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6 謎の事件と聖人候補
881 爆発事件翌日
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881
イスという街は、とても噂に敏感な土地柄をしている。
商人たちはどんな些細なことが商売に結びつくかわからないと考えているため、いつも情報収集に余念がない。そもそも、国から発せられる一方的な公告以外に全国一斉に伝えることのできるメディアというものが存在しないこの世界では〝噂〟も立派な情報ツールなのだ。
昨夜の事件も朝には瓦版で一斉に報道され〝サガン・サイデム男爵とメイロード・マリス女伯爵が謎の爆発事件に巻き込まれた〟という情報は、イス中に広まった。
(まぁ、あの場にはたくさんの人がいたからね。それにおじさまと私はイスではあまりにも有名だからなぁ。コソコソ動き回ろうとしたけど、結局あの場で魔法を使ったり、指示出しをすることになっちゃったから、それなりに目立っただろうし……)
私は朝からサイデム商会にきている。
一応現場にいた当事者なので、何が起こったのか知りたかったし、今日はあの〝魔導ランプ〟の製造販売をしている店の担当者から事情が聞けるというのでやってきたのだ。
「噂のせいでマリス商会やイスの自宅には、朝から大量の花やお見舞い品が届けられて、ソーヤたちが対応に追われているんですよ。いや、心配してもらってありがたいんですけど、別に怪我をしたわけでもないのに申し訳なくて」
昨夜から対応に追われて、ややお疲れ気味のおじさまも、私と同様のようで、執務室には大量の花と見舞い品が積み上げられていた。
「お前は〝イスの女神〟だから供物ってとこだろ。俺の場合は、どんな細いつながりでも持っておきたいという連中からの貢ぎものってところだな」
冷徹な商売人であるおじさまは、そう冷静に分析してきたが、私はそれだけではないと思う。
「みなさん心配してくださっているんですから、そんな憎まれ口をきくものじゃないですよ。こんな風に街の人たちが動いてくれるのは、おじさまへの尊敬や感謝があるからじゃないですか」
「へいへい。ありがたいことで、まぁ……そうなのかもな」
街のために日々奔走しているおじさまは、ちらりとあふれんばかりに置かれた花々をみて微笑んだ。
「そうですよ。今回は大きな被害にはなりませんでしたけど、こんな事例があることがわかった以上、早く解決したほうがいいでしょう。とにかく原因究明と対応策ですね」
「ああ、まったく面倒だな!」
おじさまが睡眠不足と苛立ちで髪をぐしゃぐしゃに掻いてしまったところで連絡が入る。
「どうやらストーム商会の者が到着したようだ。行こう」
「はい。その前に男爵様、一応、髪はなでつけてから行ってくださいね」
「ああ、わかってるよ」
「私はこっそり後ろで聞いてますので、尋問はご存分に」
「わかった。しかし便利な魔法だな」
「グッケンス博士直伝ですからね」
おじさまから少し遅れて《迷彩魔法》で姿を消した私が会議室へと向かうと、ストーム商会の人たちが緊張の面持ちで五名座っており、その中でも一番上の方らしい男性が必死の釈明を始めていた。
「ですから、私どもでもこのような事故が起きたことは過去一度もなかったのでございます。故障は事例が何度かございましたが、まさか爆発するとは……もちろん現在、今回の事故の原因を究明すべく、破損したすべての〝魔道ランプ〟を回収し、調査しておりまして……」
「事故と軽く考えているようだが、昨日のあれは〝爆発〟だ。軽症とはいえ怪我人も出ている。こんな事故が起こるような危険なものを、多くの人々が行き交うイスの街の中では使わせられない! 全個回収の上、原因がわかるまでイスの路上での〝魔道ランプ〟使用は禁止だ。いいな!」
「そんな……それだけは、それだけはご勘弁ください、サイデム様!」
滝のような汗を拭きながら、弁明を続けているのは、魔道家電で一躍有名商店となったストーム商会の担当者だ。気の毒ではあるが〝ラーメン横丁〟の名に傷をつけられたおじさまの怒りは凄まじく、原因がすぐに特定できないなら、ストーム商会の商品はいつ爆発するかわからない危険があると、イスで大々的な注意喚起を行うとまで言い出した。
実際、いま現在、魔道家電のどの機構に爆発の原因があるのかわからないのは確かだ。人通りの多い路上に設置されたランプが爆発したら荷馬車が暴走したりする可能性もあるし、オーブンといった家庭で使われる火を扱う商品で爆発が起こったりすれば、火事や火傷もありえ、危険はさらに大きい。それを考えれば、おじさまの注意喚起すべきだ、という主張は正しいし、早急に行われるべきだ。
(原因が特定できなければ、販売停止。原因が特定できても大規模なリコールか……破竹の勢いだったストーム商会には大打撃だね)
私は担当者を気の毒だとは思いながらも、現状では擁護できる要素が見当たらず、黙って話を聞き続けていた。
イスという街は、とても噂に敏感な土地柄をしている。
商人たちはどんな些細なことが商売に結びつくかわからないと考えているため、いつも情報収集に余念がない。そもそも、国から発せられる一方的な公告以外に全国一斉に伝えることのできるメディアというものが存在しないこの世界では〝噂〟も立派な情報ツールなのだ。
昨夜の事件も朝には瓦版で一斉に報道され〝サガン・サイデム男爵とメイロード・マリス女伯爵が謎の爆発事件に巻き込まれた〟という情報は、イス中に広まった。
(まぁ、あの場にはたくさんの人がいたからね。それにおじさまと私はイスではあまりにも有名だからなぁ。コソコソ動き回ろうとしたけど、結局あの場で魔法を使ったり、指示出しをすることになっちゃったから、それなりに目立っただろうし……)
私は朝からサイデム商会にきている。
一応現場にいた当事者なので、何が起こったのか知りたかったし、今日はあの〝魔導ランプ〟の製造販売をしている店の担当者から事情が聞けるというのでやってきたのだ。
「噂のせいでマリス商会やイスの自宅には、朝から大量の花やお見舞い品が届けられて、ソーヤたちが対応に追われているんですよ。いや、心配してもらってありがたいんですけど、別に怪我をしたわけでもないのに申し訳なくて」
昨夜から対応に追われて、ややお疲れ気味のおじさまも、私と同様のようで、執務室には大量の花と見舞い品が積み上げられていた。
「お前は〝イスの女神〟だから供物ってとこだろ。俺の場合は、どんな細いつながりでも持っておきたいという連中からの貢ぎものってところだな」
冷徹な商売人であるおじさまは、そう冷静に分析してきたが、私はそれだけではないと思う。
「みなさん心配してくださっているんですから、そんな憎まれ口をきくものじゃないですよ。こんな風に街の人たちが動いてくれるのは、おじさまへの尊敬や感謝があるからじゃないですか」
「へいへい。ありがたいことで、まぁ……そうなのかもな」
街のために日々奔走しているおじさまは、ちらりとあふれんばかりに置かれた花々をみて微笑んだ。
「そうですよ。今回は大きな被害にはなりませんでしたけど、こんな事例があることがわかった以上、早く解決したほうがいいでしょう。とにかく原因究明と対応策ですね」
「ああ、まったく面倒だな!」
おじさまが睡眠不足と苛立ちで髪をぐしゃぐしゃに掻いてしまったところで連絡が入る。
「どうやらストーム商会の者が到着したようだ。行こう」
「はい。その前に男爵様、一応、髪はなでつけてから行ってくださいね」
「ああ、わかってるよ」
「私はこっそり後ろで聞いてますので、尋問はご存分に」
「わかった。しかし便利な魔法だな」
「グッケンス博士直伝ですからね」
おじさまから少し遅れて《迷彩魔法》で姿を消した私が会議室へと向かうと、ストーム商会の人たちが緊張の面持ちで五名座っており、その中でも一番上の方らしい男性が必死の釈明を始めていた。
「ですから、私どもでもこのような事故が起きたことは過去一度もなかったのでございます。故障は事例が何度かございましたが、まさか爆発するとは……もちろん現在、今回の事故の原因を究明すべく、破損したすべての〝魔道ランプ〟を回収し、調査しておりまして……」
「事故と軽く考えているようだが、昨日のあれは〝爆発〟だ。軽症とはいえ怪我人も出ている。こんな事故が起こるような危険なものを、多くの人々が行き交うイスの街の中では使わせられない! 全個回収の上、原因がわかるまでイスの路上での〝魔道ランプ〟使用は禁止だ。いいな!」
「そんな……それだけは、それだけはご勘弁ください、サイデム様!」
滝のような汗を拭きながら、弁明を続けているのは、魔道家電で一躍有名商店となったストーム商会の担当者だ。気の毒ではあるが〝ラーメン横丁〟の名に傷をつけられたおじさまの怒りは凄まじく、原因がすぐに特定できないなら、ストーム商会の商品はいつ爆発するかわからない危険があると、イスで大々的な注意喚起を行うとまで言い出した。
実際、いま現在、魔道家電のどの機構に爆発の原因があるのかわからないのは確かだ。人通りの多い路上に設置されたランプが爆発したら荷馬車が暴走したりする可能性もあるし、オーブンといった家庭で使われる火を扱う商品で爆発が起こったりすれば、火事や火傷もありえ、危険はさらに大きい。それを考えれば、おじさまの注意喚起すべきだ、という主張は正しいし、早急に行われるべきだ。
(原因が特定できなければ、販売停止。原因が特定できても大規模なリコールか……破竹の勢いだったストーム商会には大打撃だね)
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