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生徒会に入って今まで以上に忙しくなるかと思いきや、今のところはそうでもなくて拍子抜けしていた。 けど。何故かエミリーの顔色が良くないことが気がかりだった。
「ねえエミリー。最近顔色が優れないけどどうしたの?」
「え? あ、うん。実はね……生徒会の仕事が忙しくてちょっと疲れ気味で……」
「保健室で休んだほうがいいんじゃない?」
「ううん、大丈夫。それよりお仕事しなきゃね」
「何かあってからじゃ遅いの。無理しないで」
「心配かけてごめんね。でも本当に大丈夫だから……」
エミリーは笑ってくれたけど、私には無理しているように見えた。
それからしばらく経ったある日のこと。授業が終わって放課後になった瞬間、エミリーが倒れた。慌てて駆け寄るとエミリーは苦しそうな顔で息をしていた。
「エミリー! しっかりして!」
私が叫ぶと周りの生徒たちが集まってきた。先生はすぐに救急車を呼び、エミリーを病院に搬送した。私も一緒に付き添うことにしたのだが……しばらくして医師から衝撃的なことを告げられた。
「エミリーさんが倒れた原因は過労です」
「そんな……」
「最近忙しさにかまけて十分な睡眠や栄養を摂らなかったことが原因と考えられます」
「そんな……どうしてもっと早く言ってくれなかったんですか!」
「申し訳ありません。エミリーさんがどうしても言わないで欲しいと仰ったので……」
私は言葉を失った。自分のせいでエミリーに負担をかけていたのだ。
「……それで、エミリーは大丈夫なんですか?」
「はい。命に関わるような状態ではありませんが、しばらくは入院が必要です」
「そうですか……」
「お気持ちはわかりますが、今はご自身の学業を優先してください。エミリーさんの分まで頑張るんですよ」
「……わかりました……」
私は仕方なく病室に戻った。ベッドに横たわるエミリーは疲れ切った表情で眠っていた。その姿を見ると胸が張り裂けそうだった。
「ごめんね……私のせいでこんな目に遭わせてしまって……」
そう言いながら彼女の手を握った。その手はとても冷たかった。
「ううん、違うの……私が言わなかっただけよ……だから気にしないで……」
エミリーが目を覚まして言った。しかしその表情には生気がなく、声も弱々しいものだった。
「でも……どうして……」
「私ね、クロエにだけは負担をかけたくなかったの……迷惑かけたくなくて……」
エミリーが弱々しく笑う。その笑顔が痛々しくて見ていられなかった。
「……ごめんなさい……本当にごめん……!」
私は泣きながら謝ることしかできなかった。自分が情けなくて仕方がなかった。
そんな私の頭を優しく撫でながら彼女は言った。
「泣かないで、クロエ……あなたは悪くないわ……」
「でも……私がもっとしっかりしていればこんなことにはならずに済んだのに……」
「ううん。これは誰のせいでもないのよ」とエミリーは言ってくれた。
「でも……私はあなたに恩返ししたいのに……」
「……その気持ちだけで十分よ」と彼女は微笑んだ。その瞳には涙が浮かんでいた。
しばらくして医師がやってきた。彼はエミリーの様子を確認しながら今後のことについて説明してくれた。
「しばらくは入院が必要ですが、リハビリ次第で退院できると思います。しかし無理をすればまた再発する恐れもあるので注意してください」
その言葉にほっとしたものの、心のどこかで不安が残っていた。そんな私の気持ちを察したのか、医師は優しく語りかけてくれた。
「心配いりませんよ。きっと良くなりますから」と言って彼は帰っていった。エミリーは力なく手を振った。
それからというもの、私は毎日欠かさずお見舞いに行った。エミリーは最初のうちは辛そうにしていたが、少しずつ元気を取り戻していったようだった。そんなある日のこと、エミリーがこんなことを言い出した。
「ねえクロエ……もし私が退院したらさ、一緒に海に行ってみない?」
「え? いいけど……でもどうして急に?」
「……なんだか行ってみたい気分になったの。ほら、私たちってあまり遠出したことないでしょ?」とエミリーは言った。
確かにそうだ。私はこれまで学校に通いながら家の仕事をしていたし、エミリーも生徒会の仕事で忙しかったからだ。だから彼女の提案には賛成だった。
「うん! 行こう!」
と私は答えた。するとエミリーは嬉しそうな笑みを浮かべた。
「ありがとう、クロエ……」彼女は私の手を握って言った。その手はとても暖かかった。
数日後、エミリーの退院日が決まった。私はその日を待ちきれずにそわそわしていた。そしてついにその日がやってきた。
「おはよう、クロエ」
玄関先で出迎えると彼女は元気に挨拶してきた。その姿は以前よりも元気そうで安心した。
「おはようエミリー! もう大丈夫なの?」と聞くと、彼女は微笑みながら頷いた。
「うん! もうすっかり良くなったわ!」と言って彼女は腕を大きく広げた。その姿を見ると本当に回復したんだと実感した。
「よかった……本当に……」
と私は思わず涙ぐんでしまった。
「もう、泣かないでってば……」エミリーはそう言いながらも優しく抱きしめてくれた。彼女の温かさが心に染み渡った。そして改めて誓ったのだ。もう二度と彼女を悲しませないと……。
「ねえエミリー。最近顔色が優れないけどどうしたの?」
「え? あ、うん。実はね……生徒会の仕事が忙しくてちょっと疲れ気味で……」
「保健室で休んだほうがいいんじゃない?」
「ううん、大丈夫。それよりお仕事しなきゃね」
「何かあってからじゃ遅いの。無理しないで」
「心配かけてごめんね。でも本当に大丈夫だから……」
エミリーは笑ってくれたけど、私には無理しているように見えた。
それからしばらく経ったある日のこと。授業が終わって放課後になった瞬間、エミリーが倒れた。慌てて駆け寄るとエミリーは苦しそうな顔で息をしていた。
「エミリー! しっかりして!」
私が叫ぶと周りの生徒たちが集まってきた。先生はすぐに救急車を呼び、エミリーを病院に搬送した。私も一緒に付き添うことにしたのだが……しばらくして医師から衝撃的なことを告げられた。
「エミリーさんが倒れた原因は過労です」
「そんな……」
「最近忙しさにかまけて十分な睡眠や栄養を摂らなかったことが原因と考えられます」
「そんな……どうしてもっと早く言ってくれなかったんですか!」
「申し訳ありません。エミリーさんがどうしても言わないで欲しいと仰ったので……」
私は言葉を失った。自分のせいでエミリーに負担をかけていたのだ。
「……それで、エミリーは大丈夫なんですか?」
「はい。命に関わるような状態ではありませんが、しばらくは入院が必要です」
「そうですか……」
「お気持ちはわかりますが、今はご自身の学業を優先してください。エミリーさんの分まで頑張るんですよ」
「……わかりました……」
私は仕方なく病室に戻った。ベッドに横たわるエミリーは疲れ切った表情で眠っていた。その姿を見ると胸が張り裂けそうだった。
「ごめんね……私のせいでこんな目に遭わせてしまって……」
そう言いながら彼女の手を握った。その手はとても冷たかった。
「ううん、違うの……私が言わなかっただけよ……だから気にしないで……」
エミリーが目を覚まして言った。しかしその表情には生気がなく、声も弱々しいものだった。
「でも……どうして……」
「私ね、クロエにだけは負担をかけたくなかったの……迷惑かけたくなくて……」
エミリーが弱々しく笑う。その笑顔が痛々しくて見ていられなかった。
「……ごめんなさい……本当にごめん……!」
私は泣きながら謝ることしかできなかった。自分が情けなくて仕方がなかった。
そんな私の頭を優しく撫でながら彼女は言った。
「泣かないで、クロエ……あなたは悪くないわ……」
「でも……私がもっとしっかりしていればこんなことにはならずに済んだのに……」
「ううん。これは誰のせいでもないのよ」とエミリーは言ってくれた。
「でも……私はあなたに恩返ししたいのに……」
「……その気持ちだけで十分よ」と彼女は微笑んだ。その瞳には涙が浮かんでいた。
しばらくして医師がやってきた。彼はエミリーの様子を確認しながら今後のことについて説明してくれた。
「しばらくは入院が必要ですが、リハビリ次第で退院できると思います。しかし無理をすればまた再発する恐れもあるので注意してください」
その言葉にほっとしたものの、心のどこかで不安が残っていた。そんな私の気持ちを察したのか、医師は優しく語りかけてくれた。
「心配いりませんよ。きっと良くなりますから」と言って彼は帰っていった。エミリーは力なく手を振った。
それからというもの、私は毎日欠かさずお見舞いに行った。エミリーは最初のうちは辛そうにしていたが、少しずつ元気を取り戻していったようだった。そんなある日のこと、エミリーがこんなことを言い出した。
「ねえクロエ……もし私が退院したらさ、一緒に海に行ってみない?」
「え? いいけど……でもどうして急に?」
「……なんだか行ってみたい気分になったの。ほら、私たちってあまり遠出したことないでしょ?」とエミリーは言った。
確かにそうだ。私はこれまで学校に通いながら家の仕事をしていたし、エミリーも生徒会の仕事で忙しかったからだ。だから彼女の提案には賛成だった。
「うん! 行こう!」
と私は答えた。するとエミリーは嬉しそうな笑みを浮かべた。
「ありがとう、クロエ……」彼女は私の手を握って言った。その手はとても暖かかった。
数日後、エミリーの退院日が決まった。私はその日を待ちきれずにそわそわしていた。そしてついにその日がやってきた。
「おはよう、クロエ」
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「おはようエミリー! もう大丈夫なの?」と聞くと、彼女は微笑みながら頷いた。
「うん! もうすっかり良くなったわ!」と言って彼女は腕を大きく広げた。その姿を見ると本当に回復したんだと実感した。
「よかった……本当に……」
と私は思わず涙ぐんでしまった。
「もう、泣かないでってば……」エミリーはそう言いながらも優しく抱きしめてくれた。彼女の温かさが心に染み渡った。そして改めて誓ったのだ。もう二度と彼女を悲しませないと……。
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