【書籍化進行中】悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです！こっちに来ないで下さい

乙女ゲーム編

守るために

翌日、早めに学園に登校すると聖女様に関しての情報が2年生のクラスまで流れていた
昨日両親が言っていた第2王子の母…アデリーナ様を奇跡の力で救ったと言う話が…
現在未成年である聖女の行動等は秘匿される傾向にあるって話だったのに何故…？ある種の違和感を感じながら、シャルティと共に皆が登校して来るのを待つしかなかった


暫くして若干暗い顔をしたレオンハルト殿下が登校し、同じく若干暗い顔をしたマイズも来て二人で深いため息をついている…イグニスだけ元気におはようと言ってるのがなんだか怖い

授業が始まるまでの短い時間、レオンハルト殿下とマイズが小声で暗い顔の原因を教えてくれたが…それは昨日両親が危惧していた事に近い状況だった


「ルディヴィス、シャルティ…今日登校して何となく感じているとは思うが…俺の腹違いの弟…第2王子ジェイスが聖女に接触した
昨日…アデリーナ妃が聖女の力で奇跡的な回復を見せた事でジェイスだけじゃなく、第2王子派が聖女を推してきている…聖女の性格も内面もあれだが、本当にその能力だけは本物だったみたいなんだ…」


「そうなんです…これまでも小さな奇跡は起こしていましたがここまでとは…
教会関係者も昨日、アデリーナ様が聖光魔法により治癒される現場を確認し、奇跡を見たと言っています
その代で聖女の能力に差がありますが、能力だけでいったらあの聖女は最高クラスかと…非常に不味いですね…」


今日、聖女の力が生徒にも知れ渡っているのは昨日、病で臥せっていたアデリーナ様が聖女の力で全快し、その場で第2王子であるジェイス殿下が聖女を讃え第2王子派の重鎮が素晴らしいと騒ぎ出してしまったからなのだと
国王陛下としても自身の妻が全快したのは喜ばしい事だと聖女を労ったが、第2王子派はそれ以上の反応を見せている


この学園を乙女ゲームとしてしか認識してなかったから忘れていたが、第2王子…そう言えばレオンハルト殿下と同い年だ…数ヶ月レオンハルト殿下が年上だが、側妃から生まれた彼もまた今年学園に入学していたのか…

そんな第2王子が昨日から聖女と交流を望み、アデリーナ妃の全快を祝って夜は急遽晩餐会、今朝も聖女をレルム伯爵家まで迎えに行ったのだと教えてくれた



「父上が言っていた第2王子達に注意しろって言葉が身にしみたよ…
ルディヴィス、シャルティ…今日の放課後も話し合うが…これからは絶対に一人になっちゃ不味いと思う…聖女以外にもあの虚言や事実無根の被害を言いふらす奴が増えていく可能性しかないからな」

「虚言だとしても、多数からの意見を強要されたら恐ろしいですわね…」


おれの服の裾を握るシャルティの手が少し震えているのがわかる
乙女ゲームにこんな展開は無かった筈だ…無かったよな…？色々な分岐があってエンディングを迎えるまでの期間も長いもの短いものバッドエンド…とかあった気はするが、クソ妹が見せてきた物しかわからないおれの知識じゃこの展開にどう対応すればいいかわからない…でも…


おれたちが無実だと言う証拠だけは得ておきたい



「イグニス、事件現場収録用の魔石、おれたち人数分とりあえず作るよ…あとレオンハルト殿下に仕えてる影の人達の分も
皆、父様が言うように映像記録で無実を証明する物を常日頃から身につけておいたほうがいいかもしれない…レオンハルト殿下、影の方にも渡すことはできますか？」


「ああ、第三者視点の映像も必要だと思うから渡すことは出来るが…そんな簡単に映像記録を行えるものを作って配れるほどあるのか…？」



ここは異世界、乙女ゲームであるため食べ物など近しい物は多いが物は違う、中世的な舞台になっていておれが住んでいた世界の常識も機械もスマホやカメラも無い魔法の世界
映像を記録する物もおれが知ってる物は無い
この世界では大型魔獣から採れる魔石に映像を封じ込める…そんな手法が一般的だがかなり高価になる

それを前世の知識を活用し人工的に魔石を作り安価に記録装置をイグニスと作っていた
もしかしたらシャルティを守るために映像記録が必要かと泥団子宝石版を作ってた頃から内緒で試作を繰り返していたものを活用する



事件記録用魔石、自分を冤罪から守る為の映像記録魔石だ、イグニスが共同開発してくれた事により装飾品サイズで作成出来るようになったし、撮影した映像は収録用魔石に溜め込める

今後、直接聖女や第2王子が接触してくる可能性があると考えるとプライバシーなんて言っていられない…
自らの行動を記録するという意味で必要だろう
詳しい対策は放課後、サングイス公爵家で父様達を含めて話そうと授業の準備に戻った


その日は一年生がシャルティへよくわからない視線を向けることも無く、第2王子や聖女が乗り込んてくるなんて不思議な状況も起きない静かな1日…
レオンハルト殿下達も情報収集の為、敢え聖女へ会いにはいかなかった

これからどのように事態が動くかわからない、その中で皆、作戦や対策を各々練りながら放課後まで過ごしていたような気がする


休み時間にイグニスと事件映像記録用の魔石を作りながら…おれの中でも、聖女へのある対策が浮かんでいた…