60 / 171
乙女ゲーム編
マイケルのため息
しおりを挟む俺の名前はマイケル.ベルドット
一応ベルドット侯爵家の五男という経歴を持つ、自由気ままな冒険者生活を夢見た男だ
貴族なんて自由じゃないと家を飛び出し、五男くらい居なくてもどうとでもなるだろうと市街で冒険者登録して地獄を見たんだ
人に仕えられて生きていた俺は、何も知らなかった
見た目だけで何も取り柄もない愚かな男だった事に…
冒険者に登録してすぐ、速攻騙され、悪そうな奴らに捕まり、身ぐるみを剥がされて魔物の餌にされそうになった時その事実を知って…もう駄目だと諦めた瞬間………俺は運命的な出会いを果たしたんだ
そんな絶望的な状況の時に救ってくれたのがサングイス公爵家当主であるロッグリット様
目の前で俺を喰らおうとしていた魔獣の群れを炎で焼き払い、文字通り身包みほんとに剥がされて裸の俺に毛布を掛けてくれた…
「ベルドット侯爵が心配していたよ?危なかったね…探し出せて良かった、大切な家族を失うのはとても辛いことだからね…
自由に暮らしたいなら私の家で従者になりなさい、ベルドット侯爵からも既に許可は得ている」
(か、かっこいい……!!!)
父上にも撫でられたこと無いのに、成人して初めて頭を撫でらる経験をしてしまった俺はロッグリット公爵様にとんでもなく憧れ、従者にしてくれるという言葉に即座に頷いた
この国の宰相であるロッグリット公爵様は文武両道、父上と昔から交流があり、冒険者になると家を飛び出した俺を探して見つけられずに泣きつかれたんだよとサングイス公爵家に向かう馬車の中で教えてくれたのは今でも思い出せる衝撃だった
家族に心配をかけた悲しみと、自分の愚かさを実感し、ベルドット家でちゃんと謝罪して…あの日から俺はサングイス公爵家に仕え始めた
今では全力で骨を埋めるつもりでいる、従者生活は素晴らしく最高だからだ
そんな俺も今年33歳になる…
俺の見た目は多く見積もっても20歳だろう、自分で言うのもなんだが顔と肉体だけは最高に整っている
おじさんだと年齢を言わなければバレないほどに、だ…
そんな俺の長年の悩み、「女性に優しく最高の紳士であれ」という、九人の奥様を抱えた過去の大旦那様から始まったベルドット侯爵家の家訓が染み付いてて…本当は女性苦手なのに女性に優しくしてしまう事である
この顔を相まって、すげー声を掛けられるが本心は嬉しくない、しかしベルドットの血が優しく丁寧に接しなければと騒いで実際接してしまっているのだ
結果、告白もされるし既成事実を求められ、宿に連れ込まれそうになったこともある…怖い怖い怖い
俺以外の兄弟は皆、女性に優しくしてもそうはならないのは女性が好きだからだ…でも俺は女性が好きじゃない…
今思うと、その点が自由じゃなくて…だからこそ家から逃げ出したかったのかもしれない
過去にロッグリット公爵様にサングイス公爵家のメイド達も怖いかもと、離したが…優しくするほど柔じゃなかった…
男女それぞれ性格イケメンな武闘派だったのだサングイス公爵家!!女性は可愛いじゃない、かっこいいと思ったの初めてだった
そんな家の一員になれて本当に良かったと思う
そんなこんなで…時々、ベルドット家の血が騒ぎ野生の女性に優しくしてしまい、ああやらかしたとイケメン対応を心がけているおじさんに、最大のピンチが訪れている…
「あの、騎士様…!クッキー焼いていたんです…食べてください!
あ、次のお休みいつですか?あたしとお出かけなんて…ううん、市街案内して欲しいなって…」
入学式の日、思わず血が騒いで助けてしまった聖女様がとんでもなく苦手な女の分類だった
手作りクッキー…それはせめて友人になってから食べるものだ、キミと俺はまだ顔見知り未満!怖い!
お休みに市街案内ってキミ元々市街で生活してたよね!?!なんで俺に話しかけてくるかな…おじさんなんだよ?おじさん…この状況もなんか犯罪臭してすごく嫌なのわかる?
なんて心の叫びは届かない…
「申し訳ございませんお嬢様、職務中ですのでまた次回の機会に…可愛らしいクッキーは私の様な、しがない従者ではなく、恋する相手にどうぞ
では職務に戻りますね、良い日をお送りくださいお嬢様」
足に風属性を纏わせ、長い脚こういう日ありがとうと心の中で感謝しつつ全力で足を動かし立ち去る
ベルドット侯爵家の血!!!!余計な事をするなー!してるの俺だけど!
聖女様、王太子殿下に大司教の孫にイグニスくんに!選び放題青春交流会?してるんじゃないの?なんでおじさんに迫ってくるかな…放っといていいんだよ本当、本当!!
実は33歳で…なんていっておじさんに迫られましたなんて言われたらサングイス公爵家に骨を埋める計画にヒビが入っていまう
やはり何気なく適度にベルドット侯爵家の血と戦うしか道は無いのか…
何処から湧いてくるのかわからないが、急に現れる聖女様怖い…おじさんの心臓を破壊しに来ている気がする恐怖だ、イグニスくん達が言ってこぇえ女って絶対聖女様じゃないの?なんか今は楽しく交流会してるけどさ?
なんかその交流会にも裏がありそうで、一応婚約者候補なんだよといつも笑ってるルディヴィス様やシャルティ様達に報告するべき事じゃないと黙っているが…
「マイケル…大丈夫?なんかいつものキラキラがショボキラになってる…これ、疲れ取れるから良かったら食べて休んで…?」
「まぁ、ほんと…マイケル大丈夫ですの?私のお菓子も食べて?今日はゆっくり休んでくださいまし」
護衛に戻り、ヘルリに小声で女怖いよと言うとわかると返ってきて…でもシャルティ様とペトラ様とサングイス公爵家みんなは別とか言ってたら…なんか、落ち込んだ俺に気づいた主達…
あれよあれよと席に座らされ、おれ達の主が甘やかしてくれる
ルディヴィス様もシャルティ様も優しさの塊だろうほんとさ…!!!
貰ったお菓子と疲れが取れるという美味しいドリンクをもぐもぐすると心がほっこり癒される…
お二人…もしも、おじさんが聖女様に迫られて?困ってますって相談乗ったら助けてくれますか…?
4,040
お気に入りに追加
6,966
あなたにおすすめの小説

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。


俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします
椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう!
こうして俺は逃亡することに決めた。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる