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ある日のこと、俺はトレーニングルームでひたすら弓の鍛錬をしていた。昨日手に入れたスキルは弓使いにとってかなり強力なものだった。
「ふぅ……こんなものか」
俺が一息つくと、人が近づいてくる気配を覚えた。
「気配は消していたつもりだったんだが……さすがだな」
そこには銀髪の青年が立っていた。
「私はラウルと申します」
丁寧なお辞儀をしてきた彼に俺は頭を下げる。どうやらかなり礼儀正しい人のようだ。
「それで、何か御用ですか?」
俺が尋ねると、ラウルは真剣な表情になる。
「少し手合わせを願えないでしょうか?」
「手合わせ……ですか?」
「ああ、前から一度戦ってみたいと思っていたんだ」
ラウルはそう言うと、腰に下げた剣を抜き放つ。どうやら本気で戦うつもりのようだ。俺も断るつもりはなかったので了承することにする。
「分かりました。では、よろしくお願いします」
俺は弓を構えながら答える。すると、ラウルは笑みを浮かべた。そして、一気に距離を詰めてくる! 速い! だが、俺だって負けてはいない! 俺は弓を引き絞り矢を放った!しかし、ラウルはそれを避けてしまう!
「なかなかやりますね!」
俺はすぐさま矢をつがえ、連続で放つ。しかし、それも全て躱されてしまった。
「なかなかやるじゃないか」
ラウルは余裕の笑みを浮かべながら剣を振るう。俺も弓で応戦するが、防戦一方になっていた。
「さて……そろそろいいかな。本気で行かせてもらうよ」
そう言うと、ラウルの動きが変わった。先程までとは比べ物にならないほど速くなり、凄まじい連撃を繰り出してくる!
「【影の矢(シャドー・ショット)】!」
俺は咄嗟に矢を放つ。ラウルはそれを避けようとするが、影から矢が飛び出し、ラウルの体に突き刺さる!
「……がっ!」
ラウルは苦痛の声を上げる。
「やられたよ。まさか影を操るスキルがあったとは……」
ラウルは苦笑しながらも立ち上がる。かなりダメージを受けたようだが、まだ戦う意思はあるようだ。
「僕の負けだ……参ったよ」
ラウルは剣を収めると、俺に向かって手を差し伸べてきた。俺はその手を取り握手をする。
「おう、朝から早いじゃあねえか」
団長が入ってくる。どうやら様子を見に来たようだ。
「何やら騒がしいから見に来たんだが……」
団長は隣のラウルを見ると、急に頭を下げてくる。
「お、おはようございます!!」
国王に対しても、不敵な態度を崩さなかった団長が、急にかしこまった。一体どうしたんだ?
「ああ、うん。おはようバーンズ。そうかしこまらなくていい」
ラウルが笑う。俺はその光景を唖然として見ていた。
「なんだ? この人そんなに偉いのか?」
俺が尋ねると、団長は驚いた様子で答える。
「ラウル様はこの国の王子だ」
「は?」
俺は一瞬何を言われたのか理解できなかった。この軽薄そうな男が王子?
「おい、今失礼なことを考えなかったか?」
「な、なんでもありません!」
ラウルがジト目で睨んでくる。どうやら顔に出てしまっていたようだ。俺は慌てて取り繕うことにした。すると、ラウルはため息をつく。そして……
「まあいいさ……君の実力は認めよう。これからも頑張ってくれ」
ラウルが屈託なく笑う。団長は唖然としながら言う。
「お前……すげぇな。ラウル王子に認められるなんて……」
かくして、俺はアルカディア王国の第二王子にして、Sランク冒険者のラウルからはからずとも気に入られることになったのだった。
「ふぅ……こんなものか」
俺が一息つくと、人が近づいてくる気配を覚えた。
「気配は消していたつもりだったんだが……さすがだな」
そこには銀髪の青年が立っていた。
「私はラウルと申します」
丁寧なお辞儀をしてきた彼に俺は頭を下げる。どうやらかなり礼儀正しい人のようだ。
「それで、何か御用ですか?」
俺が尋ねると、ラウルは真剣な表情になる。
「少し手合わせを願えないでしょうか?」
「手合わせ……ですか?」
「ああ、前から一度戦ってみたいと思っていたんだ」
ラウルはそう言うと、腰に下げた剣を抜き放つ。どうやら本気で戦うつもりのようだ。俺も断るつもりはなかったので了承することにする。
「分かりました。では、よろしくお願いします」
俺は弓を構えながら答える。すると、ラウルは笑みを浮かべた。そして、一気に距離を詰めてくる! 速い! だが、俺だって負けてはいない! 俺は弓を引き絞り矢を放った!しかし、ラウルはそれを避けてしまう!
「なかなかやりますね!」
俺はすぐさま矢をつがえ、連続で放つ。しかし、それも全て躱されてしまった。
「なかなかやるじゃないか」
ラウルは余裕の笑みを浮かべながら剣を振るう。俺も弓で応戦するが、防戦一方になっていた。
「さて……そろそろいいかな。本気で行かせてもらうよ」
そう言うと、ラウルの動きが変わった。先程までとは比べ物にならないほど速くなり、凄まじい連撃を繰り出してくる!
「【影の矢(シャドー・ショット)】!」
俺は咄嗟に矢を放つ。ラウルはそれを避けようとするが、影から矢が飛び出し、ラウルの体に突き刺さる!
「……がっ!」
ラウルは苦痛の声を上げる。
「やられたよ。まさか影を操るスキルがあったとは……」
ラウルは苦笑しながらも立ち上がる。かなりダメージを受けたようだが、まだ戦う意思はあるようだ。
「僕の負けだ……参ったよ」
ラウルは剣を収めると、俺に向かって手を差し伸べてきた。俺はその手を取り握手をする。
「おう、朝から早いじゃあねえか」
団長が入ってくる。どうやら様子を見に来たようだ。
「何やら騒がしいから見に来たんだが……」
団長は隣のラウルを見ると、急に頭を下げてくる。
「お、おはようございます!!」
国王に対しても、不敵な態度を崩さなかった団長が、急にかしこまった。一体どうしたんだ?
「ああ、うん。おはようバーンズ。そうかしこまらなくていい」
ラウルが笑う。俺はその光景を唖然として見ていた。
「なんだ? この人そんなに偉いのか?」
俺が尋ねると、団長は驚いた様子で答える。
「ラウル様はこの国の王子だ」
「は?」
俺は一瞬何を言われたのか理解できなかった。この軽薄そうな男が王子?
「おい、今失礼なことを考えなかったか?」
「な、なんでもありません!」
ラウルがジト目で睨んでくる。どうやら顔に出てしまっていたようだ。俺は慌てて取り繕うことにした。すると、ラウルはため息をつく。そして……
「まあいいさ……君の実力は認めよう。これからも頑張ってくれ」
ラウルが屈託なく笑う。団長は唖然としながら言う。
「お前……すげぇな。ラウル王子に認められるなんて……」
かくして、俺はアルカディア王国の第二王子にして、Sランク冒険者のラウルからはからずとも気に入られることになったのだった。
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