【書籍化進行中】悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい

たなぱ

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反撃編

カウントダウン 秘密 前編

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放課後、自宅に帰る体で馬車へ乗りジェイス第二王子の指定した屋敷へシャルティ達と向かうと、そこには既におれを空き教室へ呼び出した従者らしき人物が待っていた
促されるように馬車から降りると、目に入るのは蔦に覆われた門と若干古いが趣のある屋敷、庭は綺麗に手入れされており廃屋ではない様子が伺える…


「お待ちしておりました、皆様
人目につかぬようにとの申し付けがあります故、急ぎお部屋へご案内致します」


連れてきてもいいとは言ってたけど、本当に第一王子であるレオンハルト殿下もいるのに一切動じず、淡々と業務をこなしている従者の男?の後に続き屋敷に入る
玄関ホールから見える内装も手入れされており、かなり年季がはいっていて…おれの知ってる知識的には古民家?みたいな屋敷に見える感じだ

シャルティも物珍しそうにする中、どんどん奥へ進む…最終的に従者だと思われる男性に連れて行かれたのは屋敷の一番奥の部屋、扉を開けるとおれたちを呼んだ人物…ジェイス第二王子がソファに座って待っていた


「ようこそ、来てくれて嬉しいよルディヴィス公爵子息、シャルティ嬢…そして兄上と護衛くんだったかな?
うん、ちゃんと目立たない人数で来てくれて助かるよ、さぁ、どうぞ?座って寛いでくれ」


ジェイス第二王子の言葉に従者のような男性が動き、おれたちをソファへ誘導する
有無を言わさぬ素早い仕事に呆気にとられ席へ着くと、従者の男?は手早く飲み物と軽食、ケーキ類を準備し、あっという間に目の前にアフタヌーンティーを行える程の光景が広がった
更には従者であるヘルリにも別に飲み物を準備してくれるあたり優しいのかもしれない?


「いい茶葉が入ったんだよ…暖かい内にどうぞ?」


おれたちに飲み物を進めつつ、ジェイス第二王子は紅茶を飲み始める…シャルティはどうしましょうって顔をしているが、レオは少し不機嫌そうな顔をしていた…
毒は流石に入っていないと思うが…聖女関係の人物から提供された飲食物には若干警戒してしまう
手を付けようかどうしようか……てか、ここに呼ばれた話って何なんだ?と疑問に思っていると、レオが口を開く


「…………ジェイス、回りくどい行動も歓迎もいらない、お前は何を考えている?何故ルディヴィスをここに呼んだ?その理由を今すぐ話せ」

「…………そう怒らないでよ兄上、急に呼び出されて緊張してるかなって僕の気遣いなのに…そんなに気に入らなかったかな?
紅茶も菓子も毒はもちろん怪しい薬も何も入ってないのに…気が向いたら食べて欲しい…けど…
仕方ないね、とりあえず兄上が急かすから本題に入るよ…

どこから話そうか…うん、そうだね…まず、ルディヴィス公爵子息…キミは聖女について僕の知らないことを知っていそうな気がするんだ…
キミだけに話させるのはフェアじゃない、だからまずは僕から話すよ」


そう言っておれをじっと見つめるジェイス第二王子は恐ろしい程優しく笑う
流れるように紅茶にミルクを足し、くるくると撹拌しながら過去を思い出しているようだった



「僕の知ってる聖女について教えてあげる
聖女ルチアはね、薄い水色の瞳が美しい…優しくて可愛らしい性格の女の子なんだ…そして、僕の命の恩人…
かなり前、幼い頃…確か5歳くらいの時だったかな?荒くれ者だった兄上が改心しちゃった辺りから…何でも完璧にできる兄上の影ですべてが足りない王子って言われてて、第二王子っていう肩書が嫌で嫌で…逃げ出したくなった時期があってね

その時、母上がね…王宮の中だけでは見れない世界がある、孤児院への訪問に一緒に行きましょうと言ってくださって…王都の外れにある孤児院を訪れた時、ルチアに出会ったんだ」




そこまで話すと一口紅茶に口を付け、どこか懐かしむように、話し始めた…








…………………………

Side ジェイス




一度ルディヴィス公爵子息と話がしたいと思ってた…ルチアについて、ルチアから兄と呼ばれた彼は僕の知らないルチアを知ってると思ってたから
突然の呼び出しにも関わらず、ちゃんと内緒でこの屋敷に来てくれた事は素直に嬉しい…同席に選んだシャルティ嬢や兄上達もおおよそ予想通りだ

せっかく用意した紅茶とかに手を付けてくれないのは悲しいけど、僕がかばい続けるあのルチアを愛する男が用意したものと考えてしまうと、毒でもって疑って手を付けにくいのはわかる


けど、今はそれでいい…ルチアについて話し始めた僕の言葉をしっかりと聞いてくれる、それだけで
今、この場で僕は隠し事をする必要はない
僕が知りたい情報を得るためには全てを話すべきだから…僕の宝物、ルチアについてみんなに知ってほしかった…


今思い出すだけでも懐かしい…鮮明に思い出せるあの日の出会いの奇跡
僕は荒くれ者の兄上が改心してしまって、第二王子派とか自分が頼んだわけじゃない味方?の大人達に全てが足りないって急に蔑まれて…
なんで僕は王子なの?なりたくてなったわけじゃない!って沢山嫌だと母上に伝えて泣いた事がある

その時、母上が側妃として公務で訪れた孤児院で…自分だって子供なのに、小さな赤ちゃんを抱きしめてシスターからミルクの飲ませ方を教えてもらってるキミに出会った

薄い水色の瞳が宝石みたいにキラキラ輝いてて…まるで天使のようなルチア…






僕の知るルチアを知ってほしい、僕の宝物の話を聞いてくれ











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