丈なようだ。すると、今度は暗黒蟲が突進してくる!


「ぐっ!」


俺は咄嗟に盾で受け止めるが、衝撃を殺しきれず吹き飛ばされる!


「大丈夫か!?」


団長たちが駆け寄ってくる。俺はなんとか立ち上がった。そして、再び弓を構える。すると……突然頭の中に声が響いた。


(スキル【状態異常無効】を手に入れますか?)


俺は迷わず「YES」と答える。すると、スキルを手に入れた感覚があった。この状態でもう一度弓を引き絞る!


「【猛毒の矢(ヴェノム・アロー)】!」


放たれた矢が暗黒蟲に命中する! その瞬間、暗黒蟲は激しく痙攣し、やがて動かなくなった……どうやら猛毒で動けなくしたようだ。そして、そのままとどめを刺したのだった……


「よし! これで任務完了だな!」


団長が嬉しそうに言う。俺たちは暗黒蟲の死体を回収して王都へと帰還することにした。


「なぁ、カイト……お前さ、その弓の能力使ってなんかしてるだろ?」


帰り道で団長が言う。どうやら見抜かれていたようだ。


「まぁ、少しだけですけどね」


俺は苦笑いしながら答える。実はこの弓は使用者の魔力に応じて威力が上がるという特性があるらしいのだ。なので、俺が使うと通常の数倍の威力になるのである。


「まあ、それでも凄いことに変わりはないがな……」


団長が呟く。その時……不意に俺たちの前に一人の人物が現れた!


「誰だ?」


団長が警戒するように言う。その人物はフードを被っており、顔がよく見えなかった。だが、その声から女性であることが分かる。彼女は静かに口を開いた……


「私はノワール。魔族です」


彼女が名乗った瞬間、周囲の空気が変わるのを感じた。まるで彼女の存在感が増したような感覚だ。俺は思わず息を飲む……


「何の用だ?」


団長が尋ねる。すると、彼女は微笑みながら言った。


「今日は挨拶に来ました。また会える日を楽しみにしています」


それだけ言うと、彼女は闇に溶けるように消えてしまった……


「なんなんだあいつは……」


あの威圧感からして只者ではないだろう。俺は警戒しながら王都への帰路についたのだった……
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