転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています

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ある日、私が王城を歩いていると空き部屋から物音が聞こえてきた。不審に思って覗いてみると、そこには白いドレスを身にまとった美しい女性の姿があった。


「どなたですか？」と私は思わず声をかけてしまった。すると彼女は驚いた顔をして振り返った。その顔立ちは整っていて、まるでお伽話に出てくるような美しさだった。年齢は私よりも少し上くらいだろうか……長い黒髪が風に靡くその姿はまさにこの世のものとは思えないほどだった。


「あ、あの……」と私が戸惑っていると彼女は微笑んで言った。


「驚かせて申し訳ありません」


彼女の声はとても透き通っていて耳に心地よく響いた。その声はどこか懐かしさを感じさせた。


「あなたは一体……？」と尋ねると彼女は答えた。


「私はサブリナ。幽霊です」


「え……？ 幽霊……？」と私は聞き返した。何を言っているのか理解できなかったのだ。すると彼女はまた微笑んで言った。


「はい、私はこの王城で亡くなった者たちの魂を管理する者なのです」


「そんな……まさか……」と私は否定したが彼女の目は真剣だった。その瞳からは強い意志を感じた。


「……じゃあそのドレスは？」と言うと、彼女は自分の着ている服を見て言った。


「これは私が生前に着ていたものです」と答えた彼女の顔にはどこか悲しさが浮かんでいた。


「どうして幽霊に？」と私は尋ねた。すると彼女は少し考え込んでから答えた。


「それは私にもわかりません……ただ気づいたらこの姿でここにいたんです」


「そうなんですね……」


「はい。でもこの場所が気に入っているので、ずっとここで幽霊として過ごそうと思っています」と彼女は笑顔で言った。


私はその姿に不思議と親近感を覚えた。自分と同じような境遇の人間がいるということに安心したのかもしれない。


「あの……もしよければ少しお話していきませんか？」と言うと、彼女は一瞬驚いた顔をした後、嬉しそうな笑みを浮かべて言った。


「はい！ 是非お願いします！」それから私たちは時間を忘れて話し込んだ。お互いの身の上話やこの王城での思い出などについて語り合った。


「それで、エミリーったら慌てて書類をばら撒いちゃって大変だったんですよ」と私が言うと、彼女は笑いながら言った。


「ふふっ、可愛らしい方ですね」


「はい！ 本当に頼りになるんです！」と私は胸を張って答えた。すると彼女が微笑みながら言った。


「あなたにとって大切な方なんですね」


「はい……私にとっては家族同然の存在です……」


そう答える私の表情は自然と緩んでいたと思う。それほどまでに彼女と話している時間は楽しかったのだ。そして別れ際、私は彼女に聞いた。


「あの……また会いに来てもいいですか？」と尋ねると、彼女は優しく微笑んで言った。


「もちろんです。いつでも待っています」


それからというもの、私は暇を見つけてはサブリナに会いに行くようになった。彼女と話をする時間は私にとって癒しの時間だった。ある日のこと、いつものように空き部屋に入ると彼女が待っていた。


「こんにちは」と言うと彼女も微笑んで挨拶してくれた。


「今日も来てくれたんですね！」と言って彼女は嬉しそうに言った。そんな彼女を見ていると私も自然と笑顔になるのだった。


それから私たちは他愛もない話をしたり、お互いの悩みを打ち明けたりした。彼女のおかげで私の心の傷も少しずつ癒えていった気がした。そしていつしか私は彼女を姉のように慕うようになっていた。


「ねえクロエ、最近なんだか明るくなったわね」とエミリーは言った。


確かに自分でも以前より前向きになった気がするし、毎日が充実しているように感じるのだ。これも全てサブリナのおかげだと思うと感謝の気持ちで一杯になった。


ある日のこと、いつものように空き部屋に入るとサブリナが待っていた。しかし彼女は浮かない顔をしていた。何かあったのだろうかと思い心配になって声をかけると、彼女は力なく微笑んだ。


「今日で私は成仏しなければいけません」と彼女は言った。その言葉に私は衝撃を受けた。


「そんな……やっと仲良くなれたと思ったのに……」と言うと、彼女は申し訳なさそうに言った。


「ごめんなさい……でも私にはどうすることもできないのです……」


そんな彼女の言葉を聞いているうちに涙が溢れてきた。私にとって彼女はかけがえのない存在だったからだ。だからこそ別れが辛かった。するとサブリナは私を抱きしめながら言った。その体は微かに震えていた。


「泣かないでクロエ……私はいつでもあなたの側にいるから……」


その言葉を聞いた途端、私の涙腺は完全に決壊してしまった。子供のように泣きじゃくりながらも私は必死に言葉を絞り出した。


「サブリナ様……どうか……どうかお元気で……」


その言葉を聞くと彼女は微笑みながら言った。


「あなたもね、クロエ」そして次の瞬間、彼女の体は光の粒子となり消えてしまった。私はその場に崩れ落ちて泣き続けた。


「さようなら……サブリナ様……」


それからというもの、私はサブリナの墓参りを欠かさず行った。毎日花を手向けて祈りを捧げた。そして彼女のことを忘れないよう心に刻みつけた。私にとって彼女は唯一無二の存在だったのだから……。