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6 謎の事件と聖人候補
953 ダンジョンの放棄
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953
「ああ、メイロードさま、よく、よくご無事で‼︎」
なんとか穴を塞ぎ終わった私が上層へ姿を現すと、涙目のルエラさんが抱きついてきた。
「心配させましたね。大丈夫、なんともないわ。それより……」
と私がテーセウスさんたちを呼んでもらおうと話しかけたとき、もうすでにテーセウスさん、ピントさん、エンデさんがこちらに駆けてきていた。
「ああ、メイロードさま!」
口々に労いや感謝の言葉をかけようとする彼らを制した私は、すぐに対応をしなければならない話を切り出した。
「緊急性があるので、まずは現状を報告させてください」
私の真剣な表情に、皆さん黙って頷いてくれた。
「壁の穴は塞ぎ、この下層へとつながる入り口には五重に《物理結界》の魔法を施してきました。私の知る範囲では、ダンジョンはその層ごとにある意味別世界であり、環境が大きく異なるそうですね。そのため魔物は行き来しないと聞いていますが、ここがそういった普通のダンジョンではない可能性も、いまは考えなければならないと思います」
いまもまだ最下層から供給され続けている膨大な魔力、それにより増え続けている魔物……このダンジョンは危険度を増すばかりだ。
「私の結界にはかなりの耐久力がありますが、それでも多くの魔物に攻撃され続ければ限界がくるでしょう。そこで、この下層へと続く階段をこれから上層に向かいながらすべて埋めていこうと考えています」
「そ、それは、このダンジョンを放棄するということでございますか?」
エンデさんが悲しげにそう言ったが、テーセウスさんがそれを制する。
「このままにしていれば、上層階もわれわれのような速度で攻略はできなくなる。第一、このダンジョンはメイロードさまなしに攻略することは不可能だと、みんなもう骨身に染みて知ったはずだ。ここは私たちの狩場ではない。このまま放置すれば、むしろ狩られるのはわれわれだ」
テーセウスさんは現場を冷静に分析している。実際その通りだ。
「メイロードさまに賛成いたしますわ。そして、なるべく早くこのダンジョンを脱出すべきです!」
「ありがとうございます、ピントさん」
「わかりました、負傷者の手当てが終わり次第、すぐ移動開始の指示を出しましょう」
「よろしくお願いします、エンデさん」
「では、体制の見直しを早急に行い、行軍を開始いたしましょう」
テーセウスさんはそう言うが早いか配下の方たちに指示を始める。
方針も固まったので、私はすぐさま土魔法での階段の封鎖を開始した。今回使うのは土魔法の中でも最も密度が高い《岩石生成》をさらに凝縮したやり方だ。これは強固な岩盤を作れる魔法なのだが、土壁と比べて作り上げるまでの時間がかかる。だから、スピードが求められる戦闘時にはあまり有効ではないが、こうした頑丈な壁が欲しいときにはうってつけだ。
魔法でこの超高密度の壁を生成し続けている私に、周囲の状況を確認してきてくれたセーヤとソーヤが報告をくれる。
「この層ではまだ大きな変動はないようで、魔物の数も前回きましたときと差は感じられませんでした。ただ、壁の移動速度が少し上がり始めておりますので、影響がまったく及んでいないわけではなさそうです」
「そう、ありがとう。皆さんの疲れ具合はどうかしら? 怪我の治療は上手くいっていそう?」
「はい。〝朝日の誓約〟の魔法使いの皆さんはとても優秀です。現状、歩行困難になるほどの怪我人はありません。ただ、疲労に関しては度重なる戦闘と睡眠不足の影響で、それなりに蓄積していますね。みなさん、弱音を吐くようなヤワな冒険者ではないので一見わかりませんが、この状態が続けば進行速度が低下し、撤退が妨げられる危険があります」
「そう……それじゃ準備しておいたアレを配ってくれる?」
「承知いたしました、ではすぐに準備いたしましょう」
指示を出し終わった私は、肩にかけていたサコッシュ風のお手製マジックバッグをソーヤに手渡す。
「それじゃ、よろしく頼むわね!」
そう言って私の秘策を詰めたマジックバッグを託すと、再び私は土木工事のような土魔法を使うことに神経を集中する。
こんな危険なダンジョンは徹底的に封印したいところだけど、そこまで時間はかけられない。下の層が溢れかえってより強力な魔獣が上にやってくるような事態になれば、破壊力だっていまの比ではないはずだ。そのとき、この封鎖がどの程度の防波堤になるのか、それはわからない。
「絶対の安心……とはいえないけど、いまはこれでやれるとこまでやるしかないよね!」
私は己れの枯れない魔法力に感謝しつつ、ひたすらに階段を埋めていったのだった。
「ああ、メイロードさま、よく、よくご無事で‼︎」
なんとか穴を塞ぎ終わった私が上層へ姿を現すと、涙目のルエラさんが抱きついてきた。
「心配させましたね。大丈夫、なんともないわ。それより……」
と私がテーセウスさんたちを呼んでもらおうと話しかけたとき、もうすでにテーセウスさん、ピントさん、エンデさんがこちらに駆けてきていた。
「ああ、メイロードさま!」
口々に労いや感謝の言葉をかけようとする彼らを制した私は、すぐに対応をしなければならない話を切り出した。
「緊急性があるので、まずは現状を報告させてください」
私の真剣な表情に、皆さん黙って頷いてくれた。
「壁の穴は塞ぎ、この下層へとつながる入り口には五重に《物理結界》の魔法を施してきました。私の知る範囲では、ダンジョンはその層ごとにある意味別世界であり、環境が大きく異なるそうですね。そのため魔物は行き来しないと聞いていますが、ここがそういった普通のダンジョンではない可能性も、いまは考えなければならないと思います」
いまもまだ最下層から供給され続けている膨大な魔力、それにより増え続けている魔物……このダンジョンは危険度を増すばかりだ。
「私の結界にはかなりの耐久力がありますが、それでも多くの魔物に攻撃され続ければ限界がくるでしょう。そこで、この下層へと続く階段をこれから上層に向かいながらすべて埋めていこうと考えています」
「そ、それは、このダンジョンを放棄するということでございますか?」
エンデさんが悲しげにそう言ったが、テーセウスさんがそれを制する。
「このままにしていれば、上層階もわれわれのような速度で攻略はできなくなる。第一、このダンジョンはメイロードさまなしに攻略することは不可能だと、みんなもう骨身に染みて知ったはずだ。ここは私たちの狩場ではない。このまま放置すれば、むしろ狩られるのはわれわれだ」
テーセウスさんは現場を冷静に分析している。実際その通りだ。
「メイロードさまに賛成いたしますわ。そして、なるべく早くこのダンジョンを脱出すべきです!」
「ありがとうございます、ピントさん」
「わかりました、負傷者の手当てが終わり次第、すぐ移動開始の指示を出しましょう」
「よろしくお願いします、エンデさん」
「では、体制の見直しを早急に行い、行軍を開始いたしましょう」
テーセウスさんはそう言うが早いか配下の方たちに指示を始める。
方針も固まったので、私はすぐさま土魔法での階段の封鎖を開始した。今回使うのは土魔法の中でも最も密度が高い《岩石生成》をさらに凝縮したやり方だ。これは強固な岩盤を作れる魔法なのだが、土壁と比べて作り上げるまでの時間がかかる。だから、スピードが求められる戦闘時にはあまり有効ではないが、こうした頑丈な壁が欲しいときにはうってつけだ。
魔法でこの超高密度の壁を生成し続けている私に、周囲の状況を確認してきてくれたセーヤとソーヤが報告をくれる。
「この層ではまだ大きな変動はないようで、魔物の数も前回きましたときと差は感じられませんでした。ただ、壁の移動速度が少し上がり始めておりますので、影響がまったく及んでいないわけではなさそうです」
「そう、ありがとう。皆さんの疲れ具合はどうかしら? 怪我の治療は上手くいっていそう?」
「はい。〝朝日の誓約〟の魔法使いの皆さんはとても優秀です。現状、歩行困難になるほどの怪我人はありません。ただ、疲労に関しては度重なる戦闘と睡眠不足の影響で、それなりに蓄積していますね。みなさん、弱音を吐くようなヤワな冒険者ではないので一見わかりませんが、この状態が続けば進行速度が低下し、撤退が妨げられる危険があります」
「そう……それじゃ準備しておいたアレを配ってくれる?」
「承知いたしました、ではすぐに準備いたしましょう」
指示を出し終わった私は、肩にかけていたサコッシュ風のお手製マジックバッグをソーヤに手渡す。
「それじゃ、よろしく頼むわね!」
そう言って私の秘策を詰めたマジックバッグを託すと、再び私は土木工事のような土魔法を使うことに神経を集中する。
こんな危険なダンジョンは徹底的に封印したいところだけど、そこまで時間はかけられない。下の層が溢れかえってより強力な魔獣が上にやってくるような事態になれば、破壊力だっていまの比ではないはずだ。そのとき、この封鎖がどの程度の防波堤になるのか、それはわからない。
「絶対の安心……とはいえないけど、いまはこれでやれるとこまでやるしかないよね!」
私は己れの枯れない魔法力に感謝しつつ、ひたすらに階段を埋めていったのだった。
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