「お前のような奴と結婚できない」と婚約破棄された聖女は新しい幸せを探します

8

翌日、私は孤児院で働いていた。子供たちと遊んだり勉強を教えたりする毎日だ。今日もいつものように楽しい時間を過ごしていた。


（疲れたな……）


子供たちの元気さに圧倒されて私はクタクタになっていた。休憩室で椅子に座って休んでいると、院長先生が声をかけてくる。


「クロエ、ちょっと良いかしら？」


「どうしましたか？」


私が尋ねると彼女は笑みを浮かべたまま言った。


「実はあなたに頼みたい仕事があるんだけど……」


私は首を傾げる。彼女が私に頼み事をするのは初めてだったからだ。一体どんな内容なのか不安に思いながらも続きに耳を傾けることにする。


「最近新しく入ってきた子供たちがいるのだけれど、その子たちの面倒を見て欲しいの」


「私がですか？」


私は驚いた声を上げた。今まで孤児院の仕事はしたことあるけれど、子供のお世話はあまり経験がないからだ。だが、院長先生は真剣な眼差しで私を見ている。どうやら本気らしい。


（私にできるかな……？）


不安に思い俯いていると、彼女は優しい声で言った。


「大丈夫よ。私も手伝うし、それにあなたももう子供じゃないでしょ？」


私はハッとしたように顔を上げて頷いた。確かにいつまでも昔のことにこだわっていたら成長できないと思ったからだ。


「分かりました！ 私、やってみます！」


覚悟を決めると、院長先生は嬉しそうに微笑んでくれた。


「ありがとうクロエ。助かるわ」


そう言って彼女は私の頭を撫でてくれる。それがとても心地よかった。


「それじゃあ、早速だけど子供たちの所に行きましょうか」


「はい！」


元気よく返事をした私は院長先生と一緒に子供たちがいる部屋へと向かった。扉を開けると、そこには5人の少年少女がソファに座って待っていた。みんな可愛い顔立ちをしている。


「こんにちは！ 今日から君たちのお世話をすることになったクロエです！ よろしくね！」


私が挨拶をすると彼らは元気よく返事をしてくれた。


「「「はーい！」」」


（元気いっぱいだな～）


私は思わずクスッと笑ってしまった。それから子供たちに挨拶をする順番を決めるように伝える。すると、彼らは話し合いを始めた。最初に名前を教えてくれたのは男の子だった。


「ぼくはシュウって言うんだ！ よろしくね！」


彼は爽やかな笑顔で名前を教えてくれる。続いて女の子が口を開いた。


「わたしはレイナっていうの！」


元気いっぱいな様子で彼女は自分の名前を教えてくれる。次に男の子が口を開いた。


「俺はケインって言います」


恥ずかしそうにしながらもしっかりと自己紹介してくれるケインくんを見て心が和んだ気がした。最後に残った女の子が恥ずかしそうにしながらも口を開く。


「アタシは……アリス……」


彼女は小さな声で名前を教えてくれた。恥ずかしがり屋な女の子のようだ。そんな様子を見て私はクスッと笑ってしまうのだった。


「じゃあ、次は私ね！」


そう言って最後に名乗りを上げたのは最年長のレイナちゃんだ。彼女は胸を張って堂々と自分の名前を告げた。


「アタシの名前はレイナよ！ みんな、これから仲良くしましょうね！」


自己紹介が終わると子供たちはお互いに顔を見合わせながら笑い合う。その光景はとても微笑ましく思えた。


「じゃあまずはみんなの好きなものとか教えてもらえるかな？」


私が質問すると、子供たちは元気いっぱいに答えてくれる。


「ぼくはお肉が好きだよ！」


「アタシはスイーツが好きだな」


「ボクは本が好きかな」


子供たちの話を聞き、私はメモを取っていく。彼らがどんな性格なのかを把握していくためだ。


「はい！じゃあ次はシュウくんの番だよ！」


私は手を挙げてシュウに話を振った。すると、彼は笑顔で言う。


「僕はゲームが大好きです！」


私は目を輝かせながらメモを取った。彼は活発な子のようだ。


「そっか！じゃあ次はケインくんね！」


私がケインに話を振ると、彼は恥ずかしそうにしながらも答えてくれる。


「僕は絵を描くことが好きです……」


彼の声を聞きながら私は彼のスケッチブックを受け取った。そして、その絵を見て感動してしまう。それはとても美しい風景画だった。こんな才能があるなんて羨ましいと思う。


「すごいよ！こんなに上手に描けるなんて凄いよ！」


私が褒めると、ケインは少し照れ臭そうにしながらも微笑んでくれた。


「次はレイナちゃんの番だね！」


私はワクワクしながらレイナちゃんに話を振る。すると、彼女は少し考えた後口を開いた。


「アタシはぬいぐるみ集めが大好きです！」


彼女の言葉を聞いた瞬間、私の心はキュンとした。なんて可愛らしい趣味なんだろうと思い、とても好感が持てる。


（私も今度買いに行こうかな）


そんなことを考えていると、今度はアリスちゃんが手を挙げた。


「あたちね！アリスもぬいぐるみ作るのが好きなの！」


そう言ってアリスちゃんは嬉しそうに自分の作品を見せてくれた。とても上手で可愛らしいぬいぐるみが並んでいる。


「アリスちゃんって手先が器用なんだね！凄いね！」


私が褒めると、彼女は照れくさそうにしながらも笑顔を見せてくれた。


（みんな可愛くて癒されるなぁ……）


子供たちとの触れ合いは私にとって本当に幸せな時間だった。院長先生の頼み事に感謝しつつ私は彼らと楽しく過ごすのだった。