【書籍化進行中】悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい

たなぱ

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乙女ゲーム編

聖女の涙

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Side レオンハルト





ルディヴィスと帰りたい、遊びたい、勉強したい気持ちをぐっと堪え…初対面で感じた違和感を調査するためにマイズとイグニスと共に聖女様へこっそりと探りを入れつつ、交流を図り始めてどれ程だろうか…

こっそりと言いつつ、俺から接触したことで良からぬ噂や誤解を生んでは元も子もないため、事前に父上と母上には勿論説明し、しっかりと誓約書にも記載し更には状況の記録と証拠の為に、王家の影を何時もより多く付けてもらっている
ルディヴィス以外を婚約者にしたい訳では無い事、これは本当に調査であることを念には念を入れ定期的に報告も欠かせない

ついでにマイズとイグニスにもちゃんと王家の影を付けてある…それ程初対面で何かを知ってるような異様な雰囲気が恐ろしかったんだ…



この調査計画を話した時、父上と母上からは青春してるな?なんてよくわからない反応をされたが、了解は貰えた

実質保護された聖女様を疑うような行為だ…もっと反対されるか怒られるかとも思ったが、そうはならなかった
両親2人にも学生時代に特別な能力を持ち、それが良からぬ妄想へ向かってしまった存在がいたのだと言う…聖女様は確かに特別な存在ではあるが、だからといって何か事件を起こしても全てが許される訳では無いと…


「恐怖や嫌悪感は何もないところからは生まれない、気になるなら周囲に迷惑をかけない程度に、調査は好きにしなさい」



微笑みながら母上を抱き寄せ笑う国王陛下である父上は昔を思い出すと言っていた
話し始めると惚気しか言わない2人の過去に何があったのか…聞きたいが惚気が大量にセットで来るため遠慮する

最後に父上は言った、俺の一つしたの側室の王子2人…第2王子と第3王子の動きには注意しなさいと

この国は平和な良い国だとは思うが、国を支える者たちの意思は一つじゃない…
異例だと男の正妃を認めたくない第二妃、第三妃の一派を含め、昔からある意味混沌としていた事を思い出した




マイズも大司教様には今回の違和感の事を伝え調査していると言っていた
教会関係者が女神に声を届けられる聖女様を疑う…大切な存在ではある筈の乙女を疑うのは心苦しいが、自身の闇の魔力を拒絶しただけでなく…何かを知っている聖女様には裏があるのでは?と

女神の愛し子の風貌をしているマイズが感じる違和感には、何か理由があるとこちらも了解をくれているらしい



イグニスはイグニスだから問題無いだろう
お抱え商人になるとかでルディヴィスと2人で楽しく魔具開発を行っているのはズルいと思う、本当にズルい
今回聖女に意図的にプレゼントしたアクセサリー類も実はその魔具だ…盗聴器とかでは無く防犯魔具の一つ、親が子に持たせることを想定した緊急通信対応の素晴らしいモノ
子機を子に持たせ、親機で受信する仕組みらしい…つまり、万が一誘拐や事件に巻き込まれた時に子の居場所と周囲の音を親機が知る事ができる…

使い方を誤れば盗聴ギリギリでまだ製品化の目処は立っていないそれを、特別に今回イグニスに作らせ使ったのだ、万が一だから!今が万が一の状況だから


計画を開始しある程度仲良くなったタイミングでアクセサリーを渡し、一人が聖女と接触し2人で万が一を確認する…好きでもない怪しく怖い女に愛想をそんなこの国の法ギリギリを攻めた調査を続けた…


その結果は大きかった



聖女ルチアは俺達の知らない何かを知っている
心の中で思ったことが口に出るタイプなのか、調査する内に多く同じ単語を耳にすることがあった



「シナリオ」
「ハッピーエンド」
「イベント」
「好感度」



そして…
「悪役令嬢、シャルティ.サングイス」



悪役令嬢という言葉に心当たりは無い…しかし、悪役という言葉を使う場合、いい意味で無いことは確かだろう
聖女である彼女はシャルティに何かをしようと言うのか?だが、レルム伯爵家に保護されたとしても聖女とシャルティの面識は無かったはず


「なぁ、二人とも…シナリオもイベントも意味がわからないけどさ…この悪役令嬢のシャルティってどういう意味だと思う?」

「シャルティが何かあの女…聖女にするという事…だから悪役令嬢と呼ばれる…そう考えるのが文字的には正しいですが…
わかりません、まず…シャルティが人を傷つける子じゃない」

「おれもシャルティ嬢が悪役令嬢?になるなんて…考えもつかないです…
もう少し調査してみますか…?あのやばい女の香水苦手で苦手で最近鼻が効かないからやりたくないですが…」


3人で深いため息をつく
ルディヴィスやシャルティに相談…相談したいが本当にあの女と接触して欲しくない…
相手が聖女様だという事からも、これ以上公にしていい調査じゃない…
だが、こちらが少し接触しただけで馴れ馴れしい態度が更に強くなり、スキンシップも多い…とんでもなく多い、多すぎる
適度に上手く躱しつつ甘く強い香水の匂いと戦う調査の日々ははっきり言って苦痛だ…

苦痛だが、後には引けなかった









「レオンハルトくん…実は…相談したいことがあって…」


「聖女様…そんなに悲しい顔でどうしたんだ?一体何があった?」


「…………っ、ううっ………シャルティ様が………あたし、シャルティ様から最近睨まれてて…
勘違いだったらいいんだけど…でも、すごく恐ろしい血の色見たいな目で睨まれて…どうしたらいいか…助けてレオンハルトくん…!!」




大粒の涙を流し俺に縋る聖女様は、血の色した瞳に怯え、あまりにも悲痛な声で泣く

ああ、この女にはサングイス公爵家特有の美しい赤い瞳が血の色に見えるんだな…と、何処か悲しくなった











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