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現実編
前世の話
しおりを挟む普通ならとんでもない仮想の妄想みたいな話…でも、それを信じてくれるみんなの優しさが嬉しくて…
シャルティが義妹で良かったって思い返しながら感動で涙が溢れてやばい事になってた
男なのにボロボロ泣いて、いつの間にかマイケルも増えて、みんなでぎゅうぎゅう抱きしめ合いながら前世の妹になんか負けない、ありがとうって伝えてたら………
ラッジ先生の俺だけ話が見えない、説明しろって感じをひしひしと感じて申し訳なくなってしまった
なんでか左をシャルティ、右をレオンハルト殿下に抱きしめられながらおれはベッドに腰掛けてラッジ先生に事情を説明する
落ち着くハーブティーを持ってきた保険医の先生が何この状況!?って驚いてたりしたけど…全員にハーブティーを配り、椅子も準備してくれて話を聞く空間が出来上がっていた
本来なら何いってんだよこいつって、思われてもおかしくない前世の記憶があるっていう話、この世界が乙女ゲームだって話…それを今から先生2人とみんなに改めて話す…
「…………信じられないかもしれま「大丈夫だ信じるぞ」……うん、…ありがとうレオンハルト殿下…
えっと、こんな話を急にされて信じられないかもしれません…ですが、今回の件…シャルティの魔力暴走と以前あったヘルリの暴走の件…
それに関係する事がぼくの…おれの前世の記憶、前世の妹に起因する可能性があるんです
だから…とりあえず話だけでも聞いてください、お願いします」
そう言っておれは前世の、前世の妹の話をした
今のルディヴィス.サングイスという存在になる前のおれは前世の言い方で社畜と言われる存在で、勤めていた会社にいいように飼われていた、仕事をするだけで日々が終わってしまう精神的にもギリギリの生活を送っていた事
そんなおれの生きていることにギリギリの生活を脅かす存在、それが前世の妹である桃香だ
何故かおれの前世の名前は思い出せないのに、妹の名前は思い出せる…
歳の10程離れた妹、桃香は幼い頃から子役並みに可愛らしく、誰からも愛されていた
そう…甘やかされて育ってしまったんだ…
信じたくないが、本当に顔面の作りは最高によかった…愛嬌もあって、同じ血が流れていると思えないくらい可愛い見た目の妹…
両親におれは昔から可愛げがないって言われて、歳の離れた妹と比べられてた事もあり、桃香が苦手だった
成長しても可愛く美しく…なんでも自分の思い通りになると思い込んだまま…大人になった桃香
愛され甘やかされるのが自分の生き甲斐だと思う迷惑な性格のまま…成長した妹…
大人になっても…それは変わらず、20歳になった妹は一度目の就職で桃香のような自分かわいいを受け入れられない先輩に当たり、猫かぶりでは賄えない社会の大変さで失敗し、ついでに結婚をしようと考えていた彼氏にまで仕事のストレスから猫かぶりがバレてフラれた事件があった
甘やかされてきた人生で初の失敗、初の挫折
その結果…働たらくのが怖い、ただ愛されて楽して過ごしたいと、人生はこれからだろうって再就職を進める両親から逃げるように、県外で社畜をしていたおれの家に転がり込み…勝手にすみ始めたんだ
表向きはお兄ちゃんの所で再就職する為に勉強しますと言って…
両親に対する猫かぶりはとても上手いから…桃香なら次は頑張れる、お兄ちゃんの所で頑張れって…おれが嫌な顔をしていても流されてしまった
妹がいる生活は地獄だ
生活費なんて稼げずに、おれの稼いだ金で遊んで暮らすだけの妹、その時いた彼女に妹がちょっかいを出してきたせいで不倫だと言われてフラれたこともある…おれの唯一の癒しだったのに…
クソ妹と心の中で呼び始めたのもこの頃だ
そこでやっていたゲームが「光の聖女に愛を灯す」という乙女ゲーム…
ここにいるシャルティを悪役令嬢とし、レオンハルト殿下、マイズ、イグニス、ヘルリ達が攻略対象として聖女様と恋に落ちるゲームだった
悪役令嬢シャルティを断罪しするシナリオの
彼女っていう癒しも無くなり、女って存在が嫌いになって…連勤続きでその日を生きる事で精一杯なおれを巻き込み、仮眠を取りたいのに…休みたいのに…それすらも妨害しながら完成度高くて凄いゲームなのだと、一緒に見ないのはおかしいって言い張ってやり続けていたゲーム
正直に言うとふざけんなと、追い出したかった…でも、妹には話が通じなかった
何度も何度もおれは妹に言った、でも無駄だった
「桃香…実家に帰れ、せめて別のアパートを借りろ!おれは仕事で忙しいんだよ…さっさと再就職して自立しろ」
「は!?!何いってんの!!お兄ちゃんの為にここに居るんだよ?寂しいでしょ!30歳すぎても独り身でほんとに哀れ~かわいそー!
こんな可愛い妹が住んであげてるんだから感謝してよね?
あ、今日はレオンハルト殿下のサブストーリー配信日なの、カード貸して!買うから!」
「夜勤明けなんだよ…夜からまた仕事があるんだ…今は寝な……………」
「なんで寝てるのよお兄ちゃん!本当にムカつく!あたしが一緒にお買い物行こうっていってるんだよ!?信じらんないこんな可愛い妹いないのに~!ねぇ、早く起きてよ!服買って服!駅前の新店に行きたいの!早く!ねぇ!」
一言言えば十倍になって返ってくるかのような…そんな妹だった…
おれが夜勤含めて14連勤して死んだ日も、朝から妹はおれの邪魔ばかりして…階段から足を踏み外した時、階段の上にいたのは妹だった気がする…
そんな話の通じない、自分が愛されて当然の妹がこの世界の聖女に生まれ変わっている…
その事実がおれは恐ろしい
妹が聖女様じゃなかったとしてもおれは、前世を思い出し、乙女ゲームの世界だと気づいた時からシャルティを断罪から救い、みんな幸せになれる未来を願ってこれまで行動してきたんだ…それも全てラッジ先生達に話した
「おれの前世の妹が…何を目的にしているかはわかりません…でも、シャルティやヘルリにした事を想像するにあいつは…前世の妹は乙女ゲームのヒロインとして愛される事を何よりも望んでいる…
その為なら、何でもしでかすと…思います…
これが聞いて欲しかった全てです」
話し終えたおれを両サイドのレオンハルト殿下とシャルティが強く抱きしめてくる…それがとても心強かった
先生方、全部信じてくれとは言いません
でも…あの聖女様は本来の素晴らしい考えを持った聖女様じゃないことだけは分かってほしい…
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