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#30 お水の勉強会
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「雷と同じ種類のエネルギー……」
エネルギーはホルトゥスの言葉になっていない。力? 燃料? パワー? なんて言葉を使えばいいんだ?
言葉を探して思考が回転する。そして気付く。俺は今、思考していない。同じ場所に立ち止まっている。これは思考をしていると思いこんでいるだけだと。
ここにあるもので説明しよう。郷に入りては郷に従えだ。
「雷の――大きな毛を用いて、水車を回す水のように大きな装置や小さな道具を動かすのに使ったり、魔石に溜める消費命のように溜めたり、矢のように飛ばしたり、その矢で音や絵を一緒に飛ばしたり……ただ、トシテルの知識ではそれを再現するまでは困難です。組合のように、技術の一番重要な部分は、専門的な職業の方が取り扱っていたので……」
「要領を得ないな。ここで再現できるものはないのか?」
そうだ。利照の周りにあってここにないもの、で終わりではないんだ。それをここで再現できなければ意味がない。
地球のテクノロジーや品物を幾つも思い描きながら、自分が今まで見てきたものやリテルの記憶の中を漁る。
最初に頭に浮かんだのは身近なスマートフォンだったけど、それを自分で作れるかというと到底できはしない。エンジンだって作ることはできないし、蒸気機関すら再現しろと言われると無茶だと感じる。
俺は自分の知識の薄っぺらさに愕然とする。
学校でスマートフォン一つあれば計算も翻訳もできるし、勉強することにどれだけの意味があるんだと嘯いたクラスメイトも居たが、それは道具がある前提でのことだろと俺は笑っていたのに、いざ自分がその便利な道具を失くしたとき、息巻いていたあの連中と今の俺は同じレベルにいる。
色んな実験をしたけれど、それもこれも道具あってのことだ。磁石と銅線があれば電気を起こせるが、その道具は手元にないし、そもそも電気の証明に一番手軽な豆電球すら原理を知っていても作れない。例え、フィラメントとガラスと金属を渡されたとしても困難だ――だったらどうする。そこからだ。
何なら作れる?
こんなとき丈侍だったら――丈侍の顔を思い出す。丈侍の弟、昏陽の顔も、丈侍のお父さんの顔も――あそこ、お母さん含めて四人全員眼鏡なんだよな――って、待てよ?
この世界に来てからまだ眼鏡かけてる人を見てなくはないか?
「メガネ……というものがあります。見る力が衰えてきたとき、この道具を用いて見る力を補います。原理としては、レンズを使います。レンズというのは」
「豆?」
ルブルムが首をかしげる。
そういえばリテルが食べてきた豆の種類の中に「レンズ」という豆もあった。地球でもレンズ豆って呼んでたよな。やはりこの世界とと地球にはどこかにつながりがある気がする。
「豆ではなく、チキュウではガラスや、別の透明な素材で作っていました。でも形は豆のレンズと同じです。透明であの形だと、そこを通す光を曲げることができるので」
「見たい! ガラスの破片で作れるか?」
ルブルムの目がキラキラしている。
研磨か――でもそれだと時間がかかりそうだし、そもそも透明度がなぁ。
魔法を使えば……あ。
「夕飯のスープ皿一杯分の水をいただけますか? レンズ、魔法を使って作れるか試してみます」
魔法は過程をイメージできないものはうまく使えない。
逆を言えば過程を細かくイメージできさえすれば、現象の再現が可能だということだ。
酸素自体を摩擦させて発動した『発火』の逆をイメージしたら、冷やせるんじゃないか、という予想。
水分子の動きを遅くさせていけばいいんじゃないか?
氷は水分子同士がカッチリと組み合った状態。だとしたら、チャックを閉じてゆくみたいに分子と分子とをつなげてゆけば――運ばれてきた水に指先で触れ、水の分子の動きを遅く、遅く、とイメージしながら消費命を一ディエス分だけ集中する。
『凍れ』!
触れたところから広がるようにして水が凍ってゆく。
用意してもらった水だけでは足りなかったのだろうか、スープ皿内の水が全て凍ったあと、その周囲の空気がキラキラと輝いた。
これ、もしかして空気中の水分が凍ったのか?
動画でダイヤモンドダストを見たことある。それに似ていた――となると、先に消費命を決めたことで、この思考で凍らせられる水の量が決まって、その量がスープ皿の分以上だったから――ゾクゾクする。寒さではなく楽しさで。
「リテル……トシテル、すごい! 凍ったぞ!」
これで終わりではない。
スープ皿の形に凍った水を、レンズの形へと成形しなきゃいけない。
ヤスリの代わりになりそうなのは……ちょっと見回した限りでは部屋の中にはなさそうだ――熱はどうだ? 『発火』は使えるか?
一度に大きな火を起こすのではなくて、弱火で長時間。
そういや『皮膚硬化』の魔法は、魔法代償を増やせば効果時間や硬度の強化ができた。それならば『発火』も同じように効果時間や火力の調整をできないだろうか。
本来は火力がちょっと強すぎで効果時間が一瞬の魔法。これを火力を抑えめにして、その分効果時間を増やすとか。
位置エネルギーが運動エネルギーに変換できるように、『発火』という魔法自体も、その内部のエネルギー比率を変換できてもいいと思うんだ。
「もうできたのか?」
ディナ先輩の催促が入る。
「ま、まだです」
いやもうやるしかない。『発火』の効果を引き伸ばすイメージで指先に集めて……『弱火』!
指先に感じた熱をそのまま氷に押し当てると――おおっ! 溶ける!
これで氷をレンズ型に溶かして成形していこう……。
「で、できたのがこれか?」
俺の前には少し歪で、しかも気泡がそれなりに入っている、とても実用的ではない氷レンズが一つ出来上がっていた。
「できが悪いな。これでは星などまともに見ることができはしない」
星?
もしかしてレンズはありふれたものだったり?
「お前が氷のレンズ作りに夢中になっている間、ウェスに取りに行かせた」
ディナ先輩が俺の目の前に金属製の筒を一つ置く。美しい装飾が施されているこれは、見た感じレトロな望遠鏡っぽい。
「ホルトゥスでは、レンズは水晶を磨いて作成する。とても高価なものだから貴族でもなければこのテレスコープや、トシテルの言った恐らくブリレは所持できない。ましてや田舎の未成人が目にする機会などない」
ブリレ――確か眼鏡のドイツ語だ。母さんが演奏旅行でオーストリアに行った時、演奏仲間のあだ名として使っていたのを覚えている――ということは過去にドイツ人の転生者が――じゃなくて。
これもダメだってこと。じゃあ何であれば証明できるのだろうか。
「思考が立ち止まっているのか?」
ディナ先輩が俺の顔をじっと見つめた。
「自分が当たり前だと思っているものは足蹴にしていることに気付かぬものだ。ボクがどうしてお前のこの下手くそな探し物に付き合っていると思っている? 単なる詐欺師だと判断できていたならお前は今頃死んでいる」
――今までの間に? それも助け舟を出してくれた?
「あからさまに嬉しそうな顔をするな。気分が悪くなる」
思わず下唇を噛む。
そうだ。初心に還ろう。
プレゼンすべきはモノではない。価値観や考え方だ。カエルレウム師匠が興味を持ってくださったことを思い出せ。
「トシテルがガッコウで学んだことの一つに、ゲンシという考え方があります。世界にある全ての物質の構成要素を細かく分解してゆくと行き着くごくごくごく小さい要素です。ゲンシには様々な種類があり、それらの組み合わせたものをブンシと言います。例えばこの水は、スイソというゲンシを二つ、サンソというゲンシを一つ、それらがくっついて水の最小単位である水ブンシを構成します」
ディナ先輩の表情を見ると、方向性はこれで間違えていないっぽい。
「リテル……トシテル……どちらで呼べばいい?」
ルブルムが質問したそうな表情をしている。
「ここに居る人やカエルレウム様、アルブム以外の人がいるとき、大声で呼ぶときは今まで通りリテルと呼んでほしいです」
「わかった……トシテル。水のブンシとブンシはどうやってくっついている?」
「それを説明するには、ゲンシの仕組みを先に説明させてください。ゲンシは、ゲンシ核とデンシによって構成されています。ゲンシ核はヨウシとチュウセイシとで構成されています」
「次から次へと新しい概念を出してくるな。お前にとっての事実であっても、伝わらなければただの世迷い言に過ぎぬぞ」
ディナ先輩のおっしゃる通りだ。でもこの先を説明するには必須だから。
「はい。ですが、もう二つだけ概念を出させてください。ヨウシやデンシには、雷と同じ種類の、ごくごくごくごく小さな力が備わっています。そしてその力には二種類の方向性がありますプラスと」
「マイナスか?」
「はい。もしかしてこちらでも一般的な考え方ですか?」
「いや。そのようなことを提唱した過去の魔術師の残した書物が存在する。カエルレウム様の書庫にはない書物だが」
「ヨウシはプラスの力を持っています。デンシはマイナスの力を持ち、それぞれの力は互いに引き合います。ゲンシ核とデンシが一つの塊としてまとまっているのは、この引き合う力のおかげです。そして様々なゲンシの種類があるのはゲンシ核とまとまっているデンシの数の違いでもあります。ゲンシとゲンシがつながってブンシを構成するときも、ブンシとブンシがつながるときも、この引き合う力が影響しています」
「なるほど!」
「水ブンシがたくさん集まると水になります。水は温度でその姿を変えます。水を冷やせば氷として固まり、水を熱したらスイジョウキ――空気の中に溶け込みます。水が流れるのは、水のブンシとブンシとのつながりがゆるやかで自由に動いているからです。氷になるとブンシ同士が強固につながりあい動きを止めて固くなります。空気に溶け込んだ水の状態は水よりももっともっと緩やかで活発です。これらの状態の変化はブンシの動きの変化でもあります。なので温度変化に関わる魔法を使う際にこのブンシの動きを意識したところ、消費命に対する発動対象量がとても増加しました」
「ふむ。世界の真理か。試しに使ってみろ。先程の凍らせるやつだ」
ディナ先輩が手を出す。
俺は主に恐怖でドキドキしながらもその手に自分の手を重ねる。
その途端、ディナ先輩がやけに不敵な笑みを浮かべた。
● 主な登場者
・有主利照/リテル
猿種、十五歳。リテルの体と記憶、利照の自意識と記憶とを持つ。魔術師見習い。
呪詛に感染中の身で、呪詛の原因たるラビツ一行をルブルム、マドハトと共に追いかけている。
・ケティ
リテルの幼馴染の女子。猿種、十六歳。黒い瞳に黒髪、肌は日焼けで薄い褐色の美人。胸も大きい。
リテルとは両想い。熱を出したリテルを一晩中看病してくれていた。リテルが腰紐を失くしたのを目ざとく見つけた。
・ラビツ
久々に南の山を越えてストウ村を訪れた傭兵四人組の一人。ケティの唇を奪った。
フォーリーではやはり娼館街を訪れていたっぽい。
・マドハト
ゴブリン魔法『取り替え子』の被害者。ゴド村の住人で、とうとう犬種の体を取り戻した。
リテルに恩を感じついてきている。元の世界で飼っていたコーギーのハッタに似ている。街中で魔法を使い捕まった。
・ルブルム
魔女様の弟子である赤髪の少女。整った顔立ちのクールビューティー。華奢な猿種。
槍を使った戦闘も得意で、知的好奇心も旺盛。リテルと互いの生殖器を見せ合う約束をしたと思っていた。
・アルブム
魔女様の弟子である白髪に銀の瞳の少女。鼠種の兎亜種。
外見はリテルよりも二、三歳若い。知的好奇心が旺盛。
・カエルレウム
寄らずの森の魔女様。深い青のストレートロングの髪が膝くらいまである猿種。
ルブルムとアルブムをホムンクルスとして生み出し、リテルの魔法の師匠となった。『解呪の呪詛』を作成中。
・ディナ
カエルレウムの弟子。ルブルムの先輩にあたる。重度で極度の男嫌いっぽいが、感情にまかせて動いているわけではなさげ。
カエルレウムより連絡を受けた直後から娼館街へラビツたちを探すよう依頼していた。ルブルムをとても大事にしている。
・ウェス
ディナに仕えており、御者の他、幅広く仕事をこなす。肌は浅黒く、ショートカットのお姉さん。蝙蝠種。
リテルに対して貧民街での最低限の知識やマナーを教えてくれた。
・幕道丈侍
小三から高一までずっと同じクラスの、元の世界で唯一仲が良かった友達。交換ノベルゲームをしていた。
彼の弟、昏陽に両親も含めた家族四人全員が眼鏡使用者。
■ はみ出しコラム【アルコール飲料】
ホルトゥスにおけるアルコール飲料や、それに準じた飲料の扱いについて説明する。
酒は主に飲料、消毒用に用いられる。酢は調味料、殺菌、また飲料としても用いられる。
・醸造酒
ラトウィヂ王国において一般に流通している酒は醸造酒である。
果実酒であれば、赤ブドウ酒、白ブドウ酒、リンゴ酒が主流。
穀物酒であれば、小麦酒(地球における白ビール)、大麦酒(地球におけるエール)が主流。
・新大麦酒
ラトウィヂ王国の北西に位置するラーグビ王国においてホップの自生が発見されて以降、このホップを用いた新しい大麦酒が作られるようになった。
・酢
ブドウ酢、リンゴ酢、黒酢(大麦酢)が主流。
・酢水
水に酢を混ぜたもの。
ラトウィヂ王国の東側、マンティコラの歯山脈の麓付近は美味しい水が採れるが、王都キャンロル以西は水の質が下がり、生水はそのまま飲むのに適さず、殺菌のために酢を混ぜて飲む。これが酢水の始まりである。
現在は、麓で採れる美味しい水「山麓水」に上等な酢を混ぜたブランド化された特別な酢水として「ポスカ」という名の商品も流通している。
・水割り
「山麓水」は、醸造酒のアルコール度数を下げるためにも使われる。
後述する飲酒時の犯罪に対する連座を恐れ、公共の場で提供されるアルコール飲料については「山麓水」で割ったものが提供されることが一般的である。
・炭酸水
マンティコラの歯山脈の麓付近では、炭酸水もまた多く採れる。
炭酸水は、酒や酢を割って飲むものとしても用いられる他、そのまま飲まれることも少なくない。
ただし、ガラス容器のような密閉容器がそれなりに高額であるため、ラトウィヂ王国の西側にはあまり出回らない。
・蒸留酒
蒸留の技術自体はホルトゥスに存在しているが、貴族階級の管理する施設内でのみ作られ、流通は貴族や富裕層止まりである。
・蜂蜜酒
蜂蜜と水が原料の酒。
ちなみに、ホルトゥスにおいては一部地域にて養蜂が行われている。養蜂においては、蜂蜜の他、ロウソクの原料となる蜜蝋も採取する。
・飲酒禁止年齢
飲酒が認められるのは、納税年齢に達してからであり、半成人(十歳。十進数に換算すると十二歳)になるまでは飲酒は禁止とされている。
ただし法的に飲酒が可能となったとしても、準成人(十六歳。十進数に換算すると十八歳)になるまでは「求婚する権利もない半人前」として社会的に扱われるため、大っぴらに飲酒をしていると「酒の力で恋人の幻を探している」というラトウィヂ王国では一般的な言い回しで揶揄される。
・飲酒による刑罰への影響
刑罰を犯した際、飲酒の影響は刑罰に影響する。
基本的には罪は重くなる。特に再犯者に対しては、より厳しくなる。
また酔った者が罪を犯した際、その飲酒の席に居た者も連座で逮捕され、飲酒による増加分の罪を一部分担させられることもある。
罪を犯した者が准成人未満の場合、直接罪を犯していない連座逮捕者が分担する罰の量が増えることも、大人が準成人未満に酒を勧めない理由の一つである。
次回コラムでは発酵つながりで発酵食品、調味料の説明から漏れていた発酵調味料について説明する。
エネルギーはホルトゥスの言葉になっていない。力? 燃料? パワー? なんて言葉を使えばいいんだ?
言葉を探して思考が回転する。そして気付く。俺は今、思考していない。同じ場所に立ち止まっている。これは思考をしていると思いこんでいるだけだと。
ここにあるもので説明しよう。郷に入りては郷に従えだ。
「雷の――大きな毛を用いて、水車を回す水のように大きな装置や小さな道具を動かすのに使ったり、魔石に溜める消費命のように溜めたり、矢のように飛ばしたり、その矢で音や絵を一緒に飛ばしたり……ただ、トシテルの知識ではそれを再現するまでは困難です。組合のように、技術の一番重要な部分は、専門的な職業の方が取り扱っていたので……」
「要領を得ないな。ここで再現できるものはないのか?」
そうだ。利照の周りにあってここにないもの、で終わりではないんだ。それをここで再現できなければ意味がない。
地球のテクノロジーや品物を幾つも思い描きながら、自分が今まで見てきたものやリテルの記憶の中を漁る。
最初に頭に浮かんだのは身近なスマートフォンだったけど、それを自分で作れるかというと到底できはしない。エンジンだって作ることはできないし、蒸気機関すら再現しろと言われると無茶だと感じる。
俺は自分の知識の薄っぺらさに愕然とする。
学校でスマートフォン一つあれば計算も翻訳もできるし、勉強することにどれだけの意味があるんだと嘯いたクラスメイトも居たが、それは道具がある前提でのことだろと俺は笑っていたのに、いざ自分がその便利な道具を失くしたとき、息巻いていたあの連中と今の俺は同じレベルにいる。
色んな実験をしたけれど、それもこれも道具あってのことだ。磁石と銅線があれば電気を起こせるが、その道具は手元にないし、そもそも電気の証明に一番手軽な豆電球すら原理を知っていても作れない。例え、フィラメントとガラスと金属を渡されたとしても困難だ――だったらどうする。そこからだ。
何なら作れる?
こんなとき丈侍だったら――丈侍の顔を思い出す。丈侍の弟、昏陽の顔も、丈侍のお父さんの顔も――あそこ、お母さん含めて四人全員眼鏡なんだよな――って、待てよ?
この世界に来てからまだ眼鏡かけてる人を見てなくはないか?
「メガネ……というものがあります。見る力が衰えてきたとき、この道具を用いて見る力を補います。原理としては、レンズを使います。レンズというのは」
「豆?」
ルブルムが首をかしげる。
そういえばリテルが食べてきた豆の種類の中に「レンズ」という豆もあった。地球でもレンズ豆って呼んでたよな。やはりこの世界とと地球にはどこかにつながりがある気がする。
「豆ではなく、チキュウではガラスや、別の透明な素材で作っていました。でも形は豆のレンズと同じです。透明であの形だと、そこを通す光を曲げることができるので」
「見たい! ガラスの破片で作れるか?」
ルブルムの目がキラキラしている。
研磨か――でもそれだと時間がかかりそうだし、そもそも透明度がなぁ。
魔法を使えば……あ。
「夕飯のスープ皿一杯分の水をいただけますか? レンズ、魔法を使って作れるか試してみます」
魔法は過程をイメージできないものはうまく使えない。
逆を言えば過程を細かくイメージできさえすれば、現象の再現が可能だということだ。
酸素自体を摩擦させて発動した『発火』の逆をイメージしたら、冷やせるんじゃないか、という予想。
水分子の動きを遅くさせていけばいいんじゃないか?
氷は水分子同士がカッチリと組み合った状態。だとしたら、チャックを閉じてゆくみたいに分子と分子とをつなげてゆけば――運ばれてきた水に指先で触れ、水の分子の動きを遅く、遅く、とイメージしながら消費命を一ディエス分だけ集中する。
『凍れ』!
触れたところから広がるようにして水が凍ってゆく。
用意してもらった水だけでは足りなかったのだろうか、スープ皿内の水が全て凍ったあと、その周囲の空気がキラキラと輝いた。
これ、もしかして空気中の水分が凍ったのか?
動画でダイヤモンドダストを見たことある。それに似ていた――となると、先に消費命を決めたことで、この思考で凍らせられる水の量が決まって、その量がスープ皿の分以上だったから――ゾクゾクする。寒さではなく楽しさで。
「リテル……トシテル、すごい! 凍ったぞ!」
これで終わりではない。
スープ皿の形に凍った水を、レンズの形へと成形しなきゃいけない。
ヤスリの代わりになりそうなのは……ちょっと見回した限りでは部屋の中にはなさそうだ――熱はどうだ? 『発火』は使えるか?
一度に大きな火を起こすのではなくて、弱火で長時間。
そういや『皮膚硬化』の魔法は、魔法代償を増やせば効果時間や硬度の強化ができた。それならば『発火』も同じように効果時間や火力の調整をできないだろうか。
本来は火力がちょっと強すぎで効果時間が一瞬の魔法。これを火力を抑えめにして、その分効果時間を増やすとか。
位置エネルギーが運動エネルギーに変換できるように、『発火』という魔法自体も、その内部のエネルギー比率を変換できてもいいと思うんだ。
「もうできたのか?」
ディナ先輩の催促が入る。
「ま、まだです」
いやもうやるしかない。『発火』の効果を引き伸ばすイメージで指先に集めて……『弱火』!
指先に感じた熱をそのまま氷に押し当てると――おおっ! 溶ける!
これで氷をレンズ型に溶かして成形していこう……。
「で、できたのがこれか?」
俺の前には少し歪で、しかも気泡がそれなりに入っている、とても実用的ではない氷レンズが一つ出来上がっていた。
「できが悪いな。これでは星などまともに見ることができはしない」
星?
もしかしてレンズはありふれたものだったり?
「お前が氷のレンズ作りに夢中になっている間、ウェスに取りに行かせた」
ディナ先輩が俺の目の前に金属製の筒を一つ置く。美しい装飾が施されているこれは、見た感じレトロな望遠鏡っぽい。
「ホルトゥスでは、レンズは水晶を磨いて作成する。とても高価なものだから貴族でもなければこのテレスコープや、トシテルの言った恐らくブリレは所持できない。ましてや田舎の未成人が目にする機会などない」
ブリレ――確か眼鏡のドイツ語だ。母さんが演奏旅行でオーストリアに行った時、演奏仲間のあだ名として使っていたのを覚えている――ということは過去にドイツ人の転生者が――じゃなくて。
これもダメだってこと。じゃあ何であれば証明できるのだろうか。
「思考が立ち止まっているのか?」
ディナ先輩が俺の顔をじっと見つめた。
「自分が当たり前だと思っているものは足蹴にしていることに気付かぬものだ。ボクがどうしてお前のこの下手くそな探し物に付き合っていると思っている? 単なる詐欺師だと判断できていたならお前は今頃死んでいる」
――今までの間に? それも助け舟を出してくれた?
「あからさまに嬉しそうな顔をするな。気分が悪くなる」
思わず下唇を噛む。
そうだ。初心に還ろう。
プレゼンすべきはモノではない。価値観や考え方だ。カエルレウム師匠が興味を持ってくださったことを思い出せ。
「トシテルがガッコウで学んだことの一つに、ゲンシという考え方があります。世界にある全ての物質の構成要素を細かく分解してゆくと行き着くごくごくごく小さい要素です。ゲンシには様々な種類があり、それらの組み合わせたものをブンシと言います。例えばこの水は、スイソというゲンシを二つ、サンソというゲンシを一つ、それらがくっついて水の最小単位である水ブンシを構成します」
ディナ先輩の表情を見ると、方向性はこれで間違えていないっぽい。
「リテル……トシテル……どちらで呼べばいい?」
ルブルムが質問したそうな表情をしている。
「ここに居る人やカエルレウム様、アルブム以外の人がいるとき、大声で呼ぶときは今まで通りリテルと呼んでほしいです」
「わかった……トシテル。水のブンシとブンシはどうやってくっついている?」
「それを説明するには、ゲンシの仕組みを先に説明させてください。ゲンシは、ゲンシ核とデンシによって構成されています。ゲンシ核はヨウシとチュウセイシとで構成されています」
「次から次へと新しい概念を出してくるな。お前にとっての事実であっても、伝わらなければただの世迷い言に過ぎぬぞ」
ディナ先輩のおっしゃる通りだ。でもこの先を説明するには必須だから。
「はい。ですが、もう二つだけ概念を出させてください。ヨウシやデンシには、雷と同じ種類の、ごくごくごくごく小さな力が備わっています。そしてその力には二種類の方向性がありますプラスと」
「マイナスか?」
「はい。もしかしてこちらでも一般的な考え方ですか?」
「いや。そのようなことを提唱した過去の魔術師の残した書物が存在する。カエルレウム様の書庫にはない書物だが」
「ヨウシはプラスの力を持っています。デンシはマイナスの力を持ち、それぞれの力は互いに引き合います。ゲンシ核とデンシが一つの塊としてまとまっているのは、この引き合う力のおかげです。そして様々なゲンシの種類があるのはゲンシ核とまとまっているデンシの数の違いでもあります。ゲンシとゲンシがつながってブンシを構成するときも、ブンシとブンシがつながるときも、この引き合う力が影響しています」
「なるほど!」
「水ブンシがたくさん集まると水になります。水は温度でその姿を変えます。水を冷やせば氷として固まり、水を熱したらスイジョウキ――空気の中に溶け込みます。水が流れるのは、水のブンシとブンシとのつながりがゆるやかで自由に動いているからです。氷になるとブンシ同士が強固につながりあい動きを止めて固くなります。空気に溶け込んだ水の状態は水よりももっともっと緩やかで活発です。これらの状態の変化はブンシの動きの変化でもあります。なので温度変化に関わる魔法を使う際にこのブンシの動きを意識したところ、消費命に対する発動対象量がとても増加しました」
「ふむ。世界の真理か。試しに使ってみろ。先程の凍らせるやつだ」
ディナ先輩が手を出す。
俺は主に恐怖でドキドキしながらもその手に自分の手を重ねる。
その途端、ディナ先輩がやけに不敵な笑みを浮かべた。
● 主な登場者
・有主利照/リテル
猿種、十五歳。リテルの体と記憶、利照の自意識と記憶とを持つ。魔術師見習い。
呪詛に感染中の身で、呪詛の原因たるラビツ一行をルブルム、マドハトと共に追いかけている。
・ケティ
リテルの幼馴染の女子。猿種、十六歳。黒い瞳に黒髪、肌は日焼けで薄い褐色の美人。胸も大きい。
リテルとは両想い。熱を出したリテルを一晩中看病してくれていた。リテルが腰紐を失くしたのを目ざとく見つけた。
・ラビツ
久々に南の山を越えてストウ村を訪れた傭兵四人組の一人。ケティの唇を奪った。
フォーリーではやはり娼館街を訪れていたっぽい。
・マドハト
ゴブリン魔法『取り替え子』の被害者。ゴド村の住人で、とうとう犬種の体を取り戻した。
リテルに恩を感じついてきている。元の世界で飼っていたコーギーのハッタに似ている。街中で魔法を使い捕まった。
・ルブルム
魔女様の弟子である赤髪の少女。整った顔立ちのクールビューティー。華奢な猿種。
槍を使った戦闘も得意で、知的好奇心も旺盛。リテルと互いの生殖器を見せ合う約束をしたと思っていた。
・アルブム
魔女様の弟子である白髪に銀の瞳の少女。鼠種の兎亜種。
外見はリテルよりも二、三歳若い。知的好奇心が旺盛。
・カエルレウム
寄らずの森の魔女様。深い青のストレートロングの髪が膝くらいまである猿種。
ルブルムとアルブムをホムンクルスとして生み出し、リテルの魔法の師匠となった。『解呪の呪詛』を作成中。
・ディナ
カエルレウムの弟子。ルブルムの先輩にあたる。重度で極度の男嫌いっぽいが、感情にまかせて動いているわけではなさげ。
カエルレウムより連絡を受けた直後から娼館街へラビツたちを探すよう依頼していた。ルブルムをとても大事にしている。
・ウェス
ディナに仕えており、御者の他、幅広く仕事をこなす。肌は浅黒く、ショートカットのお姉さん。蝙蝠種。
リテルに対して貧民街での最低限の知識やマナーを教えてくれた。
・幕道丈侍
小三から高一までずっと同じクラスの、元の世界で唯一仲が良かった友達。交換ノベルゲームをしていた。
彼の弟、昏陽に両親も含めた家族四人全員が眼鏡使用者。
■ はみ出しコラム【アルコール飲料】
ホルトゥスにおけるアルコール飲料や、それに準じた飲料の扱いについて説明する。
酒は主に飲料、消毒用に用いられる。酢は調味料、殺菌、また飲料としても用いられる。
・醸造酒
ラトウィヂ王国において一般に流通している酒は醸造酒である。
果実酒であれば、赤ブドウ酒、白ブドウ酒、リンゴ酒が主流。
穀物酒であれば、小麦酒(地球における白ビール)、大麦酒(地球におけるエール)が主流。
・新大麦酒
ラトウィヂ王国の北西に位置するラーグビ王国においてホップの自生が発見されて以降、このホップを用いた新しい大麦酒が作られるようになった。
・酢
ブドウ酢、リンゴ酢、黒酢(大麦酢)が主流。
・酢水
水に酢を混ぜたもの。
ラトウィヂ王国の東側、マンティコラの歯山脈の麓付近は美味しい水が採れるが、王都キャンロル以西は水の質が下がり、生水はそのまま飲むのに適さず、殺菌のために酢を混ぜて飲む。これが酢水の始まりである。
現在は、麓で採れる美味しい水「山麓水」に上等な酢を混ぜたブランド化された特別な酢水として「ポスカ」という名の商品も流通している。
・水割り
「山麓水」は、醸造酒のアルコール度数を下げるためにも使われる。
後述する飲酒時の犯罪に対する連座を恐れ、公共の場で提供されるアルコール飲料については「山麓水」で割ったものが提供されることが一般的である。
・炭酸水
マンティコラの歯山脈の麓付近では、炭酸水もまた多く採れる。
炭酸水は、酒や酢を割って飲むものとしても用いられる他、そのまま飲まれることも少なくない。
ただし、ガラス容器のような密閉容器がそれなりに高額であるため、ラトウィヂ王国の西側にはあまり出回らない。
・蒸留酒
蒸留の技術自体はホルトゥスに存在しているが、貴族階級の管理する施設内でのみ作られ、流通は貴族や富裕層止まりである。
・蜂蜜酒
蜂蜜と水が原料の酒。
ちなみに、ホルトゥスにおいては一部地域にて養蜂が行われている。養蜂においては、蜂蜜の他、ロウソクの原料となる蜜蝋も採取する。
・飲酒禁止年齢
飲酒が認められるのは、納税年齢に達してからであり、半成人(十歳。十進数に換算すると十二歳)になるまでは飲酒は禁止とされている。
ただし法的に飲酒が可能となったとしても、準成人(十六歳。十進数に換算すると十八歳)になるまでは「求婚する権利もない半人前」として社会的に扱われるため、大っぴらに飲酒をしていると「酒の力で恋人の幻を探している」というラトウィヂ王国では一般的な言い回しで揶揄される。
・飲酒による刑罰への影響
刑罰を犯した際、飲酒の影響は刑罰に影響する。
基本的には罪は重くなる。特に再犯者に対しては、より厳しくなる。
また酔った者が罪を犯した際、その飲酒の席に居た者も連座で逮捕され、飲酒による増加分の罪を一部分担させられることもある。
罪を犯した者が准成人未満の場合、直接罪を犯していない連座逮捕者が分担する罰の量が増えることも、大人が準成人未満に酒を勧めない理由の一つである。
次回コラムでは発酵つながりで発酵食品、調味料の説明から漏れていた発酵調味料について説明する。
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ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
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お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
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注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
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