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4 聖人候補の領地経営
701 港に現れた賊
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701
駐在の兵士たちがセータイズ港内で非常に危険な賊と交戦中だという報告を聞いた私たちは、すぐに立ち上がった。
「カラックさん! すぐに皆さんに指示を出してください。私もできることをやってみます!」
「わかりました。では、失礼いたします。メイロードさまもご無理なさいませぬよう……」
そう言うと踵を返したカラックさんは、事件現場周辺の地域に駐在している兵士たちを現地へ向かわせるべく《伝令》で指示を出すよう、部下たちに伝え始めた。
(こうした指示は各地のギルドなどを通じて迅速に処理されるので、一番早い連絡方法なんだよね。おそらく、いまの報告も《伝令》で送られてきたんだろうな)
私も私で急いで領主の館へ戻る。
「セーヤ、ソーヤ、すぐにセータイズへ行くわ。危険があるかもしれないから注意してね! あとはお願いね、キッペイ!」
館に戻ってくるなりバタバタと支度をして出ていく私にキッペイはあきれ顔をしつつも、すぐに笑顔になって「くれぐれもお気をつけて」と送り出してくれた。話が早い補佐官がいてくれて、私は幸せだ。
セーヤ・ソーヤとともに私は《無限回廊の扉》を抜けて、海神が祀られているセータイズの港にある祠へと抜けた。祠のある場所は駐在員たちと向かい合う男たちの背後五百メートルほどだ。
男たちの数は六人で、大きな刀を下げていない魔術師らしい者が三名と、しっかり武装した男が三名だった。どうやら、本当に〝もどき〟ではない魔術師のようだ。そうなると、戦闘が起こった場合の兵士たちの危険度はかなり高くなるだろう。
私が出ていけば話は早いのだろうが、さっきまでカングンの官舎にいた私がいきなり出てきたら言い訳のしようもないし、彼らだけで解決できるのならば、それが一番いい。
(問題は、あの魔術師たちがどこまでできて、どこまでやってくるかだよね……)
注視して彼らを見ていると、魔術師たちは前方に《物理結界》を貼り始めた。だが、それを強化できる方法を知らないのか、魔法力が惜しいのか、重ね貼りをすることもなく、それ以上の対策はしていない。
そのとき剣を持った男のひとりが《物理結界》を貼るのに手間取っていた魔術師の頭をかぶっていたフードの上から殴りつけた。だが、小柄な魔術師は、そんなことをされても何事もなかったかのように、倒れながらもよろめきつつ立ち上がり《物理結界》をかけ直している。
(なに? なんで、魔術師が剣を持っているだけの無頼の男にされるがままなの?)
この状況に私は混乱した。《物理結界》が使えるということは、この三人の魔術師たちは魔法教育を受けているはずだ。だとすれば、いくらでも反撃は可能なはずだし、大抵の場合それを恐れて簡単には魔術師に手を出したりはしないものだ。
(実際、駐在の兵士たちも、敵に魔術師がいると知って攻めあぐねているぐらいだし……)
どうにも不可解な敵の力関係に戸惑った私だが、いまはそれよりも事態の収束を考えよう。
あの《物理結界》は前方にしか効力がないし、それでよしとしているところをみると、彼らはまったく背後を警戒していない様子だ。だとすれば、私たちのいる方向から駐在員たちの援護になるような攻撃を密かに行うのが一番手っ取り早いだろう。
「とはいっても、さすがにこの位置だと確実にできるかどうか……《迷彩魔法》を使ってもう少し近づいた方がいいかもね」
私たちはもう少し彼らに近づいて、周囲の様子を探る。
〔駐在の兵士たちは敵の位置を知ろうと斥候を高台に配置してますね〕
ソーヤが、周囲の位置関係を教えてくれる。
〔港には、物見高い者たちも集まってきているようです。長引いて魔法攻撃をされると危険が兵士たち以外へも及ぶ可能性もありますね〕
セーヤが私たちの反対側に位置する人たちの様子を見てきてくれた。
いまの状況としては、駐在の兵士たちが警戒しているのは魔術師の存在だけ。単なる力勝負ならばすぐに制圧可能のようだ。それに斥候が状況の変化をすぐに伝えられる状況なので、変化への対応は迅速に行える。膠着状態が長引けば状況は悪い方へ動き、魔術師の攻撃が不特定多数へと及ぶ激化した戦闘状態になる可能性が考えられる。
そこで私はまず、魔術師の作った《物理結界》に振動系の強い魔法を使って攻撃を仕掛け即時破壊した。私の使った魔法はほとんど音がしない上、ほぼ一瞬で作用するため、まさか私が魔法をかけているなんて誰にも気づかれない。
それに好都合なことに、この《物理結界》は一定の物理ダメージが蓄積するとガラスが割れるような音とともに崩れるので、双方にすぐ魔法が消えたことが伝わるだろう。
この状況では、魔法が消えたことは確認できても、なぜ消えたのかはわからない。兵士たちにはいい状況になり、男たちは慌てるだろう。
案の定、武器を持った男たちは三人の魔術師に詰め寄りながら、もう一度《物理結界》を作らせようとしたので、そのタイミングに合わせて《闇夢》を魔術師にかけていった。
自分達以外の魔術師がいることはまったく想像していなかったようで、なんの対抗魔法も準備していなかった三人の魔術師は、あっという間にその場で睡魔に襲われ倒れ込む。その様子に男たちが慌ててゆり起こそうとするが、《闇夢》の眠りは深くそう簡単には目覚めない。
この状況はすぐに斥候によって駐在兵士たちへと伝えられたようで、そこからは兵士たちが素早く男たちが隠れていた場所へと雪崩込み、ほとんど斬り結ぶこともないまま全員を制圧の上拘束した。それは本当にあっという間の見事な連携だった。
魔術師たちはまだ眠ったままだ。
見た目では、仲間同士の小競り合いで殴られた魔術師たちが気を失ったところを、駐在員と自警団が放っていた斥候が見つけて素早く報告。すぐさま、捉えるために行動し、捕縛成功……という風に見えているだろう。ともかく、けが人もなく賊は捕らえられたので、私は安心して一旦領主の館に戻ることにした。
(仕事を放ってきてるしね。あの魔術師のことは気になるけど、報告待ちかな)
駐在の兵士たちがセータイズ港内で非常に危険な賊と交戦中だという報告を聞いた私たちは、すぐに立ち上がった。
「カラックさん! すぐに皆さんに指示を出してください。私もできることをやってみます!」
「わかりました。では、失礼いたします。メイロードさまもご無理なさいませぬよう……」
そう言うと踵を返したカラックさんは、事件現場周辺の地域に駐在している兵士たちを現地へ向かわせるべく《伝令》で指示を出すよう、部下たちに伝え始めた。
(こうした指示は各地のギルドなどを通じて迅速に処理されるので、一番早い連絡方法なんだよね。おそらく、いまの報告も《伝令》で送られてきたんだろうな)
私も私で急いで領主の館へ戻る。
「セーヤ、ソーヤ、すぐにセータイズへ行くわ。危険があるかもしれないから注意してね! あとはお願いね、キッペイ!」
館に戻ってくるなりバタバタと支度をして出ていく私にキッペイはあきれ顔をしつつも、すぐに笑顔になって「くれぐれもお気をつけて」と送り出してくれた。話が早い補佐官がいてくれて、私は幸せだ。
セーヤ・ソーヤとともに私は《無限回廊の扉》を抜けて、海神が祀られているセータイズの港にある祠へと抜けた。祠のある場所は駐在員たちと向かい合う男たちの背後五百メートルほどだ。
男たちの数は六人で、大きな刀を下げていない魔術師らしい者が三名と、しっかり武装した男が三名だった。どうやら、本当に〝もどき〟ではない魔術師のようだ。そうなると、戦闘が起こった場合の兵士たちの危険度はかなり高くなるだろう。
私が出ていけば話は早いのだろうが、さっきまでカングンの官舎にいた私がいきなり出てきたら言い訳のしようもないし、彼らだけで解決できるのならば、それが一番いい。
(問題は、あの魔術師たちがどこまでできて、どこまでやってくるかだよね……)
注視して彼らを見ていると、魔術師たちは前方に《物理結界》を貼り始めた。だが、それを強化できる方法を知らないのか、魔法力が惜しいのか、重ね貼りをすることもなく、それ以上の対策はしていない。
そのとき剣を持った男のひとりが《物理結界》を貼るのに手間取っていた魔術師の頭をかぶっていたフードの上から殴りつけた。だが、小柄な魔術師は、そんなことをされても何事もなかったかのように、倒れながらもよろめきつつ立ち上がり《物理結界》をかけ直している。
(なに? なんで、魔術師が剣を持っているだけの無頼の男にされるがままなの?)
この状況に私は混乱した。《物理結界》が使えるということは、この三人の魔術師たちは魔法教育を受けているはずだ。だとすれば、いくらでも反撃は可能なはずだし、大抵の場合それを恐れて簡単には魔術師に手を出したりはしないものだ。
(実際、駐在の兵士たちも、敵に魔術師がいると知って攻めあぐねているぐらいだし……)
どうにも不可解な敵の力関係に戸惑った私だが、いまはそれよりも事態の収束を考えよう。
あの《物理結界》は前方にしか効力がないし、それでよしとしているところをみると、彼らはまったく背後を警戒していない様子だ。だとすれば、私たちのいる方向から駐在員たちの援護になるような攻撃を密かに行うのが一番手っ取り早いだろう。
「とはいっても、さすがにこの位置だと確実にできるかどうか……《迷彩魔法》を使ってもう少し近づいた方がいいかもね」
私たちはもう少し彼らに近づいて、周囲の様子を探る。
〔駐在の兵士たちは敵の位置を知ろうと斥候を高台に配置してますね〕
ソーヤが、周囲の位置関係を教えてくれる。
〔港には、物見高い者たちも集まってきているようです。長引いて魔法攻撃をされると危険が兵士たち以外へも及ぶ可能性もありますね〕
セーヤが私たちの反対側に位置する人たちの様子を見てきてくれた。
いまの状況としては、駐在の兵士たちが警戒しているのは魔術師の存在だけ。単なる力勝負ならばすぐに制圧可能のようだ。それに斥候が状況の変化をすぐに伝えられる状況なので、変化への対応は迅速に行える。膠着状態が長引けば状況は悪い方へ動き、魔術師の攻撃が不特定多数へと及ぶ激化した戦闘状態になる可能性が考えられる。
そこで私はまず、魔術師の作った《物理結界》に振動系の強い魔法を使って攻撃を仕掛け即時破壊した。私の使った魔法はほとんど音がしない上、ほぼ一瞬で作用するため、まさか私が魔法をかけているなんて誰にも気づかれない。
それに好都合なことに、この《物理結界》は一定の物理ダメージが蓄積するとガラスが割れるような音とともに崩れるので、双方にすぐ魔法が消えたことが伝わるだろう。
この状況では、魔法が消えたことは確認できても、なぜ消えたのかはわからない。兵士たちにはいい状況になり、男たちは慌てるだろう。
案の定、武器を持った男たちは三人の魔術師に詰め寄りながら、もう一度《物理結界》を作らせようとしたので、そのタイミングに合わせて《闇夢》を魔術師にかけていった。
自分達以外の魔術師がいることはまったく想像していなかったようで、なんの対抗魔法も準備していなかった三人の魔術師は、あっという間にその場で睡魔に襲われ倒れ込む。その様子に男たちが慌ててゆり起こそうとするが、《闇夢》の眠りは深くそう簡単には目覚めない。
この状況はすぐに斥候によって駐在兵士たちへと伝えられたようで、そこからは兵士たちが素早く男たちが隠れていた場所へと雪崩込み、ほとんど斬り結ぶこともないまま全員を制圧の上拘束した。それは本当にあっという間の見事な連携だった。
魔術師たちはまだ眠ったままだ。
見た目では、仲間同士の小競り合いで殴られた魔術師たちが気を失ったところを、駐在員と自警団が放っていた斥候が見つけて素早く報告。すぐさま、捉えるために行動し、捕縛成功……という風に見えているだろう。ともかく、けが人もなく賊は捕らえられたので、私は安心して一旦領主の館に戻ることにした。
(仕事を放ってきてるしね。あの魔術師のことは気になるけど、報告待ちかな)
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