行き倒れを助けたら、追放された王子様でした

2

翌朝。いつもどおりの時間に目が覚め隣を見れば、そこにはすやすやと眠るラインハルトの姿があった。彼はずっとベッドに潜り込んでおり、昨日は結局別々に寝ることもなく朝を迎えたのである。


「んん……」


俺が起き上がったことで布団がめくれたからだろう。ラインハルトは寒そうに身震いした後、再び眠りに就いた。そんな彼の無防備な姿を見ていたらつい口元を緩めてしまうのだった。

そんなことを考えているうちに出勤時間が迫ってきたので俺は慌てて身支度を整えた。そして朝食の準備をする。


「おはよ。朝飯作るけど、食べられそう？」


「……ああ」


俺が声をかけるとラインハルトは目を擦りながら起き上がった。彼はまだ寝ぼけているようで、ぼーっとした表情でこちらを見つめていた。


「顔洗ってこいよ」


そう言いながら俺は卵焼きを作り始めた。今日のメニューはご飯に味噌汁それにだし巻き玉子だ。我ながら完璧なラインナップだと思う。そんなことを思っていると、顔を洗い終わったらしくラインハルトが戻ってきた。そして食卓につくと目を輝かせながら言った。


「おぉ……！ これはまた美味しそうだな……！」


そして箸を手に取り、早速食べ始めた。それを俺は隣で嬉しそうに眺める。彼の反応が楽しみで仕方がないからだ。


「どうだ？」


俺が尋ねると彼はしばらく咀嚼したあとゆっくり飲み込んだ後答えた。


「うむ！ とても美味いぞ！」


ラインハルトはそう言って満面の笑みを見せる。その笑顔を見て俺も幸せな気持ちになった。

片付けを終え、紅茶をいれて居間のソファーでくつろぐ。


「ありがとう、カイト。君のお陰で助かった」


ラインハルトはそう言った後紅茶を一口飲むと、ほっと息を吐いた。どうやらかなりリラックスしているようだ。


「気にしないでいいよ。困った時はお互いさまって言うだろ？」


俺がそう言うと彼は微笑んでくれた。それから俺たちは他愛もない話をしながら過ごしたのだった。


***


夜になり夕食の準備をしていると、背後から足音が聞こえた。振り返るとそこにはラインハルトの姿があった。どうやら様子を見に来たらしい。


「なんか手伝うことはあるか？」


そう尋ねてきたので、俺は彼と一緒に料理を作ることにし、二人でキッチンに立った。ラインハルトは意外にも料理が得意らしく、手際よく作業を進めていく。そんな姿を見ていると愛おしく思えて仕方がなかった。

食事中もラインハルトは俺にべったりで、ずっとくっついてきたりしていた。時々頭を撫でたり抱きしめたりしてやると嬉しそうに目を細める姿がとても可愛らしい。


「一緒に寝てやろうか？」


俺が冗談っぽく言うと、ラインハルトは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。どうやら照れているらしい。その姿があまりにも愛らしくて俺の息子が元気になってしまった……おっといかんいかん……流石にそれはマズいな。


「風呂沸かしてくるから、先に入ってきなよ」


そう言って俺はその場を離れると、風呂場へと向かったのだった……。それから30分後……俺は自室でラインハルトを待っていた。するとドアが開き、バスタオルで身体を隠したラインハルトが入ってきた。


「遅くなってすまない……」


そう言いながら近づいてくる彼の頬をそっと撫でると、彼は気持ち良さそうに目を細めた。その姿があまりにも可愛くて思わず抱きしめてしまう。すると彼も背中に手を回してきたので、しばらくの間お互いに抱き合っていたのだった……。