【書籍化進行中】悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい

たなぱ

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陽動編

隠す者と庇う者

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礼儀を弁えない庶民の出である聖女の言動でルイ王子こ歓迎会って雰囲気じゃ無くなってしまったガーデンパーティ…
その聖女ルチア…彼女はおれの前世の妹、桃香だった

これまでも色々あって、ある程度予測はしていた…もしかしたらって考えていたけど…
実際に陽動作戦の為作ったこのポチ太郎との思い出…ネックレスに付けた宝石をゴミと呼び、男でありながら、乙女ゲームの攻略対象の婚約者になってるおれを見てまさか本当にお兄ちゃんなの?と呟く前世の妹を見て感じたのは…悲しさだった


どうしてこんなにも悲しいんだろうな?
なんで桃香までこの世界にいるのか、前世の世界で社畜生活してたおれが死んだ後何があったのか、全くわからない…
けど、桃香がここに居るって事実はおれと同じ異世界転生したからだと考えると、お前まで死んでさ、両親を置いて何してんだよって…言いたいし
何よりお前、おれが死ぬ前となんも変わってないじゃんって…そう思ってしまう

人の迷惑を考えない、嘘だろうが自分に優位になるならなんでも捏造するし、自分さえ良ければソレでいいって性格…

『可愛いあたしは愛されるべき』


そう、本気で思ってるクソ妹が桃香という人間だ
どうしよう…頭が痛い、気分が悪い
おれはあいつと関わるのが嫌だった、勝手に家に上がり込んで好き勝手生活して…おれのプライベートをぐちゃぐちゃにしたあいつが嫌いだったのに…

なんでこっちを見てくるんだ?
違う、違うな…見てくるに決まってるんだ…おれを、ルディヴィス.サングイスを前世の兄だと疑ってるのだから…


「お兄ちゃんなんでしょ?千景お兄ちゃんなんだよね!?答えてよ…ねぇ、ねぇってば…!!!」



返答を返さないおれが話しを聞いていないと思ったのだろう、聖女が一歩一歩近づいてくる
今、聖女ルチアってキャラクターに転生している事すら忘れているのか?、この場が何処で誰が居るかも忘れてしまっているような…そんな感じで
ねぇ、ねぇ、って言いながら一歩一歩…こちらに来るんだ


来るな、お前…こっちに来るなよ!!!
正直そう叫びたいし、拒絶したい…
でも、まだおれは答えちゃいけない、思い出せ目的を…おれは今日、聖女に探りを入れるために!本性を暴いてやろうって気持ちで陽動作戦をしてるんだろ!?
だから、おれは完璧なルディヴィスのままでいる…クソ妹とか呼んだら駄目、前世を思い出してるとか、聖女の前世を知ってるとか感じさせない為に…


「何を言ってるか理解は出来ませんが…僕はルディヴィスです、チカゲ?という人間ではありません
大丈夫ですか?聖女ルチア…顔色が悪い…何かに動揺しているみたいですよ?」


そう、リジャール王妃仕込みの微笑みで答える
優しい微笑み、優しい声のトーンで
しかし、何も知らないっておれの返答とは裏腹に、聖女がおれに近づけば近付くほど、首元に光るネックレスが聖女にはよく見える筈だ…
しっかりとした宝石を削り出しているが、色も形も前世で見たことがある、ゴミだと罵ったあのアクセサリーがよく見えるだろう?

今はそれでいいんだ…今は





「なんで、なんで、なんで答えないの!?どうして無視するのよ!!!ふざけないで、ふざけないでよ…!!!お兄ちゃんのせいなんでしょ!?
あたしの事邪魔して…!お兄ちゃんがバグなんでしょ!?

ねぇ!!答えてよ!!!こたえ………………………」

「おっと、ルチア…大丈夫かい?具合がよくないんだね…ごめんね気付いてあげられなくて…」



陽動作戦としての結果は得られた、後はどう濁して対応しようか考えていると
痺れを切らしたかのように、聖女は軽く地団駄を踏む、そして苛立ちを込めた大きくヒステリックな悲鳴をあげ、おれに詰め寄ろうとして…そして意識でも失ったのか急に倒れそうになった
もちろん即座に支えたのは第二王子…
先ほどまで何も話さず、動かず、ただ見ていた第二王子だ…ぐったりとする聖女を横抱きにしおれとレオンハルト殿下の方を見て微笑む…そして口パクで何かを言うと、ルイ王子や他の参加者の方へ視線を向けた


「ルイ王子、それから参加者の皆さん…聖女ルチアは慣れないパーティーで動揺しているみたいだ
ここまで場をかき乱してしまい申し訳ない、非礼について僕から謝罪をさせて欲しい、本当に申し訳無かった…

ルチアは気を失ってしまったようだからこのまま僕が連れて帰るよ
………ルイ王子、せっかくの歓迎会に水を差してしまってごめんね…?」

「え、?!………あ、…いや、大丈夫です、はい…お大事に?」



急に話しを振られたルイ王子が焦って答えると、第二王子は聖女を抱えて微笑みながら会場を後にする
そのゆったりとした動きに今の聖女の話はなんなんですか!?とは聞けず…誰も止めるなんて事はせず、ただ見守るしか出来なかった


前に、レオンハルト殿下が言ってた…第二王子は聖女を『ちゃんと見ている』と、今回も『見ていた?』のか?母を救った愛する女が歓迎会で失態を犯すのを見てたのか?
わからない…それに…変な違和感がある…聖女の目、あんな色だっただろうか?




その後…
「緊張して変な事をしてしまう経験!俺にもある!
さぁみんな!せっかくのルイ王子が出てきた歓迎会、楽しまずに終わっていいのか!?」
聖女と第二王子が立ち去った後で、なんとなく変な雰囲気になってしまった歓迎会の会場に、活気を取り戻し、盛り上げてくれたのはガルロ先輩だった

おれとレオンハルト殿下が陽動作戦から切り替えなきゃと対応する前に動いてくれるとは…流石先輩

ガルロ先輩のおかげで場の和やかな雰囲気が息を吹き返し、聖女が不在となった後も歓迎会は続き無事終了した






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