利己的な聖人候補~とりあえず異世界でワガママさせてもらいます

やまなぎ

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3 魔法学校の聖人候補

367 許可証と魔法の鍵

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367

「やっぱり、野菜をもう少し食べて欲しいところですね。かなり、摂取量は増えてきましたが、まだ足りないです。肉ばっかり食べたがる男子は困りものですねぇ。特にハンバーグ食べ過ぎ!」

今日は3度目の食堂改革委員会会議。
前回までの改善で、イス周辺から来た子供たちの食レベルに合わせたメニュー改定を行った。各所の努力もあり、急発進とは思えない品質で、非常に健康的且つ満足度の高い食事が提供できていると思う。

このリニューアル直後から、学生の食欲は明らかに戻り始め、利用率も急上昇。現在の大食堂はかつてない盛況となっている。
その効果は魔法力の回復にも如実に表れており、イスから来た学生たちだけでなく学生全体の魔法力快復率が例年以上の高水準を示しているそうだ。

「遅れていたカリキュラムも、早期に対策ができたおかげで取り戻せそうです。いや、本当にありがとうございました」

チェット・モートさんはとても嬉しそうに私に頭を下げる。

この改革は、生徒だけでなく教授陣を含めた学校当局からも非常に好評。大人の皆さんもすっかり〝イスの味〟の虜だ。ただ困ったことに、私としてはイスの子たちの食欲が戻ったところでこの委員会を抜ける気満々だったのに、モートさんががっちり私の服の裾を握って離してくれない。

「私はグッケンス博士のお世話もしなきゃいけないんですよ。もちろん勉強をしに来たんですから、聴講する時間もしっかり欲しいですし……

そろそろ解放して頂けませんか?」

私の何度目かのお願いに、モートさん、涙ながらに抵抗してくる。

「メイロードさん、どうかそんなことをおっしゃらず、お願いします。事務局にできることならお金でもモノでも何でも融通します。もう、学内ならどんな権力でも使いますから、お願いですから見捨てないでくださいぃー」

実際、モートさんは私の仕事について、とてもボランティアでさせられる内容ではないと、かなり早い段階から報酬について考えてくれていた。そして、思った以上の、明確な実績が出た今では、料理人の10倍の給料で常時居てはくれないかと、何度も口説かれている。

だが、そんなことを言われても大食堂専属なんていうオファーは受けられないし、そもそも私はお金に困っていない。どんどん釣りあがっていく金額に呆れながら、何度も断り続けて今日に至っている。

「再度申し上げますが、私は勉強をしに来た学生なんです。一次的なご相談には乗らせて頂きましたが、恒常的な食堂の改革・改善活動には参加しかねます。それは事務局の方々のお仕事ですよね。そろそろ私を勉強に集中させて下さい」

私の言葉に、一瞬言葉に詰まるも、それでも食らいついてくるモートさん。

「わ、分かりました。もちろん、学生の本分たる勉強の邪魔をすることはできません。ですが……では、せめて3ヶ月に1回、この会議に参加して頂けませんか?そのためのあらゆる便宜はこちらで図らせて頂きます。
それに、全ての研究施設の無制限利用権限と許可の必要な図書資料の閲覧権限も付けます!」

勉強をしに来た私にとって、この2つの権限が行使できるのは、確かに有意義だったのと、モートさんが必死過ぎて気の毒になったので、3ヶ月に一度の会議参加は承諾した。

「それ以外のご相談は、直接研究棟に伺うことに致しますね!」

承諾した後、しれっと、モートさんはそう言った。

(おいおい、待てこら!それじゃ、結局ずっとコミットするのと同じじゃん!)

突っ込もうと思ったところで、魔法学校のどの施設にも入室できる万能許可証と魔法のかけられた鍵を渡されてしまった私は、ついに観念した。
そして、〝絶対に私の名前を外に出さないこと〟を条件に魔法学校の食事改善にずっと関わることになってしまったのだった。

おそらくグッケンス博士から、当局に言ってもらえば、やらずに済むだろうとは思う。

でも、それも違う気がする。これは、もともと私の起こした事業を発端とする問題だった。
博士の手を煩わせていいものではないし、こうして〝報酬〟も受け取ってしまった以上、消極的ながらコミットしていくしかないだろうと、諦めた。

「あのぉ、それで、売店の方がですね。売り上げが悪いらしくて、何か改善策はないかと言ってきているんですが……」

私はキッとモートさんを睨んだ。

「そこまで面倒見切れません!大食堂以外の話は別料金ですし、そもそもやる気ないですから!!」

事務局案件を全部押し付けられてはたまらない。
私は毅然として立ち上がり、逃げるように部屋を出た。

こうして、私の学生生活は、やっとお勉強の方へ舵を切ることができた……はず。

(よし、お勉強頑張ろう!)
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