【書籍化進行中】悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい

たなぱ

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幼少期編

社畜は犬を撫でる

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おれの中でシャルティを、悪役令嬢の犬から守る計画が決まった、メイドを下がらせ改めて庭に落ちてきたという少年を見る



国家魔術師騎士の息子、ヘルリ.ラジエ



成長すると攻略対象の中では一番身長が高く、年上攻略対象になる彼の幼少期はこんなにも小柄だったのかと思うほど、ベッドで眠る幼い少年は小さく儚く見える

見た目こそゲームでの攻略対象の面影を持って入るが、下手をするとシャルティよりもか弱く見えてしまう…あまりにも細い手足…血濡れを洗い流すとわかったあばらの浮き出た身体…そして顔色も悪い…


彼は自分の犯した罪を悔やみ、家に帰ることもできず悪役令嬢の従者として仕える…
2度と人狼化の魔法を使いたくないと隷属の首輪すら受け入れて従者という名の犬として飼われるらしい…なぜ、ゲームの中のシャルティはそんな飼うなんて事をしたんだろう…
あのゲームは悪役令嬢サイドの話は本当に少なく攻略対象の過去エピソードで軽く触れるだけだった
サングイス家には父様も母様も有能な使用人もいる…本来おれが駄目な義兄だったとしても悪役令嬢を大切にしてくれそうな人は多かった筈なのに…

従者に鞭を打ち笑うスチルは何故起きてしまったのか…それはおれにはわからない…
おれにできるのは、現実に生きているこの世界でシャルティを悪役令嬢にしないこと…それだけだ



「うっ……うう…………やだ、……………やだよ……………助けて……………やめて…………」



急に唸りだしたヘルリは険しい顔で助けてと言う…嫌な夢でも見ているのか…?
人狼化魔法がどんな物かわからないが相当身体に負担が掛かるものなのだろうか…

涙を浮かべ苦しい寝言が続く、表情は険しく幼い少年が苦しむ姿は可哀想になってくる…
おれはベッドに近寄り、シャルティがおれにしてくれたように彼の手を握り自分の頬に当てる


「何もしない、何もしないよ…大丈夫……
ヘルリ…君はどうして此処へきたの…?シャルティに助けを求めたのはどうして…?

目が覚めたらゆっくりでいい、教えてほしい
ぼくは君の敵じゃない…この場所は君を害することはないんだよ…」


空いてる手で少し傷んだ茶色の髪を撫でてやる
害するつもりが無いのは本当だ…むしろ悪役令嬢の犬にならなければ有能な本当の従者になれるかもしれない…
それはシャルティをおれと一緒に守る事も出来るのではないか?と色々想像が湧いてくるんだ…

万が一、犬にならなければいけないゲームの強制力でもあるなら…可愛い我が家の犬として、シャルティを不幸にする暇が無いほど幸せにしてやろう
土佐犬にも認められたブラッシング術も披露…する毛は頭しかないな…



頭を撫で、手を握り続けると…段々とヘルリの苦痛に満ちた顔は穏やかになっていく
父様と母様が帰宅したら、あんな状況になるほど逃げてきた理由とかも調べて貰おう







………………
…………
……




30分ほどヘルリは深く眠り続けてから目を覚ました

ぱちりと開いた目の瞳はおれの知っているヘルリと同じ薄黄緑…攻略対象者で間違いないだろう



「……………ここは……ボク…なんで………?…えっ?、あ、あなたたち…だれ………?」


弱々しい声が部屋に響く
やや動揺しているのは、おれがヘルリと一緒に居るのをシャルティが見に来て今では一緒に手を握り、頭を撫でながら起きるのを待っていたような状況だからだ

両サイドから手を握られ頭を撫でられてたらそりゃ驚くだろう

メイドや執事からしたら不法侵入者に公爵家の子供を近づけたくはないだろう…それを可愛そうな孤児かもしれない自分たちで助けたい…と、しっかりと口説き伏せて現在に至る
領地の視察に向かっている父様と母様はまだ帰宅は先だ…帰宅したら従者にしたいという話が出来るほどにとりあえずは打ち解けないといけない


「目が覚めてよかった…ここはサングイス公爵邸だよ?ぼくはルディヴィス、こっちは義妹のシャルティ
うちの庭に倒れていたのをシャルティが見つけ、何 怪我やか事件に巻き込まれたのかと手当をしていたんだよ?体は大丈夫…?」


「痛い所ないですか?大丈夫…?お庭でルティに助けてって言ってたから…」


両サイドから撫でつつ心配していること、ここは敵意のあるものが居ないという事をアピールしてみる

シャルティは流石だ、おれが何もしなくても超絶かわいい顔でヘルリの頭をなでなでしながら一緒に心配するのだから、可愛いから生まれる安心感の破壊力が凄まじい
………ちょっと何を言いたいかわからなくなってきたが、両サイドから敵意ないよ酷いことしないよオーラを全身で浴びたヘルリは涙を流しておれたちに助けを求めてきた


「ボク…ボク…………ぅ゙ぁ゙あっ……たすけで……おねがいします…帰りたくない、ぅうう……かえれないの………ボク…ひっくっ……痛いのやだぁ…………」


痛いのやだとはどう言うことだ?人狼化魔法は痛みを伴うとか…?それよりも幼い頃に治癒魔法が使えないほど副作用があるのに人狼化魔法は何か違うのか?よくわからないことが多すぎる…
でも、帰りたくないと泣く幼い少年に見える彼を放り出す予定はない
シャルティも痛いの悲しいねと頬を撫でてあげてるうちの義妹優しすぎるかよ可愛い


「痛いことなんてしないよ…大丈夫、きっと何か事情があるんだよね?もしかして孤児とかなのかな…?落ち着くまでここに居たらいい…ぼくとシャルティは君の味方だよ」


ベッドに乗り上げ泣きながら震える実は年上の小さな身体を抱きしめる、背中を擦って頭を撫でてよしよしとあやすと、おれの胸にすり寄るようにぐずる…いい傾向だ、捨て犬を拾った気分で撫で撫でよしよししながらシャルティに事前に頼んでいた食事をメイドに運んで貰うよう伝えてと指示を出す

コクリと頷き部屋を一度出ていくシャルティを目で追いながら、おれは自分の腕の中で泣く子供について考えていた
痛いことしないで…それは何かが無ければ出てこない言葉じゃないのか?あの乙女ゲームを全部知ってるわけじゃないがヘルリには何か秘密でもあるのか…

家族の元にそのまま返してはいけないと思う謎の胸のざわつき…それが痛いことにもしかして繋がっていたりするのか…?
とりあえず、ヘルリを安心させるにしっかりと抱きしめてよしよしし続ける



おれのこの行動が泣きじゃくるヘルリの中で思いも寄らない感情を生み出していたなど知る由もなく





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