【書籍化進行中】悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい

たなぱ

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学園編

正しい事

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悪役令嬢を救いたい
一言文字でしか表情されない悪役令嬢の兄であるおれだからこそ、シャルティが断罪される未来になんてしたくないとこれまで色々してきた…

その事に後悔はない
後悔なんて無かった筈なのに…どうしてこんなにも胸が苦しいんだ…


現実、シャルティは幸せに暮らしてる、美しく可憐な公爵令嬢として悪役なんて言葉似つかわしく無いほどに未来が変わったと言ってもいい

けど、その幸せに変わった未来でイグニスは置き去りにされた…
悪役令嬢の騎士になる事が幸せか…非道な行いを見てきて断罪を決めてるから幸せではないと思う、でも…
今、…本来ある筈だった未来をおれに奪われたイグニスは幸せなのか…?無意識とは言え、実の兄に命を奪われそうになっていたイグニスは幸せなんかじゃない…だろ、どう考えたって


おれの行動でシャルティは勿論、レオンハルトもヘルリもマイズも…みんな笑ってくれてた…楽しそうに一緒に過ごしてくれてた…けど、それは本当に正しい幸せな事だったのか…?
幼少期がそんなに描かれてないからって、おれよ独りよがりで本来の流れを歪んだ方向へ変えられて…結果得られてるその笑顔は本当に幸せなのだろうか…




気が付いたら随分遠くまで走ってきてた…ここは学園の校舎裏の端…人もあまり来ない場所…だ

溢れ出る涙が止まらない
おれのしてきた事が正しかったのかわからなくなってしまったから…これからある聖女に救われる未来すら変えてしまった可能性があるから…

ごめん、ごめんなみんな…
もしかしたら…お前らのある筈だった幸せな未来をおれ、奪ってるかも知れない…もう手遅れになってるかも知れない…
イグニス、ごめんな…おれがシナリオもよく知らないのに変に出しゃばったせいで…選べた筈の未来を奪ってごめん、何年もしなくていいつらい思いをさせたかもしれない…ごめん…
それだけじゃない…おれがレオンハルト殿下の婚約者候補になったために、他の令嬢も令息も婚約者を決めないで居ることもおれが起こした影響だ…
浅はかな考えで行動した結果がこれかよ



「ぅ゙う………っ…………ごめん、ごめんなざい…………おれ、おれが…………みん゙なを不幸にじでる………うぅ゙ぁ゙………っ…………ごめんなざい…………」


泣いたって解決しないのに、正直に謝って伝えたとしても此処が乙女ゲームの世界だなんてわかってもらえる筈が無い

何もしなければシャルティが不幸になる、それは嫌だ…でも、皆が不幸になるもの嫌なんだ…わがままでごめん、自分勝手でごめん…不幸にしてごめん…

ただ泣くことしか出来ないおれは、あの日、なんの為に過去の記憶を思い出してしまったんだろう
それすらもわからなくなってきた…







「ルディヴィス!!え、ちょっと、大丈夫…!?」




聞き慣れた声に身体が震えたのが分かった
いつもなら嬉しいはずなのに会いたくなくて…罪悪感しか湧いてこなくて…無意識に隠れようと闇魔法で煙幕を出して、マイズに止められた

おれのおまけ程度の力よりも強大なマイズの闇魔法は、おれが出した煙幕なんて一瞬で飲み込んでいく
黒い手足のように影を操るマイズはあの日、自分の闇魔法を嫌ってたマイズじゃなかった



「…………ルディヴィス、たぶんだけど…キミ、私と出会った時に泣いてた…あの頃の私と同じ顔してると思う…
ねぇ、何があったの?それは親友の私に話せない事なの?ルディヴィス、キミが言ったんだよ…一人で悩むなって

だから…今度は私に相談して欲しい…………」



あの日、おれが泣いてるマイズをあやしたように…今度はマイズがおれを抱き締めて背中を…頭を撫でてくれる
いつの間にかおれと同じくらい身長高くなってて美少女が美人になってたマイズが大丈夫だよって、背中をさすってくれる…こんなおれを、お前は許してくれるのかな…?



ぽつりぽつりと言葉を選んでマイズに伝える
おれの行動で未来が変わってしまったかもしれないと、それで人を不幸にしたかもしれないと…
乙女ゲームの事は言えない
信じてもらえるかなんてわからなかったから
あの日のおれみたいにマイズは頷きながらちゃんと聞いてくれて嬉しかった


「………っ、だから、だから…ごめん、おれはマイズ達に合わせる顔がないんだ…」



「うん、うん……話してくれてありがとう
ルディヴィスの気持ちはわかった、でも…合わせる顔がないとか、それを決めるのは私たちだ…

ねえ、ルディヴィス…初めてあった時キミは私に個性の話してくれたよね?その言葉で私は本当に救われたんだ
家族から蔑まれて心が壊れてしまいそうな時にルディヴィスが私を救ってくれた…それは不幸な未来なのかな?
私にとってルディヴィスとの出会いはこれ以上ない幸福なんだよ?

不幸かそうじゃないか、未来がどうなるか…それを決めるのはルディヴィスじゃない、私達個人が決めること、きっかけはあると思うけど、それぞれ自分で選んで決めてるんだ」



マイズはおれの耳元でそう言ってくれる
自分で選んだと、きっかけはあったとしても自分で決めた事なんだと…
未来は誰にもわからない、誰かが何かをしなくても日々変わるかもしれない、変わらないかも知れない

全て自分で選択して決めるのが未来だと…
イグニスも家を出ることだって出来た筈、それでも残っているなら何か自分で選んだ未来があるんだと教えてくれた


そうか…おれはある程度この乙女ゲームの世界で結末を知ったつもりでいたんだ
結末なんて…未来なんて本来誰にもわからない、自分で選んで切り開いてく物なのに…おれは選択肢を啓示する神にでもなったつもりで居たのだろうか…?

おれは神じゃない、より良い未来の為にきっかけを模索するただの人間だ…皆もまた未来を自分でより良くしようと模索するただの人…

気が付くと涙が止んでいた
誰かに抱き締めてもらうなんて久々で、相手が美人のマイズって事に冷静になったらなんか申し訳なくてドキドキしてしまった



「ごめん、ありがとうマイズ…ぼく、変な事で頭がパンクしてたみたいだ…もう大丈夫…心配かけてごめん…」


「うん、大丈夫…やっぱりルディヴィスは笑顔でいてくれたほうが私は嬉しいよ
あ、初めて見た泣き顔も可愛かったけどね」



そう言って微笑むマイズはやっぱり中性的な美人で…攻略対象者顔が良すぎて怖いよとマイズにつられて笑ってしまった






イグニスとちゃんと話をしよう
勝手に判断して思い込むんじゃなくて、ちゃんと本人から聞かなければいけない







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