【書籍化進行中】悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい

たなぱ

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反撃編

流れるモノ

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日々、徐々に鮮明になっていく前世の記憶
まさか…もしかしたらって内心考えていく内に、ある意味真実に辿り着いた


一つは桃香に突き飛ばされておれは死んだ…かもしれないって事実…無念の死を遂げたおれに神様がもう一度チャンスをくれたのかもしれないって…意味のわからない仮説

桃香が犯人だと…今となってはそうとしかおれの口からは言えない
だっておれはあの時、背中を押されたんだ…そして死んだ、そこからの記憶は無い…
実際の死因を自分で確認することなんて出来ない…ルディヴィスとして生まれ変り思い出したあの日までの記憶がないから…
あの時、あの階段での記憶はそこまでしか無いのだから

事故、だったかもしれない…でもそうじゃなかったかもしれない…けど、桃香はおれを突き飛ばす可能性が十分にある、それだけおれを嫌っていた女が桃香…
普段から癇癪を起こすと手を出してきた桃香…
無視しないでって物を投げてきたっけ…?でも、おれはお前と会話するのが苦痛だったんたよ


そして、もう一つ、それ以上に悲しい事にも気付いてしまったんだ…



「レオの言う通りだよ…桃香はおれを階段から突き飛ばした可能性がある、嫌いなおれを排除する為に…無意識の行動、あいつから言わせてみれば事故だと言うかもしれないけどな…
だから、おれは…自分を囮に…あいつが前世と同じ行動を取るようにして…無視して、煽ってんだ
あいつに取り返しのつかない失態を犯させる為に…公爵子息であり、レオの゙婚約者…ある程度の地位にあるおれが死ぬ事で全てを終わらせるんだ……」


だから、わかってほしい…
お願いだから詮索しないで欲しい…おれがクソ妹の尻拭いをする、前世の妹だったあいつの行いはおれの責任でもあるんだ…頼むからこれ以上聞かないでくれ…


「……………違う、違う!!!!………ルディ!!!違うだろ?!?俺はそこを聞きたいんじゃない、前世で妹に突き飛ばされたかもしれない、それは予想できた、わかった!
けどな?なぜルディが死ぬ事を前提として考えてんだ?!そこが問題なんだよ!!!
他にいくらでも方法があるだろう!?なぜクソだという妹にまた命を捧げるみたいな事……っ!!!

何のためにこれまで影を付けてまで証拠を集めて来たんだ!?俺たちがどれだけお前の事を大切に思ってるか知ってるだろ!?!」


レオンハルト殿下がおれの肩を掴み壁に押し付ける…何を言ってんだって伝わってくる怒りに満ちた顔と力で、おれに全てを吐き出させようとしてくる…


「……………………っ、しっ、てる…知ってるよ!!!
だから、だからこそ、おれが全部終わらせないといけないんだ……!!
あのクソ妹からみんなを守りたい、ちゃんと守りたい…責任を果たすんだ!おれが桃香の行いにケリを付けて…みんなを……おれが…おれが………最後まで守らせてくれよ…頼むから………っ、んん゙っ…っ、ん!?…」


詮索しないで放っておいて欲しい、ちゃんとみんなを幸せにするから、おれを信じて欲しいって言葉を最後まで言わせて貰えなかった


「っん………んんっ…っぁ…んむっ………っは…………っ?」


何が起きてるかわからなかった、柔らかいものが唇を覆って、こじ開けるみたいに…ぬるりと熱いものが口内侵入してきて…おれの中で暴れまわる
舌をなぶられて、吸われて、優しい魔力が流れ込んできて…
それがレオンハルト殿下の舌だと、キスされて口を塞がれたから声が出せないって気付いた時には口内を蹂躙されて息が上がってた


「………っ、はぁ………………っ、レオ、なっ何を…!?」

「なぁ、ルディ…俺はお前とキスもそれ以上もしたいって…昔からずっと…ずっと大好きで…こんなにも愛おしくて…愛してるのに…
ずっとずっと…好きだって、言ってるのに…
ルディが、尻拭いしてさ…自分を犠牲にして守られた未来に意味があるのか?
俺に愛する者を犠牲にして救えなかった未来で一生を過ごせって…そう言いたいのか?

シャルティやマイズ達みんなの気持ち、考えた事あるのかよ…ルディ………」


ボロボロと涙を零しながらレオンハルト殿下はおれを抱き締められた…腕に閉じ込めるように、息苦しさを感じる程抱き締めてくれる…
温かい、心が満たされるみたいなよくわからない感情が溢れてくるような…そんな気持ちになってしまう…………


「………おれだって、みんなの事大切だ…幸せになって欲しいってずっと思ってる…
でも、思ってるからこそ…おれはこのままじゃ駄目なんだ…
レオ、知ってるだろ?
おれはあの聖女の…桃香の前世の兄なんだ…桃香と同じ血が流れた兄なんだよ…?
ごめん、ごめんな…おれ、昔レオに綺麗事言ったと思う…命を大事にしろって、そんな事言ったよな?でもさ、おれはそんな事を言える綺麗な人間じゃなかった…!!!

思い出しちゃったんだ…おれ、桃香となんも変わらない酷い男だって事…愛されるって事を知らない空虚な男だって事…」



そう、思い出してしまった
前世の忘れてた記憶…もう一つの事実…
おれは、昔から見た目が普通で…性格だって根暗で…両親が求める可愛げのある子じゃなくて

あまり干渉されない中、愛されるって言葉の意味さえわからないまま育ったんだ
歳の離れた妹…可愛気がある桃香が生まれてからは居場所を奪われて…影に追いやられてた記憶が脳裏を過る
可愛い妹を愛さない兄、自分を愛してくれないと癇癪を起こす桃香、それを許す両親…

ずっと、ずっと…家から早く出たいと思って、就職を期に家を出て…桃香を愛する両親も、かわいい桃香が好きな親戚も…全部全部嫌いだった
家族も妹も大嫌いで、妬ましくて…消えて欲しい、死んでくれたらって思ってたんだ、おれ


社畜になって生活が荒んでさ、必死に生きてるのに、桃香はおれの所にまた現れた
ボロが出て彼氏に捨てられたりして、両親を上手く丸め込んでおれのアパートに…プライベートにズカズカ上がり込んできたんだ…
その時、思ったんだ…『こいつ、早く死んでくれねぇかな』って…ひたすら考えてたんだよ

あのままクソ妹に関わってたら遅かれ早かれおれが桃香に手を出していたかもしれない…そんな悲しい気持ちを思い出がおれにはある




おれが、桃香を突き飛ばしてる未来だってあった
これから先、あいつと同じ事をする未来が無いわけじゃない…元は血を分けた兄妹…あいつと同じ血が俺にだって流れてる…両親だって綺麗事を並べる人達だったけど、内心どういう考えでいたか分からない
人を愛する事を知らない、愛されるって事がわかってないおれだから今、何もしてないだけで…



人を不幸してでも自らが幸せになろうとする感情が、他者を排除してでもおれだけが幸せになるって気持ちが…おれの中にもあるんだ…




この世界に迷い込んだバグ、乙女ゲームに不必要な危険分子をこのままにしちゃいけないんだよ…
だからおれは消えないといけない、聖女を…桃香を道連れに







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